Orbray株式会社(旧アダマンド並木精密宝石)ブログ。技術のトレンド、製品のワンポイント、SDGsなどについて紹介していきます。

ブラシモーターとブラシレスモーターの違い

   最終更新日:    公開日: 2026/09

ブラシモーターブラシレスモーターの最も大きな違いは、整流子(コミュテータ)やブラシといった機械的な接点の有無です。この構造の差が、モーターの効率や寿命、価格などに大きな違いを生み出します。

どちらも直流で動くDCモーターの仲間ですが、性能の傾向や得意な用途は対照的です。最適な一台を選ぶには、両者の違いを正しく理解しておく必要があります。

本記事では両者の違いと、用途に応じた選び方に絞ってわかりやすく解説します。

なお、それぞれの構造や回る仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。

ブラシモーターとブラシレスモーターの違い

ブラシモーターブラシレスモーターの最も大きな違いは、電流の向きを切り替える「整流」の方法にあります。

ブラシモーターはブラシと整流子の接触によって機械的に整流し、ブラシレスモーターは電子回路によって電流の向きを切り替えます。


ブラシレスモーターの仕組み
ブラシレスモーターの仕組み
ムービングマグネット
ブラシレスモーターはマグネットが回転する。
ブラシモーターの仕組み
ブラシモーターの仕組み
ムービングコイル
一般的にブラシモーターは、コイルが回転する。

これにより、両者には次の5つの違いがあります。

  1. 効率
  2. 寿命
  3. 放熱性
  4. 騒音・電気ノイズ
  5. 価格

効率

効率では、ブラシモーターよりブラシレスモーターが優れています。

ブラシモーターは、ブラシと整流子という部品どうしの接触で整流する仕組みです。接触したまま回転するため摩擦で熱が生じ、接点の電気抵抗や整流時の火花もエネルギーを消費します。

一方のブラシレスモーターは、電子回路で整流するため擦れ合う接点がありません。回転する側に発熱しやすいコイルもないので、電力のロスが少なく高い効率を実現します。

寿命

寿命の長さでも、ブラシモーターよりブラシレスモーターが優れています

ブラシモーターのブラシと整流子は、回転のたびに擦れ合う消耗部品です。ブラシと整流子が傷む要因には、物理的にすり減る摩耗と、火花による電蝕の2つがあります。

ブラシを交換できない構造ではモーター本体ごと交換する場合もあり、寿命は使用条件によりますが数百〜数千時間ほどが目安です。

これに対しブラシレスモーターは、擦れ合う接点を持ちません。寿命を主に左右するのは回転軸を支えるベアリングで、条件が整えば数万時間使えるものもあります。

放熱性

発生した熱の逃がしやすさでも、ブラシモーターよりブラシレスモーターが優れています。

ブラシモーターは、発熱するコイルが回転子側にあります。回転するコイルと外枠の間には空気の層があるため、熱が外へ伝わりにくい構造です。対してブラシレスモーターは、コイルが外側のステーター(固定子)に固定されているので、熱を効率よく逃がせます。

この差は、モーターのパワーにも影響します。ブラシモーターは大電流を流すと接点が損傷する恐れがあり、投入できる電力に限りがあります。一方、接点のないブラシレスモーターは大電流を流しやすく、高出力化に適した構造です。

騒音・電気ノイズ

動作音や電気的なノイズの少なさでも、ブラシレスモーターが優れています。

ブラシモーターは、ブラシと整流子が擦れ合う摺動音に加え、接点が切り替わる瞬間の火花が電気的なノイズの発生源になります。

それに対し、物理的な接点を持たないブラシレスモーターでは、接触によるノイズが生じません。ただし、ブラシレスモーターでも、電子回路によるスイッチングノイズや、構造に起因する振動・動作音が発生することがあります。

価格

ここまでとは逆に、価格の安さではブラシモーターのほうが優れています。

ブラシモーターは構造がシンプルで部品点数も少なく、電流を切り替える専用の駆動回路も要りません。直流電源につなぐだけで回せるため、モーター単体でもシステム全体でも低コストに構成できます。

ブラシレスモーターは性能で勝る反面、駆動回路や位置検出の仕組みが必要なため、価格は高くなりがちです。つまり両者は、性能の高さと価格の安さが引き換えの関係にあるといえます。導入の際は、求める性能と予算のバランスを見極めることが大切です。

ブラシモーターとブラシレスモーターの用途・分野の違い

ここまで見てきた特性の違いから、それぞれのモーターが活躍する場面も分かれてきます。実際の製品では、医療機器や精密機器、半導体製造装置、ロボットなど、分野ごとに求められる条件に応じて使い分けられています。

分野別にどちらのモーターが適しているかを、以下の表にまとめました。

※本記事の用途比較におけるブラシモーターの評価には、Orbrayが手がけるコアレスブラシモーターの特性を反映しています。コアレス型は、鉄心を持たないコイルが回転子となるため、軽量・低慣性で応答性に優れる点が特長です。

【凡例】
◎:最適(特に優れた性能を発揮)
○:適している
△:使用可能だが最適ではない

医療機器分野

用途 ブラシ
モーター
ブラシレス
モーター
選択ポイント
麻酔器 静音性、一定速度安定性が重要。ブラシレスモーターはコギング(磁石の引っ掛かり)が無く、静かで安定した駆動を実現。
内視鏡 繊細かつ回転ムラの無い駆動、品質の高さと安全性が必要。
薬液ポンプ 軽量・コンパクト性、バッテリー駆動時の低消費電力が重要。フィードバックによる精密な制御も必要。
歯科用
ハンドピース
高速回転、低振動、高い耐久性が必要。患者の快適性と治療精度に直結。
医療用ポンプ 安定した流量制御、低ノイズ、信頼性が重要。輸液や透析などの生命維持装置に使用。

精密機器・計測機器分野

用途 ブラシ
モーター
ブラシレス
モーター
選択ポイント
望遠鏡 高精度な動作、コンパクトサイズ、位置決め精度が重要。天体観測では多数の天体からの光を集める必要があり、精密な制御が必須。
測量機器 定回転数での安定動作、回転ムラの無さが重要。応答性に優れたモーターが必要。
顕微鏡
ステージ
微細な位置決め、振動抑制、低速安定性が重要。研究や検査の精度に直結。
分析機器 正確な速度制御、長時間安定動作、低発熱が必要。サンプル分析の再現性に影響。
光学機器フォーカス機構 精密な位置決め、バックラッシュの少なさが重要。画像品質に直結。

半導体製造装置分野

用途 ブラシ
モーター
ブラシレス
モーター
選択ポイント
マウンター
ヘッド
小型かつ精度の良い位置決め、中空シャフト対応が重要。半導体製造装置では高精度・短時間での動作が必要。
テープ
フィーダー
薄型化、位置決め精度が重要。特に扁平モーターの採用が増加傾向。半導体実装時の部品供給に使用。
ウェハー
搬送ロボット
高精度位置決め、クリーン環境適合、低発塵が必須。製造歩留まりに直結。
検査装置 高速・高精度な動作、長時間安定性が重要。製品品質の保証に不可欠。

ロボティクス分野

用途 ブラシ
モーター
ブラシレス
モーター
選択ポイント
ロボット
ハンド
多自由度、小型化、高出力、無通電保持機能が重要。特に指の狭隘スペースに動力機構を搭載するため小型化が必須。
コミュニ
ケーション
ロボット
長時間稼働、高トルク、静音性が重要。人との対話を目的とするため静音性が特に重視される。
エンド
エフェクタ
小型、高出力、高効率、発熱抑制が重要。物を把持した際の発熱問題を解決するため効率性が重視される。
協働ロボット関節 高トルク密度、精密制御、安全性が重要。人との協働作業に必要な柔軟性と安全性を確保。

映像・放送機器分野

用途 ブラシ
モーター
ブラシレス
モーター
選択ポイント
ドローン
ジンバル
軽量、応答性が重要。カメラの動きに素早く反応する必要があり、複数軸での制御が必要。
放送局用
カメラレンズ
応答性、静音性、低電圧駆動が重要。撮影時のモーター音が録音されないよう静音性が特に重視される。
カメラオート
フォーカス
高速応答、低消費電力、静音性が重要。撮影体験の質に直結。
業務用プロ
ジェクター
長寿命、静音性、安定動作が必要。長時間の映像投影に対応。

セキュリティ・産業機器分野

用途 ブラシ
モーター
ブラシレス
モーター
選択ポイント
電気錠 応答性、高温・低温対応、長寿命が重要。頻繁な施錠・開錠操作に耐える耐久性が必要。
セキュリティ
カメラ
長寿命、冷温対応、応答性が重要。24時間稼働するため信頼性が特に重視される。
監視カメラ
旋回機構
精密な位置制御、静音性、耐候性が必要。屋外設置にも対応。

オフィス・家電機器分野

用途 ブラシ
モーター
ブラシレス
モーター
選択ポイント
空気清浄機
ファン
静音性、効率性、長寿命が必要。24時間稼働にも対応。

ホビー・レジャー分野

用途 ブラシ
モーター
ブラシレス
モーター
選択ポイント
ラジコン/RC 応答性、高トルクが重要。特に高速応答(15ms以下)が求められる。
電動釣り糸
巻取機
高トルク、防水性、バッテリー効率が必要。屋外での長時間使用に対応。

パーソナルケア・特殊機器分野

用途 ブラシ
モーター
ブラシレス
モーター
選択ポイント
防塵マスク 応答性、低消費電流、低背型が重要。使用者の呼吸に合わせた動作が必要。
タトゥー
マシン
高速回転、低振動が重要。術者の負担を減らすため振動抑制が必須。

それぞれがどのような用途に向いているのか、ポイントを整理していきましょう。

ブラシモーターが適している用途

  1. コスト重視の用途: 駆動回路や位置検出センサが不要で、部品点数も少ないため
  2. 単純な制御で十分な用途: 直流電源につなぐだけで回転し、電子的な転流制御が不要なため
  3. バッテリー駆動の携帯機器: 軽量なコイルがローターとして回転するため、小電力でも駆動しやすいため
  4. 高頻度の起動・停止が必要な用途: ローターが軽く慣性が小さいため、加減速が速いため

構造がシンプルで扱いやすく、駆動回路がなくても動かせる手軽さが強みです。低い電圧で動く小型のブラシモーターは、軽さやコストが重視される携帯機器などにも適しています。

ブラシレスモーターが適している用途

ブラシレスモーターは、長く使う機器や、静音性・高効率が求められる機器に向いています。

  1. 長寿命が求められる用途: 摩耗する接点がなく、寿命は主にベアリングの耐久性で決まるため
  2. 静音性が重要な用途: ブラシと整流子の摺動接触がなく、摺動音や火花放電による騒音が生じないため
  3. 高精度な位置決めが必要な用途: 電子回路による転流のため、精密な電流制御でトルク変動を抑えやすいため
  4. 高効率・低発熱が求められる用途: 接点の電圧降下によるロスがなく、発熱するコイルが固定子側にあるため放熱しやすいため
  5. 高速回転が必要な用途: ブラシの機械的な追従限界がなく、遠心力による摩耗や火花の増加を気にせず高回転まで回せるため

高効率で発熱を抑えやすく、高速回転が求められる機器に適しています。摩耗する接点がないため、メンテナンスの手間を抑えながら長期間にわたって安定した運転を続けられます。

選択時に考慮したいポイント

どちらのモーターを選ぶかは、機器に求められる条件を整理することから始まります。判断の際は、次のような観点を確認するとよいでしょう。

  1. サイズと重量: 用途に合わせた最適なサイズ選定
  2. 出力と効率: 必要なトルクと効率のバランス
  3. 制御の複雑さ: 必要な制御精度と制御システムの複雑さ
  4. 動作環境: 温度、湿度、振動などの環境条件
  5. コスト: 初期コストだけでなく、長期運用コストも考慮
  6. 信頼性と寿命: 用途に応じた適切な耐久性

大切なのは、どちらが優れているかではなく、用途に合うかどうかです。たとえば長期間の連続運転にはブラシレスモーター、コストを抑えた単純な機構にはブラシモーターというように、優先したい条件から絞り込んでいくとよいでしょう。

製品の詳細は以下のページをご覧ください。

まとめ|ブラシモーターとブラシレスモーターは用途に応じて選定しよう

ブラシモーターブラシレスモーターは、電流を切り替える整流の方法が根本的に異なります。ブラシモーターは接点による機械的な整流、ブラシレスモーターは電子回路による整流を行い、この違いが効率や寿命、放熱性、騒音・電気ノイズなどの特性の差につながります。

効率・寿命・放熱性・静音性といった性能の多くではブラシレスモーターが優れ、価格ではブラシモーターが有利です。どちらが優れているということではなく、それぞれに得意な領域があると捉えるとよいでしょう。求める性能とコストのバランスを見極め、用途に合った方式を選ぶことが大切です。

Orbrayは、コアレス構造のブラシモーターと、スロットレス構造のブラシレスモーターを手がけています。

ブラシモーターは、軽量なコアレスコイルによる優れた応答性と、金合金接点による低い電気ノイズが特長です。一方、ブラシレスモーターは、コギングのない滑らかな回転と高い応答性を備え、長寿命・高トルク・高出力にも対応します。

用途や求める性能に応じてご提案しますので、選定でお悩みの際はぜひご相談ください。

     

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