サファイア研磨(c面) - 研磨限界 -
究極のサファイア研磨の実現
サファイアは、青色LED用半導体であるGaNをエピタキシャル成長させるための基板として、現在広く使用されています。これはサファイアの格子定数がGaNの格子定数に近いことと、GaNをエピタキシャル成長させる際の高温に耐えられる素材だからです。
品質の良いGaNをエピタキシャル成長させるためには、サファイア基板の表面粗さをできる限り小さくする必要があります。しかし、サファイアは非常に硬く、難加工素材であるために、極限の表面粗さを実現できる研磨を量産ベースで行うのは容易ではありません。当社は工業用宝石技術を原点とする“切る、削る、磨く”の固有技術を追求し、サファイア基板表面に原子1個分の段差を持つ究極の研磨技術を生み出しました。その結果、GaNのエピタキシャル成長における歩留りの向上につながり、お客様から好評を得ています。
青色LEDの構造とサファイア基板の条件
青色LEDの構造を下図に示します。サファイア基板の上にn-GaNがあり、その上に発光層、さらにp-GaNが積まれています。そしてn-GaN、p-GaNの上に電極が付いています。LEDの発光効率を上げるためには、発光層に電流を均一に流すことが必要であり、そのための下地となるn-GaNが全面均一な結晶となっていることが重要です。
一方、サファイアは六方最密充填の構造をしており、c軸方向に原子層が6層重なっています(下図参照)。そのため原子1層分の大きさは0.22nmとなります。
GaNを全面均一にエピタキシャル成長させるためには、サファイア基板の表面をc面が少しだけ傾いた状態にしておきます。もし理想的な研磨ができていれば、サファイアは下図のように階段状になるはずです。
GaNは気相成長させますが、成長メカニズムとしてサファイアの階段のへこみ部分から核が発生し、そこがまたへこみ部分になるため水平方向に成長していく、という過程を繰り返します。
GaNの大きさがサファイアの段差(ステップ)0.22nmとほぼ同じ大きさですので、テラスが平滑になっていれば、GaNが全面均一にエピタキシャル成長できます。
究極のサファイア研磨
このようなサファイアの表面を得るために、当社ではダイヤモンド砥粒による機械研磨を行った後、最終仕上げでCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)を行います。CMPは化学反応でサファイア表面を軟化させながら機械研磨を行うことです。実際にサファイア表面の表面粗さをAFM(原子間力顕微鏡)で測定した結果を以下に示します。
中心線平均粗さRaは約0.06nmとなっています。 一方、原子1層分が研磨されたときのRaの理論値を考えますと、JISによるRaの定義は、『Raは粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。』となっています(下図参照)。
下の図のようにサファイア基板が理想的な階段状になっていたとすると、1原子の高さをh、テラス幅をw、ステップ数をN、三角形の面積をSiとして、Raの理論値は以下のように算出されます。
ステップ基板
これは先ほどの実測値Ra≒0.06nmと良く一致することが分かります。つまりサファイアの原子1層分を除去した研磨ができていることが分かります。この基板を熱処理すると、さらに明瞭に原子1層分のステップとテラスを確認することができます。これをステップ基板と言います。
このステップ基板は通常原子一層分の高さを保つため、理論上、c面0.15度オフの場合、テラス幅が80nmであり、0.22nmの高さと80nmのテラス幅を用いたナノスケールとしての用途が期待できます。
従来はDNAなど、ナノの大きさのものを可視化・映像化する際に比較となるものがありませんでしたが、サファイアステップ基板の特徴を利用することで、ナノの世界の一定の基準・目安とすることが出来ます。
また、ステップ基板は超平坦面を持つためDNA観察ステージに加え、生体試料観察、計測用プレート等への応用が期待されます。
当社はサファイア以外にも、単結晶の研磨においてほぼ理想の研磨加工をすることが可能です。化合物半導体、超伝導体、誘電体等のエピタキシャル成長に適した単結晶の研磨加工を提供することが出来ますので、お気軽にお問い合わせください。
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