光ファイバ用コネクタとは ~ 光ファイバ用コネクタの種類と多様な用途
光コネクタは、光通信システムの構築や各種光学機器間の接続において重要な役割を担っています 。光ファイバの接続では、光が通るコア部分が正確に接合されていなければなりません。光コネクタは、融着による接続とは異なり、簡単に着脱することができて、光ファイバ同士を確実に接続することが可能です。光通信システムでは、光ファイバケーブルを着脱して切り替えることが不可欠であり、光コネクタは欠かすことができません。
光ファイバの接続方式
光ファイバは、光信号を低損失で長距離伝搬することに長けておりインターネット回線などに利用されています。しかし、回線を分岐させたり、機器間やサーバー間を接続するためには光ファイバ同士を接続させる必要があります。ここでは一般的な光ファイバの接続方式とその加工方法について説明します。
1.コネクタ接続(PC研磨)
光ファイバの先端がPC研磨された状態で専用コネクタに内装され、PC研磨面を突き合わせる接続方式です。その特徴は、低い接続損失ながら何度脱着しても安定した品質を維持できる高い利便性にあり、装置や機器間の短距離接続や光インターコネクト接続に利用されています。
2.融着接続
ガラス製光ファイバの先端を放電加工により熱して融解させ、対向する2本の光ファイバ同士を接着させる接続方式です。その利点は、接続損失が非常に小さく高品質な伝送が可能となります。ただし、一度融着した光ファイバは取り外すことが出来ないため1度だけの接続方法です。
光コネクタとは
光コネクタとは、研磨したフェルールをコネクタ内部のバネ圧によって突き合わせ、フェルールの中心に固定された光ファイバを接続させる部品です。直径125µmと細い光ファイバの中心に位置するコアとコアが精確に合わさることで光の伝送が行われます。そのため、光コネクタやケーブルの終端処理は、光ファイバ通信にとって重要なコンポーネントの一つです。現在の市場には、精度、コスト、堅牢性、適合規格などの異なった要求に応えるため、多種多様な光コネクタが出回っています。
光コネクタを選択するうえで、まず考慮すべきは光ファイバの種類です。光ファイバの種類として、シングルモード(SM)あるいはマルチモード(MM)が挙げられます。
シングルモードコネクタとマルチモードコネクタ
シングルモードコネクタはマルチモードコネクタと比較して、光が通るコアの領域が小さく、接続には高い精度が要求されますが、キャリアネットワークで使用されるような、数十キロメートルに及ぶ長距離の伝送に適しています。一方、マルチモードファイバはシングルモードより大きなコアを持っているため、接続に要求される精度はシングルモードの場合と比較して緩和されます。これらはデータセンター等の屋内や工場の建物・敷地内など、比較的短い距離での接続に適しています。
光コネクタの品質を決めるパラメータ:挿入損失と反射減衰量
光コネクタは光伝送路を構成するうえで不可欠なものですが、同時に伝送経路中に不連続点をもたらします。これによる悪影響を最小限に抑えるために、できるかぎり正確にファイバ同士を位置合わせして接続をする必要があります。この接続状態の品質をあらわすいくつかの光学的な指標が、コネクタの品質を間接的ながらも表現することになります。光通信においては、パーセントで表されるよりもはるかに広い―時としてそれは一億倍にもおよぶ―値の範囲を扱うことから、対数の比(デシベル)によって表記されます。
接続状態を表現する主要な指標の一つは、挿入損失です。これはコネクタをかん合させて接続した場合の、強度の減少を表します。当然、接続前後での強度劣化はないのが理想ですので、この値は0dBに近い、小さな値であるほどよい、ということになります。
同様に主要な指標になるのが反射減衰量です。光は境界面で反射し、もと来た経路を戻っていきます。この光の影響を最小限におさえる必要がありますが、反射減衰量の値は、接続損失とは逆に、数字の絶対値が大きいほど反射が少ない、高い性能を持っていることになります。
コネクタ端面の品質と種類
コネクタの区別は、端面の仕上げの程度に関連した、以下の3つの種類に分かれ、国際規格で標準化されています。
PC (Physical Contact)コネクタ
PCコネクタの端面はわずかに凸型をしており、その反射減衰量は30~40dBです。
UPC (Ultra Physical Contact)コネクタ
UPCコネクタも同様に凸型の形状ですが、PCコネクタよりも優れた処理を施しており、その結果として反射減衰量は40dB~55dBが得られます。UPCコネクタは、デジタルTV放送、キャリアネットワーク、データセンターなどの高い信頼性を必要とするアプリケーションに最適です。
APC (Angled Physical Contact) コネクタ
APCコネクタは、端面のPC形状の研磨面が、通常のPCコネクタと比べて8度傾いているのが特徴です。これによって反射光が再結合してファイバの中を伝搬していくのを抑え、UPCコネクタよりもさらに小さな60dBの反射減衰量を得ることができます。これらのコネクタは高精度の光信号を伝搬させる必要があるようなアプリケーションに適しています。
光ファイバの研磨加工
光ファイバの接続方式として最も普及し、インターネット通信やサーバー間接続に欠かすことが出来ないコネクタ接続ですが、低い接続損失と何度も脱着可能な高い利便性は、一重に光ファイバ先端の研磨技術と品質に依存しています。もしも、研磨加工面に傷が残っていたり異物が付着した場合は、接続損失が著しく悪化し通信信号のエラーを招きます。また、研磨面が歪な形状だった場合は、対向する光ファイバのコア頂点位置にズレが生じ光ファイバ間に空隙が出来てしまい、この空隙により屈折率の異なる媒体の境界面で反射が発生し、反射減衰量増加による機器トラブルを招く恐れがあります。
ここでは、コネクタ接続の品質を左右する光ファイバの研磨加工技術について説明します。
1.コネクタ接続における光ファイバのPC研磨加工
コネクタ接続では、光ファイバ端が必ず接触するように光ファイバ端面が凸型となるようPhysical Contact研磨(PC研磨)を施します。その手順は最低でも下記5工程を経る必要があり、丁寧に時間をかけて研磨加工されます。
研磨方法の種類
PC(Physical Contact)研磨
フェルール端面を凸球面状に研磨する方法です。光ファイバ同士が物理的に接触(Physical Contact)するため、接続面に空気層が入らず、反射減衰量が小さくなります。ただし、研磨による加工変質層が残っているため、接続面での反射が0.3%程度残ります。
(主にマルチモードファイバで用いられる研磨方法でしたが、現在ではほとんどがUPC研磨されています)
反射減衰量:25dB以上
代表コネクタ:SCコネクタ、LCコネクタ、MUコネクタ、FCコネクタ
UPC(Ultra Physical Contact)研磨
PC研磨後に残った加工変質層を、さらに化学的機械研磨(CMP)により除去する研磨方法です。接続面でのキズや屈折率差がほぼなくなるため、反射率が0.001%以下となり、PC研磨と比較して反射特性が大幅に改善されます。
(反射減衰量が通信特性に影響を与えるシングルモードファイバで標準的な研磨方法となります)
反射減衰量:50dB以上
代表コネクタ:SCコネクタ、LCコネクタ、MUコネクタ、FCコネクタ
APC(Angled Physical Contact) 研磨
フェルール端面を8度の斜め球面形状に研磨する方法です。斜め研磨により反射光が入射側に戻らないため、UPCよりもさらに反射特性が良くなります。
(反射減衰量を気にするシングルモードファイバで利用されますが、PC、UPC研磨との接続互換性がないので注意が必要です)
反射減衰量:60dB以上
代表コネクタ:SCコネクタ、LCコネクタ、MUコネクタ、FCコネクタ
Flat研磨
フェルール端面を直角に平面研磨したもので、主に多心フェルールで利用される研磨方法になります。どうしても接続面に空気層ができてしまうため、使用時にはフレネル反射を抑える為の屈折率整合剤を塗布して接続します。
反射減衰量:-
代表コネクタ:MTコネクタ
斜め研磨(Angled rectangular)
光軸に垂直な方向でかつガイドピン穴中心を結ぶ線をX軸方向、X軸と垂直な方向をY軸方向とすると、多芯フェルール端面のY軸方向を8度に斜め研磨し、さらに特殊な研磨を行うことでファイバを端面から凸形状にする研磨方法です。ファイバがフェルール端面から突き出ていることでPC接続が可能になり、反射減衰量を非常に小さくすることが可能です。
(斜め研磨の向きにより接続できない場合があるため注意が必要です。)
反射減衰量:55dB以上
代表コネクタ:MPOコネクタ
光コネクタの構成
光コネクタは3つの主要な要素から構成されます。
- 第一にフェルールです。光ファイバのコアをマイクロメートル単位の精度で接続するための中核になる部品で、通常ジルコニアセラミクス、金属、ガラス、プラスチックといった材料で構成されます。
- 第二にコネクタ本体(ハウジング)です。フェルールを保持し、ファイバやケーブル被覆をつなぐもので、プラスチックや金属が用いられます。
- 第三の要素はコネクタ本体と光デバイスの間に機械的な接続を提供するかん合機構で、プッシュプル、スクリュー、バヨネット、ラッチといったものが挙げられます。
また、1本のケーブルの両端にひとつずつコネクタを備えるシンプレックス、および両端に二つずつコネクタを備えるデュプレックスといった構成があります。 このような様々な要素の組み合わせによって、多様な構成のコネクタが構成されます。
SCコネクタ
80年代中頃から、基幹伝送系だけでなくアクセス系においても光ファイバを導入する要求 が高まっていました。アクセス系では、多数の光コネクタを高密度で実装する必要があり、低コストで高密度実装が可能であって、着脱も容易にできる光コネクタが必要となります。SCコネクタは、NTT(日本電信電話株式会社)が開発し、1986年に実用化された光コネクタです。加入者を示すSubscriberとConnectorの頭文字をとってSCコネクタと名付けられました。それまでの同軸形(FCやST) 光コネクタに対しプラスチック成型部品(四角形樹脂ハウジング)を主体としたプッシュプル型の機構を持つ光コネクタであり、直径2.5mmのセラミックスフェルールを使用しています。フェルール端面はPC研磨を基本として研磨され、低反射減衰量、低接続損失の安定した接続を実現しました。着脱時にねじを指で回す動作が不要なため、着脱が容易で高密度実装も可能です。高い信頼性、堅牢性を持ち、低コストでもあるため、LAN、CATV 、光キャビネット等の内部、メディアコンバーター、FTTX(EPON、GPON等)など、光通信システムを中心に広く世界で普及しています。
1つの光コネクタのみのシンプレックスタイプと、2つの光コネクタを同時に接続できるデュプレックスタイプがあります。一般的に、シングルモードファイバのSCコネクタは青色、マルチモードファイバにはベージュ色、フェルール端面がAPC研磨されたものには緑色が使われています。
- フェルール径:直径2.5mm
- ハウジング素材:プラスチックハウジング
- かん合方式:プッシュプル式
- シンプレックス・デュプレックス:両方あり
- 使用される場面:LAN、CATV、公衆通信回線、伝送システム
プッシュプル式かん合機構とSCコネクタに関する詳細は以下記事でもご紹介しています。
LCコネクタ
LCコネクタは、SCコネクタの1/2のサイズのセラミックスフェルールを備え、プラスチック成型部品(樹脂ハウジング)を主体としたラッチ型の機構を持つ光コネクタです。一部のLCコネクタは、組み立て後に専用治具でコア偏心方向を6方向に調芯可能であり、高密度実装と超低損失の接続が可能です。FTTH(Fiber To The Home)接続、交換機、LAN、CATV、ローカルネットワーク、データセンターインターコネクト(DCI)等で使用されています。
- フェルール径:直径1.25mm
- ハウジング素材:プラスチックハウジング
- かん合方式:ラッチ式
- シンプレックス・デュプレックス:両方あり
- 使用される場面:構内配線、交換機、データセンター
MUコネクタ
MUコネクタは、MiniSCとも呼ばれ、SCコネクタと同様にプッシュプルタイプ型の機構を持つ小型の光コネクタです。SCコネクタを基礎として、1993年にNTTが開発しました。LCコネクタと同様にSCコネクタの1/2の直径1.25mmのフェルールと樹脂製の筐体を備え、SCコネクタと同様の信頼性、操作性を維持しつつ、非常に小型で高密度実装が可能です。一般的にデータセンター、テレコミュニケーション、ケーブル配線およびLAN等に使用されます。
- フェルール径:直径1.25mm
- ハウジング素材:プラスチックハウジング
- かん合方式:プッシュプル式
- シンプレックス・デュプレックス:シンプレックスのみ
- 使用される場面:光端局装置、光中継器
FCコネクタ
FCコネクタは、1977年にマルチモードファイバ用としてNTTが開発し、1979年にはシングルモードファイバにも適用できることが確認されました。日本国内の光ファイバケーブル網の普及に伴い、広く使用されるようになりました。 直径2.5mmのセラミックフェルールを備え、金属のネジにより割スリーブを備えたアダプタに固定されるねじ固定方式が使用されています。主にSMファイバで使用され、安定して強固に固定できる結合メカニズムが特徴です。指でネジを回して着脱する必要があるため、実装する際にはネジを操作できるだけのスペースが必要になります。光ファイバ測定機のリファレンスケーブル、光機器、LAN、CATV、公衆通信回線の接続等に用いられています。
- フェルール:直径2.5mm
- ハウジング素材:金属ハウジング
- かん合方式:スクリューナット式
- シンプレックス・デュプレックス:シンプレックスのみ
- 使用される場面:計測器、光機器、LAN、CATV、公衆通信回線
その他の種類のコネクタ
STコネクタ
STコネクタは、FCコネクタと同様に金属部品によりアダプタに固定する、AT&Tが開発した光コネクタです。バヨネットロックによりFCコネクタと同じように安定した接続が可能であり、容易に着脱することができます。LANや伝送システムの接続等に使用されています。
MTコネクタ
MTコネクタは、多心光ファイバケーブルの心線として使われる光ファイバテープを一括に接続する光コネクタです。1986年にNTTが開発し、アクセス系の多心ケーブル同士の接続や、地下設備、クロージャ、キャビネット等の着脱回数の少ない設備での接続に主に使用されてきました。
樹脂成型されたMTフェルールには、4、8、12などの個数で精密に穴が形成されています。多心光ファイバテープ心線を穴に通して接着固定し、端面が研磨されます。接続を行うには、2本のガイドピンとクランプスプリング、屈折率整合材が必要です。ガイド穴にガイドピンを挿入して2つのフェルールを向き合わせて位置を調整し、クランプスプリングで締結接合します。接続の際には、接合面に屈折率整合材を塗布して反射減衰を抑えます。
MPOコネクタ
MPOコネクタは、多心光ファイバケーブルを一括で接続できる、プッシュプルタイプ型の機構を持つ光コネクタです。NTTが1991年に開発しました。研磨された光ファイバをMTフェルールの端面から僅かに突出させて突合せるフィジカルコンタクト接続技術により、屈折率整合剤をする事なく、優れた光学特性を実現しています。クランプスプリングを使うMTコネクタよりも容易に着脱が可能であり、光通信システムの屋内配線や装置間接続等に用いられています。
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