小型モーターとは 用途と必要技術

小型モーターは現代のテクノロジー社会において欠かせない存在です。生命に関わる医療現場や工業、日常生活で頻繁に使用する家電製品など幅広く活躍しています。
モーターを出力で分類した場合、出力が75W以下程度のものは小型モーターとされ、3W以下になるものはマイクロモーター(超小型モーター)と呼ばれます。回転させる電力も小さく、乾電池程度の電力でも回転させることが可能です。
小型サイズが求められる用途では、ACモーターで使用される100V以上の高電圧は漏電や引火の危険性を伴うため、DCモーターを採用するのが一般的です。
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モーターの原理|電気が生み出す回転運動
電磁モーターは、磁界と電流の相互作用によって発生する「電磁力」を利用して回転しています。モーター内部には磁石とコイルが配置されており、磁石の「同じ極同士は反発」「異なる極同士は引き合う」性質を利用することで、回転運動を生み出しています。
電源、構造によるモーターの分類
モーターを使用する電源で分類した場合、交流電源で動作するACモーターと、直流電源で動作するDCモーターに分類できます。ACモーターは、ポンプや搬送用コンベアなどの工場設備用の大型モーターに多く使われています。一方、DCモーターは、小さなサイズのものが多く、小型の家電や電子機器等、様々な製品に幅広く使用されています。
DCモーターは、ブラシDCモーターとブラシレスDCモーターに分類できます。小型モーターでは、永久磁石を使用した永久磁石界磁方式が一般的で、高効率かつコンパクトな設計が可能となっています。Orbrayのモーターもこの方式を採用しています。
ブラシDCモーター

ブラシDCモーターは、銅線を巻いたコイルによるローター(回転子)と、磁石によるステーター(固定子)で構成されています。コイルの端は接点となる整流子に接続されており、整流子はブラシと接触しながら回転することが可能です。ブラシには直流電流が流れており、整流子がブラシと接触している際にコイルへ電流が流れて磁力が発生し、ステーターと反発、または引き寄せられることでローターが回転します。
特徴として、回転させるための構造がシンプルで、駆動用回路が不要という利点があります。一方で、ブラシと整流子が接触しているため摩耗が生じ、定期的なブラシ交換が必要となる場合があります。また、接触部分での音やスパークによる機械的、電気的なノイズも発生しやすい特徴があります。
コアレスモーター

ブラシDCモーターの一種として、コアレスモーターがあります。これは通常のブラシDCモーターのローターからコアを無くし、コイルを円筒状(カップ状)に巻いて籠型に形成することでローターを作ります。このローターが内側に配置された磁石の周りを回転する構造となっています。
コアが無くなることでローターが軽くなり、慣性モーメントが小さくなるため起動や応答が早くなります。また、高速回転時にも発熱が少なく、効率よく回転することができます。金属製のコアが無いので、コアと磁石が引き合うことで起こるコギングが発生せず、回転がスムーズで振動や騒音が小さくなります。Orbrayのコアレスモーターは、このタイプのブラシモーターとして開発され、高い性能を実現しています。
ブラシレスDCモーター

ブラシレスDCモーターは、ブラシと整流子を無くし、磁石によるローターと、コイルによるステーターが設けられています。中心にあるローターの周りにステーターを配置させてローターを回転させる(インナーローター型)、またはステーターの周りにローターを配置してステーターの周りをローターが回転する(アウターローター型)、いずれかの構造をもっています。
最大の特徴は、電気的接点が無いため接点摩耗による部品メンテナンスが不要で長寿命である点です。また、電気的接点が無いので大電流を投入しやすく、ハイパワー化も可能です。ただし、回転させるにはコイルへの電流の流れを切り替える駆動用回路が必要となり、その分コストは高くなります。
なお、ブラシレスモーターにも、コアレス構造とコアード構造が存在します。Orbrayでは、主力のコアレス構造(インナーローター型)に加え、特定用途向けにコアード構造(アウターローター型)のブラシレスモーターもラインナップしています。
コラム:モーターの応用
モーターの出力特性を変更する方法として、減速機構を組み合わせたギヤードモーターがあります。これにより低速・高トルクの特性が得られ、より幅広い用途に対応することが可能です。
小型モーターの必要技術

小型モーターでは、内部構造も小さくなるため、各部品には高い性能が求められます。例えば、高性能な磁石材料の特性を維持しながら精密に加工する技術や、極細線を高密度に巻き上げて高効率なコイルを製造する技術は、高トルク、低消費電力の小型モーターを作るためには欠かせません。これらを実現するには、磁石の精密加工技術と、独自の巻線ノウハウ、そしてそのノウハウを具現化するためにカスタマイズされた巻線機が必要となります。
超小型化への挑戦として、外径1mm以下のマイクロモーターも開発されています。このような極小サイズのモーターは高速回転に特化した特性を持つため、実用的な動力として活用するには精密な減速機構との組み合わせが重要となります。このマイクロモーターの減速機構には、数マイクロメートルという極めて高い精度が要求される微細な歯車が必要となるため、新材料の採用と精密金型による射出成型技術を組み合わせて製造されています。
小型モーターの活用事例
医療機器

医療の現場では、モーターの小型化とそれに伴う本体サイズの小型化によって、患者の身体的な負担を軽減し、精密な治療を可能にしています。例えば、内視鏡手術では患部に小さな穴を開けて手術を行い、この際にマイクロモーターが手術器具の先端部分の動作制御に利用されています。
また、人工心臓や補助人工心臓などのインプラントデバイスにも使用されており、人工心臓の場合、血液を送り出すポンプの動力源として、患者の生命維持に大きく貢献しています。より身近な医療現場であれば、歯科医院で用いる歯を削るためのハンドピースや、歯型を取る際に使う印象材(※歯型を採取するために歯列に押し当てる歯科用の型取り材料)を練和するミキサーなどにも使用されています。
産業機器

工業の現場では、電子部品を基板に実装する「電子部品実装機」において、電子部品の位置決めや搬送、配置に小型モーターが利用されています。金属や樹脂を加工する工作機械でも活用されており、工具の回転や動きを精密にコントロールすることで、複雑な形状の部品も、まるで彫刻のように削り出していくのです。また、製品の品質をチェックする「自動検査装置」では、カメラやセンサー、照明などの精密な位置決めや移動をする部分に利用され、不良品の早期発見や品質の安定化に貢献しています。
日常生活での活用
私たちの身の回りでも小型モーターは多くの場面で活躍しています。

例えば:
- スマートフォンのカメラモジュール(手振れ補正機構)
- ドローンの各プロペラを駆動する小型モーター
- ウェアラブルデバイスの振動モーター
- コードレス電動工具(ドライバー、トリマーなど)
- スマートホームデバイス(電動カーテン、ブラインドなど)
- 最新の医療機器(手術支援ロボット、投薬ポンプなど)
まとめ
本記事では小型モーターの種類と原理、必要な技術、そして活用例についてお伝えしてきました。小型モーターには、ブラシDCモーター、コアレスモーター、ブラシレスDCモーターなど、さまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。用途に応じて最適なモーターを選択することが重要です。
小型モーターは私たちの生活にすっかり溶け込んでおり、技術の進歩とともに、さらなる小型化・省電力化が進んでいます。医療現場での精密な治療から、産業機器での品質向上、日常生活での利便性向上まで、私たちの暮らしを支え続けている重要な存在といえるでしょう。
Orbray社は1973年に当時世界最小のDCコアレスモーターを開発して以来、その後も技術革新を重ね、応答性、静音性も優れた小型モーターなどラインナップが充実しています。Orbrayの小型モーター/マイクロモーターは以下のページからご覧いただけます。
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