無電源で駆動するIoTデバイスとは
IoT(Internet of Things)やM2M(Machine to Machine)などの技術は、近年多くの場所で活用されています。IoTにより、今まで得られなかった多くの情報を自動で集めることや、遠隔でのモノの操作などが容易になりました。
IoTの普及では、センサーや通信デバイスを駆動させるための電力供給が課題となります。課題を解決する方法として、無電源で駆動するIoTデバイスの活用が注目されています。
IoTの電力供給問題
IoTに使用されるセンサーや通信用デバイスの駆動には電力が必ず必要になります。しかし、IoTデバイスは小型、軽量で、電源の設置が難しい人の手の届かないような場所に取り付けることが多く、設置する数も多いため、電力供給が問題となります。
電源を近くに設置できたとしても、電源からIoTデバイスまでの配線が必要です。室内での配線の場合、配線をむき出しにしておくことは安全面やセキュリティの観点からも避ける必要があり、壁の中や天井裏、床下などを通して配線しなければなりません。多数のIoTデバイスに配線することは非常に手間がかかり、コスト的にもかなりの負担になります。また、屋外の配線であれば、防水対策が必要となり、なんらかの影響で断線しないように保護することや、環境に配慮した措置が必要になります。
駆動用に電池や充電式バッテリーを内蔵した場合、一定の間隔で交換作業が必要になります。駆動状況によっては頻繁に交換しなければなりません。IoTデバイスの設置場所や数によっては、交換そのものが非常に困難になります。駆動時間を長くするために電池容量を増やすこともできますが、電池サイズが大きくなり、小型、軽量が求められるIoTデバイスには向きません。IoTでは、設置やメンテナンスが容易であり、サイズもとらない電源が必要です。
しかし、IoTデバイスが自ら電力を作り出し、その電力で駆動することができれば、別に電源を用意する必要はなくなります。無電源でのIoTを実現できます。
無電源を実現する技術
無電源でのIoTデバイスの駆動を実現するものが、環境発電(エネルギーハーベスティング)です。光、熱、振動、電波など、様々な形態で周囲に存在する従来利用されることのなかった微小なエネルギーを、電気エネルギーに変換(収穫:ハーベスト)して活用します。
例えば、光エネルギーによる環境発電では、ソーラー電池を用いたデバイスがよく知られています。IoTデバイスにおいても、比較的弱い光でも発電できるソーラー電池を用いたものや、光が無い場合にも駆動できるように、充電池と併用したものなどがあります。
熱エネルギーを用いたものでは、2つの物質の温度差により電位差が生じるゼーベック効果を用いた発電デバイスが知られています。設備やプラントからの熱を使ってモニタリング用センサーを駆動させるものや、体温で発電する腕時計、加熱の際に発電する鍋など、各種実用化されています。
振動エネルギーを用いたものでは、人や物が動く際に生じる振動、ドアや車輪の回転、水の流れなどの運動エネルギーをコイルと磁石による電磁誘導や、圧電素子による圧電効果により電力に変えるデバイスが開発されています。環境発電を行うデバイスを搭載すれば、別に電源を用意する必要はなくなり、無電源でセンサーや通信用デバイスを駆動することが可能です。IoTの電力供給問題を解決することができます。
省電力、長距離無線通信を可能にするLPWA
環境発電(エネルギーハーベスティング)を活用すれば、無電源でのIoTシステムを実現できますが課題もあります。環境発電で得られる電力は、微弱で不安定です。より低消費電力で駆動するデバイスでなければ使用することが来ません。
近年、IoTデバイス向けの無線通信技術として、省電力かつ長距離での無線通信を可能とするLPWA(Low Power Wide Area)に注目が集まっています。LPWAの無線通信規格には、いくつかの種類があり、アンライセンスバンドとライセンスバンドに分けられます。アンライセンスバンドは、無線局免許を必要とせず、特定小電力無線とも呼ばれています。主にサブギガヘルツ帯の周波数を使用し、ノイズに強く、長距離通信にも適しています。Sigfox、LoRaWAN、Wi-Fi HaLow、Wi-SUNなどの規格があります。
ライセンスバンドは、大手通信キャリアが国から免許を受けて使用しているLTE周波数帯のLPWAです。アンライセンスバンドと比べ、広範囲で安定した通信を実現可能です。NB-IoT、LTE-M、LTE Cat.M1などの規格があります。
また、デバイスが低消費電力で駆動できるだけでなく、環境発電のデバイス自身も、より高効率で高い発電量が得られるようになることも必要です。不安定な発電を補い、安定的な電力供給ができるようにする、蓄電システムの併用や瞬間的な発電だけで駆動させるなど、電力利用の工夫も求められます。
実用化が進む無電源IoTシステム
無電源によるIoTシステムは既に実用化されているものも出てきています。例えば、電磁誘導発電デバイスと超低消費電力の無線通信モジュールを組み合わせたIoTデバイスにより、ドアの開閉やスイッチが押されたことを検知するシステムが開発されています。
他にも、環境発電(エネルギーハーベスティング)による発電と通信の機能を備えたセンサープレートを、駐車場の出入り口や通路に設置し、車の出入りを検知するシステムも開発、販売されています。無電源車両検知システムは、電源、配線が不要であり、簡単に設置ができるので、既存の駐車場にも取り付けることが可能です。
IoTの電力供給問題を解決する方法として、無電源駆動可能なIoTデバイスは今後も増えていくことが予想されます。
Orbrayは、環境発電デバイスの開発製造を行い、無電源センシング技術でIoT市場の電源供給の課題解決に取り組んでいます。詳しくは以下サイトをご覧ください。
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