耐環境型、非接触光コネクタ エキスパンドビームコネクタの特徴と活用

近年、データセンターや通信インフラの高速化・大容量化に伴い、光損失がない、安定した光接続技術の重要性が増しています。また、劣悪な環境下でも対応が可能な耐環境型接続のニューズも高まっています。光ファイバは、メタルケーブルに比べ外来電磁波の影響を受けず、高速で大容量の通信が可能です。しかし、光ファイバは取り回しに注意が求められ、特に光コネクタを用いた接続には、専門的な機材や技術が必要になります。例えば、無線電波が届きにくい海底や配管内部の調査に利用されている「ドローン用コネクタ」や、一度使用する度に消毒や滅菌を必要とする「医療用コネクタ」などがあります。
エキスパンドビームコネクタは、従来の光コネクタに比べ取り扱いが容易で信頼性が高い、非常に優れた特性を持つコネクタです。
この記事では、エキスパンドビームコネクタのメリットや用途など基本的な情報を説明します。
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耐環境型、非接触 エキスパンドビームコネクタとは?他のコネクタとの違い

エキスパンドビームコネクタは、コネクタ端のレンズ部により光を拡大し、もう一方のコネクタ端のレンズにより再集光して光ファイバ内に戻すことにより光を接続するコネクタです。
主な構成要素:
- コリメートレンズ
- 位置合わせ機構
- 光学インターフェース
これに対し、従来の一般的な光コネクタでは、コネクタの端面を直接接触させることにより接続するため、端面の劣化が起きる問題があります。また、端面の汚れや接触している面への微量の異物混入による影響が大きく、端面の傷などにより通信が阻害されるため、接続時に端面の研磨や清掃といった作業が必要で、取り扱いに専門的な知識が必要です。
しかし、エキスパンドビームコネクタは、非接触で接続されるため摩擦により劣化することがありません。抜き差しの際に劣化が生じることがなく、コネクタの付け替え再研磨などの処理が不要なため、光ファイバの専門知識がなくても安心して取り扱えます。
また、光を拡大することにより、異物の混入による影響が小さくなり、不純物が混入しやすい劣悪な環境でも高い信頼性を発揮します。
このため、エキスパンドビームコネクタは繰り返し抜き差しが発生するような用途や、異物の混入しやすい劣悪な環境での使用に適しています。
例えば、メンテナンスにより部品の取り外しや交換が必要となる航空機や車両では、繰り返し抜き差しをしても劣化が起きないだけでなく、光ファイバの専門的な知識がない整備士が作業できるため、大きな効果を発揮します。
エキスパンドビームコネクタのメリット

ここからは、エキスパンドビームコネクタのメリットについて、従来の光コネクタと比較して詳しく説明します。
異物に強い、高い耐久性
エキスパンドビームコネクタには、汚れ、埃、泥などの異物の混入に強いという特性があります。
光コネクタでは、接触している端面の間に異物が混入すると通信が阻害されるため、通信遮断などのトラブルが発生するという問題がありました。しかし、エキスパンドビームコネクタでは、微量の異物が混入しても影響が少ないため、通信トラブルが発生するリスクが低く、高い信頼性を発揮します。
このため、エキスパンドビームコネクタは、粉塵の影響を受ける屋外や工場など、異物の混入しやすい劣悪な環境での使用に適しています。
非接触の接続方式のため摩耗劣化しない
エキスパンドビームコネクタは、光拡大により非接触で接続されるため、コネクタ端面の摩擦劣化が発生しません。
光コネクタでは、接続時の接触や接続点の振動、ケーブルに加わる力などにより、コネクタ内部で接触している端面に摩擦が発生し損傷が生じます。また、接触している面同士が回転することにより、挿入損失が変動するといった点も問題です。これにより、長期間使用していると通信遮断や、接続が不安定になるなどの問題が起こります。
特に、機械類や航空機、車両など、可動部位での使用や振動が発生する環境下では、通信トラブルが発生しやすくなります。エキスパンドビームコネクタでは接触面の摩擦が生じないため、長期間の使用でも摩擦劣化による通信品質の低下がなく、安定した通信を実現することが可能です。
エキスパンドビームコネクタの用途

エキスパンドビームコネクタは異物の侵入や振動の影響を受けづらく、過酷な環境でも高い信頼性を発揮することから、航空産業・宇宙産業・軍事産業に多く用いられています。
現在はまだ特殊用途での使用が中心ですが、従来の光コネクタに対し、品質面における大きな欠点はないため、様々な用途で使用することが可能です。そのため、今後はより一般的な用途にも普及していくことが見込まれています。
例えば、航空機や軍事用よりも安価な一般の乗用車や工作機械等においても、エキスパンドビームコネクタのメリットは有効です。
近年の自動車はコンピューター制御となり内部に通信ケーブルが多く使用されていますが、この接続にエキスパンドビームコネクタが使用できないか検討されています。
また、通信品質の劣化が少ないため、医療機器、FA機器、ドローンなど、高い信頼性が必要な用途でも高い効果を発揮します。
エキスパンドビームコネクタ選定時の注意点

光コネクタの選定において重要なポイントは、接続時の挿入損失が少なく、接続後の通信品質が高いことです。
エキスパンドビームコネクタにおいても、この点は従来の光コネクタと変わりません。特にエキスパンドビームコネクタでは、非接触の接続であるため、光コネクタに比べ挿入損失ではやや不利であり、端部のレンズにより光を拡大・集光するため、非常に微細な加工技術が必要となります。
また、高品質な接続を実現するためには、光ファイバとエキスパンドビームレンズを高精度にアライメントして同軸を出すための部材であるフェルールの材質は重要です。フェルールの物理特性により、接続部の品質に大きな影響を与えることになります。
エキスパンドビームコネクタを選定する際には、このような品質の違いに注目し、実際の挿入損失のテストを行い、通信品質の高い製品を選定することが必要です。
Orbrayの光コネクタ技術

当社は光ファイバのフェルール・スリーブ製造を40年以上に渡って手掛けており、それによって培われた高精度な加工技術を活かし、高品質な光コネクタを製造しています。
全ての光コネクタには、当社製造の最高品質ジルコニアフェルールが使用されており安定した品質で使用が可能です。
また、当社で開発・研究をしているレーザー加工技術により、光ファイバ端部に対し微細で精密な加工が可能となり、回転に対する損失変動の少ない非常に高性能なコネクタとなっています。
エキスパンドビームコネクタまとめ

本記事ではエキスパンドビームコネクタの特徴やメリットを取り上げてきました。
エキスパンドビームコネクタは高い耐久性と、クリーニングレスで長く使える点が利点です。
Orbrayの光コネクタ技術に興味を持った方は是非詳細な解説ページをご覧ください。
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