Orbray株式会社(旧アダマンド並木精密宝石)ブログ。技術のトレンド、製品のワンポイント、SDGsなどについて紹介していきます。

平面研磨技術とは 半導体デバイス、MEMS、LED製造に係わる重要技術

平面研磨技術とは 半導体デバイス、MEMS、LED製造に係わる重要技術
   最終更新日:    公開日: 2022/02

近年、MEMSMicro Electro Mechanical Systems)技術を用いた微小なセンサーユニットや、サファイア基板を用いたLEDチップなどが数多く製造されています。これらは、現代社会で利用される様々な精密機器、通信装置等で欠かすことのできないパーツです。これらのパーツの製造工程で重要なものの1つに、超高精度の平面研磨技術があります。

高精度の平面研磨が必要なウエハ

半導体デバイスの製造では、薄いシリコンウエハに対して、スパッタリングやエッチング、フォトリソ加工などを施すことで、ウエハ上に多数のデバイスを形成します。デバイスが形成されたウエハは、デバイスごとに切り分けられ(ダイシング)、配線等を施した後にセラミックや樹脂などでパッケージされて半導体デバイスとなります。LEDも同様に、窒素やガリウムなどのガスを噴きかけて結晶を成長させることでサファイア基板上に多数のLEDチップを形成し、ダイシング、配線、パッケージ等を行うことで製造されます。

製造時のシリコンウエハやサファイア基板に対しては、高い平坦度での鏡面仕上げが求められます。そのためには、高精度の平面研磨が必要です。平面研磨を行わなければ、多数のデバイスを形成する際にズレや歪みが生じ、ナノレベルの正確さが求められるデバイスを製造することができません。

また、半導体ウエハ上に電気回路や微細な機械構造を集積させるMEMS技術では、ウエハ上に形成されたデバイスを封止する際に、ウエハとウエハを加熱することなく接合させる常温接合が用いられています。常温接合は、溶接や接着剤を使った接合とは異なり、接合させる物と物との原子を結びつけることで接合させる方法です。MEMSデバイスの製造や、CPUなどの高性能半導体デバイスの製造で多く活用される、SOI(Silicon on Insulator) ウエハの製造にも常温接合は用いられています。

サファイアと金属(上、右下)サファイアサファイア(左下)の常温接合

サファイアダイヤモンドセラミックなどと金属のように、接着剤など常温接合をを使わなければ接合が難しい素材同士も接合することが可能です。加熱せずに接合できるので、熱膨張率の違う素材でも反りが発生せず、問題なく接合できます。 常温接合を行うためには、接合するそれぞれの素材に対し、原子レベルの高い精度の表面粗さや平坦度が求められます。そのため、接合する素材に対して高精度の平面研磨を行わなければなりません。

平面研磨の方法

平面研磨では、ダイヤモンドなどの高硬度の素材による砥粒を用いた研磨剤やスラリー(液体の中に固体砥粒を混ぜ合わせたもの)が使用されます。ウレタンなどの素材でできた研磨用のパッドを研磨する素材に押し当て、研磨剤やスラリーを流しながら、パッドと素材とを回転させることで研磨が行われます。研磨では、最初から目の細かい砥粒で研磨を行うと時間がかかるので、粗研磨、中研磨、仕上げ研磨のように、砥粒の径を変えて数段に分けて行うのが通常です。

特に、サファイアセラミックのような硬い素材の平面研磨の最終仕上げでは、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)により研磨されます。CMPによる平面研磨は、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)などの難削材料を用いたウエハの研磨の他、LED用のサファイア基板の研磨など、半導体業界では広く用いられています。また、常温接合を行うウエハや素材の高精度な平面研磨では、CMPによる研磨は、原子レベルの高い精度を得るために必要です。

サファイア基板
両面を研磨したサファイア基板

CMPは、研磨剤やスラリーに含まれる化学成分の作用により、研磨する素材の表面に対し、溶解、軟化させるなどの変質を行いながら研磨を行う技術です。これにより、砥粒による機械的な表面除去効果を増大させ、より平坦で滑らかな研磨面を得ることができます。 CMPによる平面研磨では、スラリーに含ませる化学成分を変えることで、ウエハ表面に形成された素材を選択的に研磨するこができます。また、表面の粗さを原子レベルで調整することも可能です。例えば、CMPによる平面研磨ならば、サファイア基板表面に原子1個分の段差を持たせるような研磨も行うことができます。これにより、青色LED用半導体であるGaNを、サファイア基板上にエピタキシャル成長させる際などには、歩留りが向上します。

高精度平面研磨を可能にする技術

平面研磨では、使用するスラリーや、加圧力、回転速度などにより研磨状態が変わります。研磨する対象の材質や形状により最適な条件は変わるので、それぞれに合った条件を導き出さなければなりません。研磨条件は、研磨動作のパラメータや、スラリーに含ませる化学成分の種類や量を細かく変えて研磨することで導き出されますが、その組み合わせは膨大になります。素早く最適な条件を探すには、多くの素材に対する研磨の技術や経験、知識を持っていることが重要になります。

また、平面研磨は、単に研磨対象の表面を研磨するだけでなく、全体の形状を平坦にすることも必要です。特に、常温接合などにおいて、厚みのある素材を接合する場合、接合対象に対して変形させるようなことはできません。表面粗さが原子レベルで微小であるだけでなく、高い平坦度を持つことも重要になります。高精度な平面研磨では、高度な研磨技術と平坦化技術との両方が必要です。特に、最先端の精密機器や通信装置などのパーツに多く利用される、高硬度なダイヤモンドサファイアなどの素材は研磨自体が難しい素材です。それらの素材に対して平面研磨を行うには、高度な技術や多くのノウハウが必要になります。


Orbrayの平面研磨技術

研磨・結晶育成・洗浄技術を生かしたサファイア製品を扱っております。

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