バイオセラミックスとは? 課題や特性、用途を解説
バイオセラミックスは、バイオマテリアルの一種で、今後の医療分野の発展に欠かせない材料です。「バイオセラミックスを活用したい」「バイオセラミックスを応用した製品を開発したい」といった方向けに、バイオセラミックスの現状の課題や特性、用途を解説していきたいと思います。
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バイオセラミックスとは
バイオマテリアルの合成材料の種類には、金属材料、ポリマー材料、そしてセラミックス材料があります。
金属材料は、強度や靱性に優れており、破壊しにくいことが長所ですが、腐食と疲労が欠点としてあげられます。ポリマー材料は、軽量かつ柔軟性があり、加工性が良好という長所がありますが、強度や耐衝撃性において他の材料に劣ります。
一方で、人体の骨や歯の主成分はハイドロキシアパタイトという無機成分で構成されており、これはリン酸イオンとカルシウムイオンからなるリン酸カルシウム系セラミックスと同様の成分です。
よって、セラミックス材料は生体適合性が高いため、 歯科材料はもちろん、高齢化社会で需要が増加している人工骨や人工関節などに多く利用されています。そしてこの生体内の組織に活用されているセラミックス材料が、いわゆるバイオセラミックスやセラミックス系バイオマテリアルと呼ばれています。
従来のバイオセラミックスの課題
人工骨に使われる材料は、骨とほぼ同様に使用可能な生体親和性材料が求められます。前述したハイドロキシアパタイトは、骨と似た成分であるリン酸カルシウム系セラミックスで、骨に直接結合できる特別な性質を持っています
しかし、強度が低く、精密形状への加工が難しいため、用途に制約があるという課題があります。そこで、骨との結合性が良好で、かつ強度を保つことができるバイオセラミックスの開発が求められています。
バイオセラミックスの一種であるバイオジルコニア®とは
ジルコニアは、機械的特性がハイドロキシアパタイトの4〜10倍であるだけでなく、耐熱性、化学的耐久性、生体親和性など、人工骨に適した多くの特性を持っています。ジルコニアは金属のようにイオンを溶出しにくく、衛生面で無害であり、さらに見た目も美しいため、歯のインプラントなどでよく使用されています。また、摩耗に強いため、膝や股関節の骨部分にも適しており、臨床で高い信頼性を持つ材料です。
そこで、当社では、強度や加工性に優れたジルコニアを基材として用い、表面にハイドロキシアパタイトによる生体活性を付与した「バイオジルコニア®」という製品を開発しました。次項で詳しく解説していきます。
バイオジルコニア®に生体活性を付与する独自プロセス
通常、表面改質技術では、表面層-基材間のはく離や強度が問題になります。しかし、バイオジルコニア®においては、特に0.5 µm厚のハイドロキシアパタイト表面層とジルコニア基材との密着性に工夫が凝らされた特別なプロセスで作られています。
バイオジルコニア®の表面改質プロセスでは、まず、水中に1 µm以下の微細なハイドロキシアパタイト粒子を分散させたスラリーを作製し、それをジルコニア基材に塗ります。この際、ジルコニアを予め1050°Cに加熱して、濡れ性を改善させることで、スラリーが表面に均一に付着するような条件を確立しました。
これにより、骨に似たハイドロキシアパタイトが均一に形成され、強固な耐はく離性を実現しました。その後、100°Cから500°Cの温度で乾燥し、高温で焼き固めることで、ハイドロキシアパタイト層とジルコニア基材との間に溶融した混合層が形成され、従来の技術では得られないほどの密着性を実現しました。
これらの特性により、新しいジルコニア材料、「バイオジルコニア®」が生体補強材として利用可能となりました。
バイオジルコニア®の今後の展望・応用例
ジルコニアは、生体に適した材料で、歯科治療や人工骨の摺動部分などでよく使われています。しかし、ジルコニアは骨と化学的に結合する特性がないため、歯科材料や人工骨摺動部といった限定された箇所に使用されてきました。生体活性が付与されたバイオジルコニア®であれば、より多くの用途に適した生体材料として広く使えるでしょう。
例えば、変形性股関節症や大腿骨頭壊死症、関節リウマチなどの治療に使われる人工関節では、体重以上の負荷がかかり、運動によりさらに大きな負荷や衝撃がかかります。これらの人工関節においては、従来、骨頭とステムは別々の材料で作られてきました。
しかし、必要な部分にのみ表面改質を行ったバイオジルコニア®を体内に埋め込むことで、周囲の骨や組織と迅速に一体化し、人工関節の構造的な安定性や強度を向上させ、高負荷を支えることが可能だと考えられます。
このように、バイオジルコニア®は、複雑な構造や特性を有する生体骨の完全な代替となることが期待されます。
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