産業標準化事業表彰 受賞
弊社の技術統括本部長の野代卓司がIEC(国際電気標準会議)の委員として長年、標準化に貢献したとして2023年10月17日に経済産業省産業技術環境局長から表彰されました。
「標準化」って何?という方のために簡単にご説明すると、製品の寸法、仕様、評価方法などの規格を決めることです。電気のプラグやコンセントを各メーカーが勝手に作っていたら大混乱になるでしょう。また、買いたい製品を作っているメーカーの工場の状態が分からなければそこの製品を安心して購入できるでしょうか。1つの製品に何カ国ものメーカーが製造する数えきれないほどの部品が使われる今の時代、あらゆる製品について世界の国が参加して標準化が行われています。
標準化を推進する組織には、国際機関だけでも広範な分野をカバーする組織である国際標準化機構(ISO)、電気分野専門の国際電気標準会議(IEC)などいくつもの組織があります。この2つは、一国一代表制なので日本からは日本産業標準調査会(JISC)という経済産業省に設置されている審議会が代表していますが、JISCには約300の業界団体や学会がメンバーとして参加し、その中でさらに何百もの分野が分れており、その一つ一つで専門家たちが真剣に議論をしています。
世界のものづくり会社の利害を調整して世界標準を決める組織の委員を出せるだけでも各会社にとって名誉なことです。また、標準化を進める作業を主導できればその特定の分野だけでなく幅広い分野の情報に接することができるため新たな製品の開発にもつながる可能性もあるやりがいのある役目です。
標準化については欧米が主導権を取ることが多いのですが、光通信分野ではNTTが中心となって標準化をリードしてきました。
Orbrayは現在、 国内外の標準化に関わる団体に5名もの委員を出しており、野代はその中の国際電気標準会議(IEC)委員を16年にわたって務めてきたことを評価され、今回の表彰に至りました。この16年間に野代は3つの会議でエキスパート(専門家)として貢献してきました。具体的には、日本発祥の製品であり光ファイバ同士を高精度につなぐための単心円筒形全ジルコニア製フェルール及びジルコニア製の割りスリーブにおける光の出射角度、フェルール穴軸とフェルール軸との角度ずれ、同心度、引き抜き力の各測定方法について新規提案を行なったり、規格の改定作業においてプロジェクトリーダーを務めるなど委員として審議に参加するだけでなく、主導的な役割も果たしてきました。
ある分野で標準化が必要だと認められると、その提案者や委員のひとりがプロジェクトリーダーに任命され、実験データの提供をしたり、分厚い資料を英語で作成したりといったさまざまな作業を担当します。この文書を書くのがなかなか大変です。規格作成のためのルールブックまであります。リーダーは作った文書をIEC本部を通じて各国委員に配ります。そうすると各国の委員から「こうした方がいい」とか、「こうじゃないの?」という反応が返って来て、その一つ一つに丁寧に返事をしていかなければなりません。そうしたコメントが何十も集まるので、課題をまとめて年に2回、いずれかの参加国の招致に応じて集合して会議をし、各課題にどう対処するかを議論します。一つの規格が発行されるまでには6つのステージがありますが、会議は年に2回しかないので、それが全部完了するのに平均3年、長いと6年も掛かります。
光コネクタの標準化では、最近は全く新しい規格を作るよりも、規格の改定の方が多くなりました。Orbrayの主力製品である円筒形全ジルコニア製フェルールおよびジルコニア製割りスリーブの分野はNTTが世界に先駆けて開発し、Orbrayは他の国内数社とともに製造を担い、国内の 日本産業規格(JIS)で標準化を支援してきました。そこでまとまったものをIECのサブコミッティーに提案し、その一部について野代が中心となり、これを基本にした規格を世界で受け入れてもらうための作業を進めました。逆にIECで決まった国際的な規格をJISに反映するという作業も行っています。
野代は、表彰について、「大変名誉なことではありますが、私の前に多くの業界の先人たちが標準化にご苦労をされ、私はそれを引き継いだにすぎません。また、各メンバーのご協力がなくては成しえませんでした」と話しています。
(御参考)10/17開催 令和5年度産業標準化事業表彰式の様子
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/keihatsu/hyosho/index.html
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