光通信における光パワーの損失 挿入損失、反射減衰量、波長依存損失、偏波依存性損失、温度依存性損失
長距離、高速大容量通信に欠かせない光ファイバは、様々な原因で光パワーの損失が発生します。光通信における、光パワーの損失に係わる用語を解説します。
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光通信の原理
情報通信において、伝送容量と伝送速度の追及がたゆまず行われています。電磁波を利用する情報通信において、光は高い周波数と広い帯域を有し、最も大容量の通信を行うことが可能です。これを実現するために、多くの場合、光源としてレーザ光―半導体レーザを、通信路に光ファイバを、受信機としてフォトダイオードを使用します。通信に適した高品位な光源や、敷設に適した伝送路を持たなかった時代、最も高速、大容量の通信は電波や同軸ケーブルにより実現されていましたが、室温動作する半導体レーザ、低損失な光ファイバの登場、高速動作するフォトダイオードの登場により、もっとも高速で大容量の通信路は光を用いるものにより実現されるようになりました。
上のような光通信システムを構成するそれぞれの要素を特徴づけるものの一つが損失です。どのような光デバイスであっても、現実は理想のように無損失というわけにはいきません。様々理由で損失は発生し、変化します。安定した光通信を実現するためには、さまざまな原因で発生する損失をできるだけ小さくすることが重要です。
挿入損失、反射減衰量、波長依存損失、偏波依存性損失、温度依存性損失
以下に光通信における、光パワーの損失に係わる用語を解説していきます。
IL (Insertion Loss: 挿入損失)
光通信では、光ファイバを相互に接続することや、各種光デバイスと光ファイバを接続する必要があります。接続はスリーブやV溝基板、光コネクタなどの接続パーツによって行われます。たとえば光ファイバ同士の接続を考えた場合、光ファイバのコア部分が隙間やズレなく接続されなければ、光パワーが伝送されず、損失が発生します。 増幅を考慮しない場合、光ファイバや光デバイスを接続する際には、必ず何らかの光パワーの損失が発生し、入射光パワーと出射光パワーに差が生じます。この損失を挿入損失といいます。
RL (Return Loss: 反射減衰量、反射損失)
光は屈折率の異なる面で反射します。光ファイバを相互に接続する際には、隙間の発生などが原因となって屈折率の変化が生じると、反射が発生します。反射した光は光ファイバを経由して、入射したレーザなどの光源側へ戻ります。この反射して戻ってきた光と、入射光との比が、反射減衰量、あるいは反射損失になります。
反射による戻り光の存在は、光源の動作不安定を引き起こすなどの原因になるので、できる限り小さくする必要があります。光コネクタによるファイバ同士の接続を例に挙げると、コネクタは光ファイバを内部に通して保持するフェルールと、機構部品や外装などの各種パーツから構成されています。フェルールはジルコニアセラミックなどの素材をもとに円筒状に成形され、中心軸にそって光ファイバを通すための穴が形成されています。非常に小さなコアがずれなく向き合うよう、フェルールには高い精度が求められます。
ですがコネクタによる光ファイバの接続では隙間が生じやすく、これを防ぐためにコネクタ端面の物理的形状が規格内に収まるように正しく研磨されている必要があります。また、コネクタ端面は、斜め形状や球面状に研磨された上で、コネクタ同士を一定の力で押しあてることによって隙間なく光ファイバを接続し、反射による損失を抑えるようになっています。
WDL (Wavelength Dependent Loss: 波長依存損失)
光ファイバ通信では、特定の波長範囲の光が使用されますが、波長により損失の大きさが異なります。光ファイバ以外の光デバイスについても、吸収や散乱といった光学的な特性が波長ごとに異なることに起因して、挿入損失の大きさが波長によって異なることが一般的です。使用波長の範囲の中で、このような損失の最大と最小の差のことを波長依存損失と呼びます。
PDL (Polarization Dependent Loss: 偏波依存損失)
レーザ光のように、電磁場の振動方向が規則的な光は偏光(偏波)と呼ばれます。一般に挿入損失は入射光の偏光状態により変化します。この変化を、全ての偏波状態について挿入損失の最大値と最小値の差として求めたものが偏波依存損失になります。
TDL (Temperature Dependent Loss: 温度依存損失)
光デバイスでは、材料の温度依存性や、温度による膨張・収縮によって最適な位置関係からはずれてしまうことによって、損失が発生します。そのような、温度によって変化する挿入損失の変化量を温度依存損失(Temperature Dependent Loss: TDL)と呼びます。TDLは使用温度範囲内で温度を変化させたときの、挿入損失の最大値と最小値であらわされます。
Orbrayはフェルール、スリーブ、コネクターなどを中心に、セラミックス成形技術と超精密加工技術、高精度組立技術により、光を「繋ぐ」接続部品として世界中で使用されています。
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