振動発電とは 原理と実用例を解説
振動発電とは、機械や建物、人の動きなどにより発生する振動の微小なエネルギーを電気エネルギーに変換する環境発電のことを指し、当社の発電デバイスではシンプルな電磁誘導方式の機構で高い発電量と高い発電効率により最大数百mWの電力を得られます。
振動発電を行う原理には「電磁誘導」「静電誘導」「逆磁歪効果」「圧電効果」の4つがあります。
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電磁誘導を用いた振動発電(磁力発電)
電磁誘導は、磁束の変化により、コイル内に電位差(電圧)が生じる現象です。例えば、コイルに磁石を出し入れしたり、磁石と磁石との間でコイルを回転させたりすることなどにより、コイルに電圧が生じて電流が流れます。モーターを使った発電も電磁誘導の原理を用いたものです。電磁誘導による起電力(誘導起電力)の大きさは、磁束の変化の速度に比例し(ファラデーの電磁誘導の法則)、起電力によって起こる電流の方向は磁束の変化を妨げる方向に流れます(レンツの法則)。
電磁誘導による振動発電(磁力発電)では、例えば、バネと磁石を使ったメカニカルな構造により磁束の変化をつくり発電する方法があります。磁石とバネを使った構造では、バネが取り付けられた磁石をコイル内に配置します。全体が振動することで磁石がコイル内で往復移動し、磁束の変化が発生します。これにより電位差が生じ、電力が得られます。
他にも、磁石と回転する軸がつけられたコイルを使った構造もあります。軸には重りがつけられ、全体が上下、左右に振られることにより重りが振られて軸が回転します。これによりコイルが磁束内で回転して発電が行われます。電磁誘導を用いた振動発電(磁力発電)では数V程度の電圧を得ることが可能です。
静電誘導を用いた振動発電
静電誘導は、帯電した物体に導体が近づいた時、帯電した物体の持つ極性とは逆の極性の電荷が、帯電した物体に近い側の導体の表面に集まる現象です。静電誘導による発電では、回転や落下などの物の動きと静電誘導の現象とを用いて、電荷を連続的に移動させることで正と負の電荷の差を作り発電を行います。摩擦を使った静電発電機などと同じように古くから知られ、利用されてきました。数十から数百Vの電圧を得ることが可能です。
例えば、回転による静電誘導の発電では、複数の電極が外周に沿って均等に設けられた回転する絶縁体の円盤と、電極に触れるブラシ、電極の電荷を誘導する2つの誘導子、電極から正負一方の電荷を集める2つの集電器で構成されます。誘導子は集電器と繋がり、対向する位置に設けられています。対向する位置にある電極は、誘導子の位置でブラシにより電気的に接続され、誘導子の逆の極性の電荷がそれぞれの電極に集まります。円盤が回転することでブラシから電極が離れ、続けて集電器に接触し、電荷が集電器に移動します。
誘導子の逆の極性の電荷がそれぞれの電極に集まります
これを繰り返すことで、それぞれの集電器に正負どちらかの電荷が集まり発電が行われます。回転による静電誘導を用いた振動発電では電磁誘導の際と同様に、重りにより回転する軸などが用いられます。
逆磁歪効果を用いた振動発電
強磁性体に磁場を印加して磁化させることで、形状が変化する現象を磁歪といいます。逆に、磁性材料に力を加えて歪ませることで、磁束が変化する現象を逆磁歪効果といいます。逆磁歪効果を用いた振動発電では、この特性を用いて発電を行います。 例えば、高い逆磁歪効果を持つ、棒や板状の金属をコイルの中に通します。振動によりコイルに通した金属が歪むと、金属の周囲の磁束が変化します。これによりコイルに電磁誘導が起こり発電が行われます。数V程度の電圧を得ることが可能です。
圧電効果を用いた振動発電
圧電効果は、水晶や特定のセラミックス材料などにおいて、力を加えて歪が生じることで電気分極が起こり、電圧が生じる現象です。身近なところでは、ライターやガス台の点火などにも用いられています。加えた力に比例した分極が起こり、数十から数百Vの電圧を得ることが可能です。圧電効果を用いた振動発電では、板状にして連続して強い力が加わる構造が用いられています。
Orbrayの振動発電の仕組み
Orbrayでは、振動発電デバイスの開発を行なっています。従来の一般的な振動デバイス(1mW)と比較し、数十〜数百倍の高出力発電が特徴です。
Orbrayの振動発電デバイスが高出力発電の理由
コイルとマグネットが動くことにより発電はしますが、これだけでは構造はシンプルな反面磁束密度が低くなり、高出力の発電にはなりません。
Orbrayの振動発電デバイスでは、ヨーク(継鉄)と呼ばれる磁性体でコイルとマグネットを囲うことで、マグネットの磁束が外に逃げない機構を採用しています。(下図参照)
高出力発電を実現するには、磁束を外に逃さず、コイルを通る磁束密度を大きくする必要があるのです。ヨークを用いた際の具体的な磁束の流れは以下です。
ヨークが無い場合は左図のようにマグネットの磁束が大気中に拡散しコイルには磁束が集まっていませんが、ヨークを用いることでコイルに磁束が集中し高い発電力となります。
また、実際の磁気特性を測定した結果は以下です。
【マグネット+コイル】
ヨークが無い場合は、空気中が青色になっており、磁束が拡散してしまっているのがわかります。
【マグネット+コイル+ヨーク】
ヨークがある場合は、空気中が紫色になっており、磁束の拡散を防ぎ、磁束密度を大きくしているのがわかります。
このヨークを用いた構造により、コイルを通る磁束密度を30%高めることができます。さらに、可動子の速度を増幅させる独自の機構の効果と合わさって、高出力発電を可能にしています。
高出力発電になることで、
・長距離の通信が可能になる
・一度の動作で複数回の無線信号を送れる
・市販のセンサーや無線モジュールを駆動させることが可能
といったメリットが生まれます。
振動発電の実用例
振動発電による環境発電は既に様々な場所で実用化されています。例えば、人が上を歩くと発電する床発電や、車のタイヤが上を通ると発電してセンサーが働く無電源車両検知システムなどがあり、電気代ゼロが特徴です。実用についてはお問合せください。他にも、ドアの回転で発電する開閉検知無電源センサー、波で揺れるブイによる発電、ボタンを押す際の振動で発電するリモコン、手の振りによる振動を電気に変えて駆動する腕時計なども実用化されてきました。 振動発電デバイスについても、加速度、衝撃、重力移動、揺れ、スイッチ、回転など、様々な動きに対応したものが開発されています。
また、アイデアの例としては、トンネルや橋梁、河川などの構造物インフラの遠隔監視、建設機械や産業機器のマシンヘルスモニタリング、車両の運行管理やポジションモニタリング、家畜の健康管理、ホームセキュリティ、見守りネットワーク、防災グッズ等に使用できます。
当社発電デバイスは高い発電効率や高い発電量になります。そのため、極低消費電力センサーや無線ではなく、市販されているセンサーや無線モジュールを駆動させることが可能となり、様々な用途への展開が期待できます。
設置が容易であり、高い発電量が得られる高効率な振動発電デバイスは、IoT技術の普及とともに今後も増えていきます。
振動発電デバイスについてはお気軽にご相談ください
Orbrayでは振動発電デバイスの開発製造を行い、無電源センサーネットワークでIoT市場の電源供給の課題解決に取り組んでいます。
「振動発電デバイスをどのように組み合わせたらよいか分からない…」
「自分たちが考えている用途に、振動発電デバイスが合うのか分からない…」
といった方もお気軽にご相談ください。
Orbrayでは、振動源の種類や求められる耐久性、必要な発電量などお客様の要求仕様に合わせて、柔軟にカスタム対応が可能です。
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