サファイアの作り方
近代科学の発達によって、宝石の結晶がいろいろの元素からできていることが知られてから、多くの人々が元素を混ぜて美しい結晶をつくることをこころみました。人工サファイアの作り方を前後編でお送りします。
ベルヌーイ法
宝石級の結晶の合成に成功したのは、フランスの化学者ベルヌーイで、1881年のことです。
しかし、製法が公開されたのは1902年です。
Al2O3(酸化アルミニウム)の粉を上部のホッパーに入れて、ハンマーでトントンと叩いて粉を少しずつ下へ降ろさせます。
粉は落下する途中で、酸素と水素を混合した2000℃程度の火炎で加熱されて溶け、霧状の液滴になり、種子結晶の上に積もって、円筒状の結晶が成長するのです。
この方法は、原料粉末を酸水素炎で溶かして結晶を成長させますので、火炎溶融法と呼ばれますが、発明者の名前をとってベルヌーイ法とも呼ばれます。
ベルヌーイは3時間で10~15カラットの美しい結晶をつくったといわれていますが、その後装置は改良され、現在は直径10センチメートルくらいの円筒状結晶をつくることができます。原料に酸化クロムを混ぜると、ルビーになります。
溶融引上法 (チョクラルスキー法)
この製造法はポーランドの科学者であるジャン・チョクラルスキーが発明しました。
るつぼの中で溶けている融液に種結晶を接触させて、この種の温度が融液と同じ温度になるのを待って、これを徐々に引き上げて融液を冷却、結晶化させる方法を引上法(チョクラルスキー法)といいます。
融液を攪拌するために引上軸を回転させることによって液中の温度と濃度の分布が一様になり、品質の均一な結晶ができます。この方法の長所は、結晶の成長状態が直接観察でき、育成条件の良否が判別しやすいこと、大きなるつぼを使用することにより、大型単結晶の育成が可能であることです。短所はるつぼの内壁から出る不純物によって、結晶が汚染されることです。またc軸成長ができないため、a軸成長結晶では成長結晶からc面をくりぬくために需要の多いc面基板ではコストが高くなることです。
キロプロス法
チョクラルスキー法とよく似た方法ですが、主に融液の温度をゆっくりと下げていくことで結晶を育成します。結晶の引上げを行わず、(場合によっては遅い速度で引上げをおこなうこともあります)融液内で結晶が成長します。そのため、結晶が雰囲気にさらされることが少なく、熱応力を受けにくいので品質の高い結晶を得やすいのが特長です。チョクラルスキー法と同様、c軸方位での育成が困難ですが、ロシアにおいて製造コストを引き下げたウエハーが生産されるようになってきています。
るつぼ溶融法 (HEM法、熱交換法)
発明者のシュミット氏は、マサチューセッツ州にある陸軍の研究所に勤務していた人で、軍用機に備え付けてあるサイドワインダー(対空ミサイル)の赤外線感知窓として、超大型サファイアが要望されたため、この研究にとりくんだようです。
大きな真空炉の中央にモリブデンるつぼをおき、その中央の底に種結晶を入れます。その上に、サファイア屑をいれて、蓋をします。それから、るつぼを取り巻く発熱体で加熱して、サファイアが融ける約2050℃まで、温度を上げます。
このとき種結晶が融けないようにるつぼの外側から、ヘリウムガスを吹き付けて、種の部分をヘリウムガスで熱交換します。この方法を熱交換法(Heat Exchange Method)とよびます。
シュミット氏の研究報告によれば、直径18.4cm、厚さ13.3cm、重さ15.2kgもある大型サファイア円柱を造ることができたとのことです。
EFG法
EFG法(Edge-defined Film-fed Growth)は1971年Labelleらによって報告されました。
坩堝の中にダイと呼ばれるスリットを挿入し、そのダイ先端まで上昇してきた融液を引き上げ結晶化させます。結晶はダイの先端形状を引き継いで成長するため任意の断面形状を得ることができます。
チョクラルスキー法では困難であるc面を有する板を一度に何枚も育成できるため、コストダウンに有利なことが特徴です。
Orbrayでは、EFG法を採用した単結晶サファイアの育成をしています。当社のサファイアページでは、動画も使用してより詳細な説明を行っておりますので、ぜひご覧ください。
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