製造業の将来性は高い?日本に求められる役割や取組例を解説

米中摩擦や経済安全保障政策の強化、円安、人材不足など、日本の製造業を取り巻く環境は大きく変化しています。
本連載ではこれまで、米中摩擦下で日本の工場が再評価される背景(第一弾)と、日本の製造業が直面する課題と進められている変革(第二弾)を解説してきました。
本記事では、日本の製造業の将来性とこれから求められる役割を整理し、それらを体現する企業の取り組みを解説します。
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日本の製造業の将来性
日本の製造業は、価格競争を主軸とする立場から、代替困難な技術や製品を提供する存在へと役割を変えつつあります。ここでは、将来性を支える以下の2つの動きを解説します。
- 「代替困難な供給元」としての地位が向上
- 国内回帰と拠点集約が加速
「代替困難な供給元」としての地位が向上
日本では、2022年5月に経済安全保障推進法が成立し、特定重要物資の指定が段階的に拡大されています。2026年4月時点で16物資が指定されており、予算の総額は約2兆5,643億円に達しました。日本のサプライチェーンは制度面から強化され、世界から信頼できる調達先として選ばれる土台が築かれつつあります。
また、日本の製造業は技術面でも代替が難しい領域を多く担っています。主要半導体部素材で日本企業の世界シェアは約48%に達し、なかでもフォトレジストでは国内5社で世界シェアの9割を占めます。そのほか、ブランクス検査装置とマスク欠陥検査装置はレーザーテックが世界シェアをほぼ独占するなど、強い地位を築いてきました。
今後の日本の製造業は、価格競争ではなく、代替の難しい技術や製品によって選ばれるポジションへと進んでいくと考えられます。
出典:内閣府「サプライチェーン強靱化の取組」
経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」
財務省「ファイナンス2022年4月号」
国内回帰と拠点集約が加速
半導体分野を中心に、国内への投資が加速しています。TSMCの熊本(JASM)の第1工場は2024年末に量産を開始し、第2工場も2025年10月に着工しました。2工場合計の投資額は約3兆円規模、雇用は3,400名を超える見込みです。
また、ラピダスは北海道千歳で2nm半導体の量産を2027年度後半に開始する計画で、累計投資は7兆円を超えます。
政府は2024年11月に「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を策定し、2030年度までに公的支援10兆円以上、10年間で官民投資50兆円超を目指す方針を示しました。
このような支援が活用されて国内集積が進めば、雇用創出と安定供給、経済安全保障が同時に強化される好循環が期待されます。

出典:経済産業省「AI・半導体産業基盤強化フレーム」
日本経済新聞「政府のラピダス支援、1兆円上積み方針 累計2.9兆円に」
将来性を踏まえて日本の製造業に求められる役割
将来性を踏まえると、日本の製造業には以下の2つの役割が求められます。
- アナログとデジタルの融合
- 高付加価値製品の安定供給
アナログとデジタルの融合
日本企業は、世界シェア60%超を達成している品目が220以上あります。一方で、世界経済フォーラムが選ぶ「Global Lighthouse Network」(世界最先端工場)に選出された日本拠点は、世界223拠点のうち3拠点に留まっています。工場レベルでのデジタル変革は、まだ途上にあるのが実情です。
求められるのは、匠の技を捨てることではなく、デジタル技術との融合です。これまで蓄積してきたアナログ技術とデジタル技術を融合することで、他国に模倣されにくい競争力の核となります。
出典:NEDO「産業技術のフロンティアを拓く新たなマテリアルによるイノベーション」
経済産業省「2023年版ものづくり白書」
World Economic Forum「Global Lighthouse Network」
高付加価値製品の安定供給
2020年から2022年にかけての世界的な半導体不足は、特定の部品や素材が供給されなくなるだけでサプライチェーン全体が停止するリスクを浮き彫りにしました。この経験から世界の製造業が求めるようになったのは、単なる低コスト供給ではなく「止まらない供給体制」です。
日本は、高付加価値を武器に世界シェアの過半数を占める品目が多くあります。こうした高付加価値製品を安定的に供給し続けられる体制を持つことが、これからの日本の製造業が世界のサプライチェーンで不可欠な存在であり続ける条件となるでしょう。
出典:日本経済新聞「村田製作所、世界最小の積層セラミックコンデンサー」
矢野経済研究所「2024年版PAN系炭素繊維・複合材料市場の展望と戦略」
これからの日本の製造業に求められる力を体現するOrbrayの取り組み
Orbrayは、これからの日本の製造業に求められる以下の3つの取り組みを進めています。
- アナログの超精密加工技術をデジタル分野に応用
- 次世代領域への技術展開
- 生産拠点の集約と地域との共創
アナログの超精密加工技術をデジタル分野に応用
Orbrayは、「切る・削る・磨く」で培ってきた超精密加工技術を、光通信やシリコンフォトニクスなどの分野へ展開しています。
デジタル社会を支える高速・大容量通信の実現には、光を低損失で正確に伝えるための高精度な加工・接続技術が欠かせません。その一例が、Siフォトニクスチップの端面研磨です。Orbrayは、基板の大きさに合わせた専用治具を自社設計し、シリコンやニオブ酸リチウムなどの光学基板を加工しています。

こうした加工技術は、複数の光ファイバを高精度に配列するファイバアレイにも活かされています。超精密加工したV溝基板などに光ファイバを固定し、端面をサブミクロンオーダーの平坦度で研磨することで、光導波路と光ファイバの高精度・低損失な接続が可能です。Orbrayは、アナログの加工技術をデジタル基盤を支える高付加価値製品へ発展させています。

参考:Orbray「Siフォトニクスチップの端面研磨」
Orbray「ファイバアレイ」
次世代領域への技術展開
Orbrayは独自の「ステップフロー成長法」を開発しました。サファイア基板上にダイヤモンドを横方向に成長させる手法により、世界初となる直径2インチの大口径ダイヤモンドウェハの量産技術を確立しています。
2024年6月には、英デビアス傘下のElement Sixと戦略的提携を締結しました。両社の技術を融合させることで、ウエハースケールの単結晶ダイヤモンドの量産を目指し、2027年には、2インチのダイヤモンド基板の量産を開始する予定です。また3インチの量産技術も確立、4インチの開発をスタートしています。
応用領域は、EV向けパワー半導体、6G通信向け高周波デバイス、量子コンピュータ用の量子メモリなど、次世代産業の中核を担う分野へ広がっています。
「切る・削る・磨く」というアナログ技術の蓄積が、次世代産業の基盤材料を生み出しています。
参考:Orbray「Orbrayとエレメントシックスが世界最高品質の大口径単結晶人工ダイヤモンド事業で提携」
Orbray「次世代半導体向け単結晶ダイヤモンドウェハで世界最大級の成果を達成 ~3インチ結晶の生産技術確立、4インチ結晶の開発に着手、2インチウェハは量産準備の最終段階へ~」
生産拠点の集約と地域との共創
Orbrayは、2026年末までに秋田県湯沢市へ本社の移転登記を実施する予定です。1967年に湯沢市の誘致企業第一号として進出して以来、約60年の関係を築いてきました。
2023年8月には新工場Orbray[TRAD]を湯沢市岩崎で稼働させ、レコード針や時計用外装部品の生産を移管しています。
人材育成では社内教育プログラム「OrbrayAcademy」で3つのカレッジを運営し、2026年の新卒採用は60名を超える規模となりました。大半が秋田・青森など東北地方からの採用です。
Orbrayは地域との共創を通じて、雇用創出と安定供給の好循環を体現しています。
参考:Orbray「新本社および地域貢献施設の建設に着手 想定を上回る売上高の拡大を受け、中期経営計画の上方修正を決定」
まとめ|日本の製造業にはデジタル化と高付加価値化が求められる
米中摩擦や地政学リスクの高まりを背景に、日本の製造業は代替困難な供給元として再評価され、国内回帰と拠点集約が進んでいます。
これからの日本の製造業に求められるのは、長年蓄積してきたアナログの強みとデジタル技術を融合させ、高付加価値製品を安定的に供給することです。価格競争ではなく、質的な不可欠性で世界に選ばれるポジションへの進化が期待されます。
Orbrayは、超精密加工技術の進化、次世代領域への技術展開、地域と共に進める国内集積を通じて、これからの日本の製造業に求められる力を体現しています。
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