Orbray株式会社(旧アダマンド並木精密宝石)ブログ。技術のトレンド、製品のワンポイント、SDGsなどについて紹介していきます。

レーザーとは 特長と原理、用途を解説

レーザー
   最終更新日:    公開日: 2022/08

レーザーは、目に見える通常の光とは異なる性質を持っています。工業、医療、通信、エンターテイメントなど、様々な分野、用途で活用されてきました。

通常の光とレーザー光の違い

光は電磁波の一種です。電磁波は波長の長い方からラジオ波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線などの呼び名があります。可視光線の波長の範囲は、下限が360~400nm、上限が760~830nmです。物体に当たって吸収されずに反射した波長の光が人の目の網膜が受けることで、人は色を認識できます。

レーザーは、Light Amplification of Stimulated Emission of Radiation(放射の誘導放出による光増幅)の略です。気体や液体、固体の中にある電子をエネルギーの高い状態にして、そのエネルギーが光として放出される際に増幅することで作られます。レーザーは以下のような特徴を持っています。

・単色性(単一波長)である。
・指向性、直進性に優れる。
・位相が揃っていて可干渉性(コヒーレンス)を持つ。
・指向性に優れるのでエネルギーの集中度が高い

レーザー加工機

通常の光は、様々な波長の光が混ざり合った状態で、四方に広がりながら伝わります。それに対し、レーザー光は単色性であり、優れた指向性を持ち、単一の波長の光のみが一定の方向に進みます。指向性に優れるので、スポットを絞りやすく、エネルギー集中度を高めることが容易です。

また、通常の光は、複数の波の位相がバラバラの状態で進むのに対し、レーザー光は位相が揃った状態で進みます。そのため、レーザー光は可干渉性(コヒーレンス)の特長を持ち、重ね合せることで山と谷が揃い干渉縞が現われます。

更に、レーザーは、連続的にレーザーが出る連続発振レーザーと、連続ではなくパルス状に出るパルス発振レーザーに大別されます。パルス発振レーザーでは、エネルギーを集中させた、ナノ秒、フェムト秒程度の非常に短い時間幅の光を得ることが可能です。

レーザーを作る原理

レーザー光が作られる原理には以下のようになります。

励起

物質の持つ原子(分子)は外部からエネルギーを吸収すると、低いエネルギー状態から、高いエネルギー状態に移ります。これを「励起」と言います。
原子中の電子は、外部から光が入射すると光を吸収し、一番低いエネルギー状態(基底状態)から、より高いエネルギー状態になります。エネルギーが高まることで、電子は通常の軌道から外側の軌道に移ります。

自然放出

励起された電子は、不安定な状態であり、安定しようとして低いエネルギー状態に戻ろうとします。これを「遷移」と言います。戻る際に電子は光としてエネルギーを放出します。これを「自然放出」と言います。

誘導放出

励起状態にある電子に、同じエネルギーの光が衝突すると、エネルギー、位相、方向が同じ光が放出されます。1つの光が同じ2つの光になるこの現象を「誘導放出」と言います。これがレーザー光になります。

反転分布状態

誘導放出によりレーザー光を出すには、高エネルギー状態の電子が低エネルギー状態の電子よりも多くある状態が必要です。この状態を「反転分布状態」と言います。これにより、吸収されるよりも誘導放出される光が多くなり、レーザー光を作ることができるようになります。

増幅

誘導放出されたレーザー光は、2枚のミラーで構成される光共振器(キャビティ)により増幅されます。半波長が、鏡の間の距離の整数分の一となるようなレーザー光は、鏡の間で反射を繰り返します。これにより、誘導放出される光が連鎖的に起こり、波長と位相の揃った光が大量に発生して強力なレーザー光が作られます。

レーザー発振器の代表的な構造

以下はレーザー光を作るレーザー発振器の代表的な構造です。向かい合ったミラーを持った光共振器の間に誘導放出が起こる物質となるレーザー媒体が配置されています。励起源は電子を高いエネルギー状態に上げる(ポンピング)を行います。励起源には、レーザーの種類により、光、電流、化学反応を用いるものなど各種あります。

ナノメーターオーダーの超微細加工も可能なレーザー

レーザーはレーザー媒体によって固体レーザー、ガスレーザー、液体レーザー、半導体レーザーの種類に分けられます。

固体レーザー

固体レーザーには、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)結晶を媒質にしたYAGレーザーや、サファイア結晶にクロムを添加したルビーレーザーなどがあります。パワーが強く、小型でも大きな出力が得られます。
波長が1064nm のYAGレーザーは、固体レーザーの代表的なものです。出力により金属の切断、溶接、穴あけから、微細穴加工やマーキングなど産業用で幅広く用いられています。ガラスやサファイアなどの透明な物は、透過するため加工ができません。

YAGレーザーの第二高調波(532nm)はグリーンレーザーと呼ばれ、微細穴加工やシリコンウェハのマーキング等に用いられています。更に、YAGレーザーの第三高調波(355nm)、第四高調波(266nm)はUVレーザーと呼ばれ、超微細穴加工や切断、光造形等に用いられます。UVレーザーは光のエネルギーが高く、レンズで集光することで吸収が起こるので、ダイヤモンドサファイアルビーなどでも透過せず、微細な加工が可能です。

YAGレーザーとUVレーザーの比較

ガスレーザー

ガスレーザーには、媒質に二酸化炭素(炭酸ガス)を用いたCO2レーザーや、希ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いたエキシマレーザーなどがあります。

CO2レーザーは、波長が長く(10.6μm)、紙や布、プラスチック、ゴム、木材などの穴あけ、切断、マーキングなどの用途に多く使用されています。出力を上げることで金属の溶接、切断にも用いられています。

液体レーザー

液体レーザーは、色素分子をエチレングリコールやエチル、メチルなどの有機溶媒に溶かした有機色素を媒質に用いた色素レーザーが代表的です。主に理学用、医療用に用いられています。

半導体レーザー

半導体レーザーは、GaAsP(ガリウムヒ素リン)、InGaAsP(インジウムガリウムヒ素リン) 、GaN(窒化ガリウム)などの半導体を媒質に用いています。半導体は固体ですが、別の物として分類されます。光通信光源、プリンタ光源、プレーヤー光源、レーザーポインタなどの用途に多く用いられています。

発振方式による分類

レーザーは、発振方式でも分類されます。連続的にレーザーが出る連続発振レーザーと、連続ではなくパルス状に出るパルス発振レーザーの2つです。パルス発振レーザーは、パルス幅により、マイクロ秒、ナノ秒、ピコ秒、フェムト秒レーザーに分けられます。各パルス幅により加工性能が異なります。例えば、パルス幅がおよそ100fs(フェムト秒)のフェムト秒レーザーは、熱影響の無いナノメーターオーダーの超微細加工ができます。

発振方式によるレーザーの分類:フェムト秒レーザーはパルス発振レーザーに分類され、熱影響のない超微細加工が可能。

レーザーの用途

レーザーは非常に多くの分野、用途で活用されています。

例えば医療分野では、レーザーメスのような医療道具としての活用はもちろん、治療としてもレーザーは用いられています。通信分野では、レーザーが無ければ光通信の大容量、高速通信は実現できません。建築分野ならば、構造物の水平の検査や距離の計測ではレーザーを用いた測定器を使用します。

工業分野でも、レーザーは数多く使われています。微細な変位を測定するための測長器や、傷や部品の有無を検出するセンサー類は、レーザーを使うことで精密かつ高速に測定を行うことが可能です。切断、マーキング、穴あけ、溶接などの各種加工にもレーザーは用いられます。

特に、ダイヤモンドサファイア、石英ガラス、セラミックのような非常に硬い素材、割れ欠けが発生しやすい素材の微細加工には、レーザーによる加工が最適です。

例えば、波長355nmのパルス発振UVレーザーを用いた加工では、ダイヤモンドサファイアなどの透明な高硬度の素材に微細穴を加工することができます。サファイアの場合、最小穴径60μm、アスペクト比は最大で30が可能です。パルス発信のレーザーなので、素材に対して極短時間だけレーザーが照射され、熱影響による加工変質層を最小限に抑えつつ滑らかな加工面を得ることもできます。  更に、パルス幅がおよそ100fsのフェムト秒レーザーを用いれば、材料に熱が伝わるよりも速くレーザー照射が終わります。これにより、熱影響によるクラック(割れ)やデブリ(レーザーにより溶融・蒸発した物質が表面に再付着したもの)の無いナノメーターオーダーの超微細加工が可能です。最小穴径0.5μm、最大アスペクト比100を実現できます。表面粗さRa~0.01μmは滑らかさで、加工変質層もありません。

フェムト秒レーザーで石英ガラスへ加工したφ490nmの超微細穴

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