Orbray株式会社(旧アダマンド並木精密宝石)ブログ。技術のトレンド、製品のワンポイント、SDGsなどについて紹介していきます。

ダイヤモンドの合成

   最終更新日:    公開日: 2021/04

前回「ダイヤモンドとは」ではダイヤモンドの成分や原産地についてご紹介しました。今回はダイヤモンドを人工的に作る技術について紹介します。

ダイヤモンドの合成とは

大きく分けて(A)地球内部の環境を装置内部で再現した高温高圧合成法と(B)炭素を含むガスを原料とする化学気相合成法があります。いずれも日本で開発された技術です。

(A)高温高圧合成法

角谷均, 日本結晶成長学会誌, 39, 164 (2012).

原料をカプセルの中に詰め、高温と高圧をかけて、種ダイヤモンドを起点にゆっくりとダイヤモンドを作る方法です。結晶性が良い反面、高温高圧をかけるために大型の装置を必要とするため、合成できるダイヤモンドのサイズに制限があります。

(B)化学気相合成法

炭素を含むメタンガスと水素ガスを原料としてダイヤモンドを作る方法です。高温のプラズマ※1でメタンガスと水素ガスを分解し、分解されたメタンガスがダイヤモンドを形成し、水素が余計なグラファイトを除去するため、高品質なダイヤモンドを合成することができます。また、高温高圧合成法に比べて装置が簡便で、大面積にたくさんのダイヤモンドを一度に作ったり、大きなダイヤモンドを作ったりすることができます。さらに原料ガスの純度を制御することができるので、ダイヤモンドの純度を上げたり、意図的に不純物をダイヤモンドに導入したりすることができます。このような理由から、現在では高品質なダイヤモンドを作るスタンダードな方法になっています。 気相合成法はマイクロ波プラズマCVD法とホットフィラメントCVD法という二つの手法が主流になっています。以下にそれぞれの特徴を簡単にご説明します。

(B)-1マイクロ波プラズマCVD法

S.Eaton-Magana et al., Gems & Gemology, 48,124 (2012).

装置内に電磁波(マイクロ波)を導入し、プラズマを発生させ、原料ガスを分解してダイヤモンドを合成する方法です。結晶品質や純度を制御しやすく、高純度・高品質なダイヤモンドを合成することができます。図では2.45GHzのマイクロ波を用いていますが、より大面積にダイヤモンドを作る装置用には915MHzのマイクロ波が必要です。しかし、日本では電波法の関係で915MHzのマイクロ波を利用することができません。

(B)-2ホットフィラメントCVD法

A. Kumar et al., Thin Solid Films, 308, 209 (1997).

フィラメントを通電加熱したときに発生する熱電子で原料ガスを分解してダイヤモンドを作る方法です。フィラメントをたくさん並べれば、大面積にダイヤモンドを作ることができます。現在では工具へのダイヤモンドコーティングに多く用いられています。フィラメントの下に対象物をたくさん並べて、一度に処理することができます。

天然のダイヤモンドは地球が長い時間をかけて作ったものですが、技術の発展により人工的にダイヤモンドを作ることができるようになりました。すでに様々な形状、特性を持つダイヤモンドが私たちのくらしに役立っています。この先持続可能な社会を維持しつつ、さらに人類が発展するためにダイヤモンドが必要不可欠な材料であることを次回ご紹介したいと思います。


用語説明

※1プラズマ:気体分子が電離し、陽イオンと電子に分かれた活性化状態。

Orbrayでは、人工ダイヤモンドダイヤモンド基板の製造を行っております。

ダイヤモンド https://www.ad-na.com/product/jewel/material/diamond.html

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