光減衰器、光終端器とは 原理や使用目的
光通信システムでは、光の入出力、中継などを行う各種伝送装置、測定装置が用いられています。これらの装置では、適正範囲以上のパワーの光が入射したり、光ファイバの接続部や端部からの反射光が再度入射したりすると、通信の品質や測定結果に影響がでることや、装置が故障することがあります。この問題に対して使用されるのが光減衰器や光終端器です。
光減衰器、光終端器の使用目的
光減衰器は、光パワーレベルの強弱を調整するための光デバイスです。光通信システムでは、光の中継や切り替え、増幅を行う各種伝送装置が用いられています。これらの装置間は、光コネクタと光ファイバケーブルで接続され、数十㎞もの遠方と接続されることもあります。
光ファイバを通る光信号のパワーは、伝送中の損失などの影響により、伝送されてきた光ファイバの長さによって違いが生じます。また、各種伝送装置における信号処理においてもパワーの違いが生じます。パワーの違う光信号を各装置で同じように扱い、強すぎるパワーで装置を破損させないためには、強さを所定の範囲内に調整しなければなりません。また、測定装置に入射させる光信号も、パワーが強すぎると正しく測定が行えないだけでなく、測定器を破損してしまう場合があります。光減衰器は、光ファイバの端部に接続することにより強すぎる光パワーを減衰させ、所定の範囲内に調整します。
光終端器は、光通信システムの開放端で生じる反射戻り光を防止するための光デバイスです。光コネクタの先端は、接続される光ファイバ間で隙間や、ズレが生じないように、精密にPC研磨が行われています。また、PC研磨を行わないコネクタでは、屈折率整合剤を接続面に塗布することなどにより、接続面での屈折率の違いが小さくなるように処理されています。屈折率の差が大きくなると、接続面での反射が起こりやすくなり、反射戻り光が生じます。反射戻り光は通信品質の低下や各種装置の破損につながるため、防止しなければなりません。
光コネクタを使って通信経路の切り替えを行う際などには、コネクタが接続されないプラグや、装置に接続されないコネクタが生じる場合があります。このように開放状態となった光ファイバの接続面は、空気との境界で大きな屈折率の差が生じます。これにより、開放端では反射戻り光が発生しやすくなります。光終端器は、光ファイバの開放端に接続することにより反射戻り光を防止し、光通信システムへの影響を抑えます。
光減衰器の構造
光減衰器には、一定の減衰量を得ることができる光固定減衰器と、得られる減衰量を変えることができる光可変減衰器の2種類があります。
光固定減衰器の原理としては、光ファイバに斜め方向に挿入した金属膜によるフィルタを用いるものや、光減衰性を持つ金属イオンなどをドープした光ファイバを用いるものなどがあります。
金属イオンをドープした光ファイバは、ドープした金属イオンが光を吸収することで光パワーを熱に変換し、減衰を行っています。金属膜によるフィルタを用いた光ファイバでは、金属膜による吸収と斜め方向の反射により減衰させます。金属ドープ光ファイバは、金属膜を利用した製品に比べて構成がシンプルで耐パワー性、性能安定に優れ、偏波依存性が少ないのが特徴です。
光固定減衰器では、コネクタ形状のプラグイン型のものと、ケーブルの両端にコネクタを持ったケーブル形状のインライン型のものがあります。プラグイン型は、金属ドープ光ファイバを通したフェルールを両端に持ち、それぞれの端面をPC形状やAPC形状に研磨してコネクタ形状に組み立てたものです。コネクタの種類にはFC、SC、MU、LCなどがあり、オスメス形状のコネクタのように差し込んで使用されます。インライン型は、金属ドープ光ファイバの両端にコネクタが設けられ、伝送経路内に組み込まれます。光固定減衰器は、主に装置間や通信システム間の光パワーの調整に用いられます。
光可変減衰器は、光通信システムに使用される各種装置の調整や、光ファイバケーブルの特性測定用に主に用いられます。光可変減衰器の原理としては、磁気光学効果や、熱光学効果を利用した非機械式のものや、光学フィルタやミラーを移動させる機械式のものなどがあります。例えば、ミラーを移動させる機械式の光可変減衰器では、入射側の光ファイバと出射側の2つの光ファイバ、コリメーターレンズ、電圧を印加することでミラーが傾くMEMSミラーデバイスを備えています。電圧を印加されていない状態では、入射側光ファイバから入射された光は、コリメーターレンズを通してミラーで反射され、出射側光ファイバから出ていきます。電圧を印加することでミラーが傾き、結合損失が発生します。これにより、光パワーが調整されます。
光終端器の構造と原理
光終端器の原理としては、接合部とは反対側の面が斜めに研磨することで反射光がコアに戻らないようにしたものや、光減衰性を持つ金属イオンなどをドープした光ファイバを用いたものがあります。
接合部と反対側の面を斜めに研磨することで反射を抑制する光終端器は、例えば一方のコネクタが通常のコネクタと同じようにPC研磨され、もう一方のコネクタは端面が斜めに研磨されたピグケーブル形状のものがあります。このケーブルを差し込むことで、接続部では反射せずに光が通り、反対側のコネクタの端面では開放状態であっても斜めに反射されるので、コアに反射光が戻らず反射戻り光が抑制されます。同様に、フェルールの一方をPC研磨し、反対側を斜めに研磨して組み立てたコネクタ形状のものもあります。
金属イオンをドープした光ファイバを用いた光終端器は、光減衰器と同様に、ドープした金属イオンが光を吸収することで光パワーを熱に変換することで光パワーを減衰させて反射戻り光を抑制します。斜めに研磨することで反射を抑制する光終端器よりも構造がシンプルです。また、斜めに研磨されたタイプの光終端器では、高出力のレーザーによる光信号を使用した際、反射光が出射している端面部分が発熱して光ファイバ端面が損傷する恐れがあります。金属イオンドープ光ファイバを用いた光終端器は、デバイス内部全体で熱に変換して減衰させて反射を抑制するので、耐パワー性に優れています。光終端器のコネクタ種類はFC、SC、MU、LCがあり、PC形状、APC形状などに対応しています。
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