日本の製造業の現状と課題、世界の潮流に合わせた工場の変化を解説

円安や資源価格の高騰、人材不足、デジタル技術の飛躍的な進歩、中国依存による調達リスク。
日本の製造業を取り巻く環境は、この数年で大きく変化しました。
これらの課題は相互に関連しており、コスト上昇が投資の余力を圧迫し、投資不足が生産性の低下を招くといった悪循環を生みかねません。
本章では、日本の製造業が直面する5つの課題と、進められている3つの変革を解説します。
目次 [閉じる]
日本の製造業の現状|5つの課題と解決策
日本の製造業は、以下のような課題を抱えています。
- 円安・資源価格の高騰によるコスト増
- 生産年齢人口の減少による人材不足
- 中小企業のデジタル化の遅れ
- 設備の老朽化と投資不足
- 中国依存による調達リスクの増大
円安・資源価格の高騰によるコスト増
2022年頃からの急速な円安により、輸入に頼る原材料・エネルギーの円建て負担が増え、製造コストを押し上げています。
また、ウクライナ情勢や原油価格の高騰を背景に、原材料価格やエネルギーコストなどが上昇し、製造を担う企業の経営に影響を及ぼしています。
このような背景を踏まえて現場では、調達条件の見直しや、値上げ分を取引に織り込む交渉の必要性が増しています。
生産年齢人口の減少による人材不足

労働力の主軸となる生産年齢人口は、日本で減少傾向にあります。
日本の生産年齢人口は、1995年には8,726万人でしたが、2025年には約16%減の7,352万人まで減少しています。
一方で、人口動態そのものは止めにくいため、現実的には以下のような対策が必要です。
- ロボットやAIなどによる自動化・省人化で人手を置き換える
- 標準作業・データ化で属人性を薄める
- 技能の習得を教育設計で短縮する
- 配置の最適化で少人数でも運営できる体制を構築する
また人材面では、多様な担い手の活用も含め、安全性の確保や作業負荷の軽減など就労設計を同時に見直すことが重要です。
出典:統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在) P5」
統計局「人口推計 2025年(令和7年)10月報」
中小企業のデジタル化の遅れ
生成AIやクラウドなどの技術進歩を背景に、企業活動のデジタル化は加速しています。大企業では、経済産業省と東京証券取引所が上場企業を対象に「DX銘柄」を選定するなど、DXを経営課題として推進・開示する枠組みが整いつつあります。
中小企業では、デジタル化がこれから本格的に進んでいく段階にあります。中小企業白書(2025年版)によると、2024年時点ではアナログ寄り(段階1~2)の企業が64.8%を占めています。一方で、デジタル化を積極的に活用して競争力向上につなげている企業(段階4)も3.2%存在しており、今後の広がりが期待されています。
デジタル化が進まなければ、手作業や属人的な運用が残り、デジタル技術を導入している企業よりも競争力が低下します。まずは、クラウドサービスの利用やペーパーレスの推進などの小さなデジタル化から始めて従業員のITリテラシーを高め、データの一元管理やRPAによる自動化などの高度なデジタル化を進める流れが有効です。
出典:中小企業庁「第5節 デジタル化・DX」
設備の老朽化と投資不足
投資不足により設備更新が追いつかない状態は、老朽化を通じて生産性の伸び悩みにつながります。しかし、設備の導入や更新が不十分であるにもかかわらず、先行きの不安や返済の負担から投資に踏み切れない企業が少なくありません。
企業規模別に見ると、中・小規模企業の投資額が大企業より低い水準で推移していることが読み取れます。
出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」
原材料価格や人件費が上がることを考えると、早めの設備投資が長期的な利益につながる場合もあります。更新の優先順位付けと資金計画を早めに立て、省力化・自動化へつなげる設計が重要です。
中国依存による調達リスクの増大
日本の製造業では、重要鉱物など一部の素材で中国への依存が高く、地政学リスクとなっています。重要鉱物など一部の素材では中国への依存が高く、供給が政策判断で左右されるリスクがあります。
特定国への供給先の集中は、途絶時に生産停止を招くため、早期に解消しなければならない課題の一つです。
特定国への供給リスクを解消するには、代替調達先の確保や在庫の持ち方、材料転換、リサイクル活用など、供給途絶を織り込んだ設計に切り替える必要があります。
日本の製造業が進める3つの変革
日本の製造業では、デジタル技術の進歩や国際的な潮流の変化を踏まえ、以下の3つの変革を進めています。
- DXの推進
- GX・脱炭素の推進
- サプライチェーンの強靭化
DXの推進
日本の製造業では、人手不足やコスト上昇に対応するため、DXを通じた生産性向上が進められています。国もDXを企業価値向上の重要テーマとして位置づけ、経済産業省・東証・IPAが上場企業の取組を「DX銘柄」として選定・紹介する枠組みを運用しています。
実際に導入されている例としては、以下のようなものがあります。
- AIによる需要予測
- センサーとAIを組み合わせた予知保全
- 画像認識による外観検査
しかしながら、先述の通り特に中小企業ではデジタル化に着手できていない傾向があります。デジタル化を進められていない企業は、大企業で実施されたDX推進の事例を参考に、自社に適したシステムを導入するなどの取り組みが必要です。
GX・脱炭素の推進
日本の製造業では、経済成長・エネルギーの安定供給・排出削減を同時に目指すGXが重要な変革として位置づけられています。政府はGX推進のため、10年間で150兆円規模の官民投資を呼び込む方針を示した「GX2040ビジョン」を閣議決定しています。
具体的には、高効率モーター化やインバータ制御、コンプレッサの漏れ対策、排熱回収など、設備更新と運用改善を組み合わせる方式があります。
また、炭素税のように排出に応じた負担が導入されているため、対応の遅れはコスト負担の増大につながります。経済的な負担を被らないためにも、早期から脱炭素の取り組みが重要です。

Orbray株式会社では、脱炭素やSDGsなどの活動を通して、社会課題の解決に向けた取り組みを推進しています。
例えば、工場への太陽光パネルの取り付けや、タイでの植樹活動、未活用の間伐材をボイラーの燃料に活用するプロジェクトなどを行っています。いずれも短期的な対策ではなく、似日の事業活動に結び付けて継続的に取り組み、持続可能な社会の実現を目指しています。
経済産業省「GX2040ビジョンの概要」
サプライチェーンの強靭化
日本の製造業では、地政学リスクにより供給が途絶する事態を前提に、サプライチェーンの強靭化が進められています。
政府も、特定国・特定拠点への集中によるサプライチェーンの脆弱性を懸念し、重要な製品・素材の国内生産拠点の整備を支援する補助制度を実施しています。
具体的には、以下のような施策が講じられています。
- 生産拠点・調達先・工程の複数化
- 代替材料の確保
- 工場の国内回帰
このように、生産拠点や原材料の調達先を分散して一極集中を避け、生産の安定化を図ることが重要です。
出典:経済産業省「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」
まとめ|日本の製造業は変化を迫られている
日本の製造業は、コスト増やデジタル化の遅れ、人材不足などの多くの課題を抱えています。
これらを解決するには、DX・GXの推進やサプライチェーンの強靭化により、生産性の向上や生産体制の安定化、投資対象に選ばれる企業イメージ作りを進める必要があります。
対策できていない要素は、小さな取り組みからでも始めることが重要です。自社で解決できていない課題があれば、まずは部署・部門単位で実施し、効果を確かめてみてはいかがでしょうか。
次回は、日本の工場の将来予測や、世界での立ち位置などを解説します。



