環境発電(エネルギーハーベスティング)とは? -環境発電の課題とは?
環境発電で解決するIoT電力供給問題
モノをインターネットに接続するIoT (Internet of Things)や、モノとモノが相互に情報をやりとりするM2M (Machine to Machine)などの技術は、近年多くの場所で活用されています。モノにセンサーや通信機能などを持たせることにより、今まで得られなかった多くの情報を集められるようになり、遠隔でのモノの操作や、人手を介さずに情報を集めることなども可能になりました。
しかし、それと同時に、センサーや通信デバイスを駆動させるための電力供給が問題となっています。小型、軽量で人の手の届かないような場所に取り付けられることも多い、IoTやM2Mのデバイスは、配線や電池交換が容易にできない場合が多くあります。このような電力供給の問題を解決する方法として、環境発電への関心が高まっています。
環境発電とは
環境発電(エネルギーハーベスティングまたはエナジーハーベスティング)は、光、熱、振動、電波など、様々な形態で周囲に存在する従来利用されることのなかった微小なエネルギーを、電気エネルギーに変換(収穫:ハーベスト)して活用する技術です。周囲に存在するエネルギーを活用するので、環境発電とも呼ばれます。大規模な太陽光発電や風力発電とは異なり、発電量は微弱ですが、周囲の環境から電力を得るので、モバイル端末や小型のデバイスにも発電機能を搭載することが可能になります。環境発電を活用すれば、電源への配線や、電池の交換、充電、燃料供給などをおこなうことなく、無給電でのデバイス動作が可能です。人の手の届かないような場所にあるデバイスも、電力供給のためのメンテナンスを長期間おこなわずに使用できます。また、IoTやM2Mのデバイスは、非常に数が多く、今後さらに増大していくので、個々のデバイスに配線を接続することや、電池が消耗していないかメンテナンスすることは、場所の確保や作業の多さから難しくなっていきます。環境発電を活用すれば、そのような問題も解決されるので、今後のIoTやM2Mの普及においても重要な技術と言えます。
振動を活用した環境発電
振動による環境発電では、人や物が動く際に生じる振動、ドアや車輪の回転、水の流れなどの運動エネルギーを電気エネルギーに変換して活用します。発電には、コイルと磁石による電磁誘導や、圧電素子による圧電効果が用いられます。電磁誘導では、向き合った磁石とコイルのどちらかが動くことによって、コイル内の磁束が変化することで電位差が生じ、電力が得られます。圧電素子は、圧力がかかると、圧力に比例して分極が起こり、電力が得られます。振動や回転などの動きにより、磁石やコイルが互いに動いたり、圧電素子に圧力がかかったりすることで、電気エネルギーを取り出しているのです。
振動による環境発電の例としては、人が上を歩くと発電する床発電や、車のタイヤが上を通ると発電してセンサーが働く無電源車両検知システム、ドアの開閉センサー、波で揺れるブイによる発電などが挙げられます。他にも、リモコンのボタンを押す際の振動を利用するものや、手の振りによる振動を電気に変えて駆動する腕時計などが実際に使われています。
例えば、無電源車両検知システムでは、センサーが組み込まれたパッドを地面に置きます。その上を車が通過すると、振動により発電してセンサーが起動し、通過をシステムに知らせます。これにより、車の出入りや通過台数などが簡単に把握できるのです。電源への電源供給が要らず、センサーを置くだけで利用できるので、簡単にシステムを構築できます。
熱を活用した環境発電
熱による環境発電では、2つの物質の温度差により電位差が生じるゼーベック効果を用いて発電がおこなわれます。設備やプラントからの熱を使ってモニタリング用センサーを駆動させるものや、体温で発電する腕時計、加熱の際に発電する鍋など、各種実用化されています。
電波を活用した環境発電
テレビやラジオ、携帯電話など、空中には様々な電波が飛び交っています。電波による環境発電では、それらの電波を受信して電気エネルギーに変換して活用します。電波による環境発電としては、電流を一方向にだけ流す整流作用を持つ鉱石を用いて、電源を使わずに聞くことができる鉱石ラジオが古くから知られています。近年では、マイクロ波を直流電流に整流変換するアンテナ(レクテナ)を用いた、大規模な発電、送電にも注目が集まっています。
光を活用した環境発電
光を用いた環境発電は、ソーラー電池を用いたものが広く知られています。電卓や時計など、蛍光灯程度の光でも使用できるデバイスが各種あります。
環境発電の課題
活用が進む環境発電ですが、今後のさらなる普及に向けて課題もあります。
環境発電で得られる電力は、微弱で不安定です。利用できるデバイスは、電力消費量の少ないものに限られます。電力供給が突然途切れることも考えられるので、停電に対する対策も必要です。また、環境発電をおこなう機器の製造、設置に多くのコストがかかれば、それに見合うだけの発電量を得ることが難しくなります。今後より広い範囲で環境発電を活用するためには、より高効率で、高出力な発電ができるようにするとともに、低コストでの機器の製造、設置が必要です。また、デバイス側も、さらなる低消費電力化が求められます。 IoTやM2Mにより、無数のセンサーやデバイスがつながるセンサーネットワークの構築には、環境発電は欠かせない技術です。あらゆる情報をネットワークに接続されたセンサーやデバイスから集めて活用する、スマートシティ、スマートホーム、スマートファクトリーを実現していくためにも、より高度な環境発電の技術が開発されることが期待されます。
Orbrayではシンプルな機構で高い発電量を得られる環境発電デバイスの研究、開発に注力しており、数十ミリワットから数百ミリワットの電力を出力することができるデモ機のラインナップを用意しています。
振動発電デバイスのWEBサイトはこちら https://www.ad-na.com/ehiot/
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