ダイヤフラムポンプの原理と構造図|小型化事例や用途を解説

医療機器や分析装置、製造装置では、液体や気体を正確かつ清浄に送り届ける技術が求められます。こうした繊細な流体の搬送を支える装置の一つが、ダイヤフラムポンプです。
ダイヤフラムポンプは、細胞分析装置や3Dプリンター、業務用プリンターなどに組み込まれ、ライフサイエンスから先端の製造プロセスまで幅広い分野で活用されています。
ただし、性能を十分に引き出すには、仕組みや特性を正しく押さえ、現場に適した機器を導入する必要があります。
本記事では、ダイヤフラムポンプの動作原理や特徴、種類や用途を整理し、使用時の注意点やOrbrayの導入事例まで解説します。
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ダイヤフラムポンプとは?
ダイヤフラムポンプとは、「ダイヤフラム」と呼ばれる伸縮性のある膜を動かし、ポンプ室の容積を変化させて液体や気体を吸入・吐出するポンプです。ダイヤフラム(diaphragm)は日本語で「隔膜」を意味します。
構造がシンプルで扱いやすく、流体の性質を変えずに送れることから、医療やライフサイエンス、先端の製造プロセスなど、幅広い分野で活用されています。
ダイヤフラムポンプの動作原理

ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムポンプの往復運動と2つの逆止弁の開閉によって、流体を一方向に送り出すポンプです。流体を送り出す動作は、吸込と吐出という2つの行程の繰り返しで成り立っています。
まず吸込行程では、ダイヤフラムポンプが引かれてポンプ室の容積が広がり、内部の圧力が下がります。このとき開くのは吸込側の逆止弁で、吐出側の逆止弁は閉じたままです。その結果、流体がポンプ室へと吸い込まれていきます。
吐出行程では、ダイヤフラムが押されてポンプ室の容積が縮み、内部の圧力が高まります。吐出側の逆止弁が開き、吸込側の逆止弁は閉じるため、流体が外へ押し出される仕組みです。ダイヤフラムを動かす動力には、エアー駆動式や油圧式、モーター式、ソレノイド式などがあります。
なお、ダイヤフラムポンプは吸込と吐出を交互に繰り返すため、流量が脈を打つように変動します。この現象は「脈動」と呼ばれています。
Orbrayが開発するダイヤフラムポンプは、モーターの回転運動を偏心クランクでダイヤフラムの直線運動に変換する方式です。医療機器や分析装置など、限られたスペースで精密な送液を求める現場で採用されています。仕様や性能を詳しく知りたい方は、下記の製品ページをご覧ください。
ダイヤフラムポンプの特徴
ダイヤフラムポンプの大きな特徴は、搬送する流体のクリーン性を保ちやすい点にあります。
ダイヤフラムポンプは、膜面を変形させて送液・送気します。同じ往復動ポンプでも、ピストンポンプのように摺動部が流体に触れる方式と異なり、ダイヤフラムポンプは接液部に摺動部がありません。そのため、摺動部の摩耗粉などで流体を汚しにくく、クリーン性を確保しやすい構造になっています。
また、摺動部から流体が流路の外へ漏れ出すリスクが少ないことも利点です。外部への漏れが起こりにくいため、薬液や揮発性の高い溶剤を扱う現場の安全性を高められます。
ポンプの種類
ポンプは原理や構造の違いによって、大きく「容積式ポンプ」と「非容積式ポンプ」の2つに分けられます。ダイヤフラムポンプは、このうち容積式ポンプの一種です。
非容積式ポンプ
(ターボ型ポンプ)
渦巻きポンプ
ディフューザーポンプ
軸流ポンプ
傾流ポンプ
特殊ポンプ
カスケードポンプ
容積式
容積式ポンプとは、ポンプ内部の空間を広げて流体を取り込み、その空間を狭めて押し出すことで、流体を送るポンプです。ピストンやプランジャーの往復運動を使うタイプや、ギヤ・スクリューの回転運動を使うタイプなどがあり、ダイヤフラムポンプもこの容積式に含まれます。
決まった容積ごとに流体を押し出すため、送る量を一定に保ちやすく、定量性に優れている点が特徴です。さらに、ポンプ自体に流体を吸い上げる力を持つタイプは、あらかじめ水を満たしておく「呼び水」なしで運転を始められます。
非容積式
非容積式ポンプとは、羽根車(インペラー)を高速で回転させ、その遠心力や水流の勢いで流体を送り出すポンプです。代表例には、渦巻ポンプや軸流ポンプがあります。
容積式とは異なり、一度に大量の流体を連続して送れるため、上下水道や排水など、大きな流量が求められる場面で使われています。一方で、運転前にポンプ内を流体で満たす呼び水が原則として必要で、送る量は配管側の圧力によって変動しやすい傾向です。
ダイヤフラムポンプの用途・応用例
ダイヤフラムポンプは、細胞分析装置や3Dプリンター、業務用プリンターなどに組み込まれ、ライフサイエンスから先端の製造プロセスまで幅広い分野で活用されています。
細胞分析装置
細胞分析装置では、検体中の細胞を整列させその種類、性質を調べるため、検体や試薬を安定して搬送する流体系が欠かせません。たとえばフローサイトメーターでは、検体・試薬・洗浄液・廃液の搬送にダイヤフラムポンプが使われることがあります。
分析精度を保つには、異物の混入を抑えることが重要です。ダイヤフラムポンプは流体と駆動部が膜で隔てられているため、流体を汚しにくい特長があります。また、流体に適した接液部材を選定することで、各種試薬の搬送にも対応できます。
3Dプリンター
3Dプリンターでは、造形に使う液状の樹脂をプリントヘッドへ送り続けるポンプとして、ダイヤフラムポンプが活用されています。光で固まる「光硬化性樹脂」などの液状材料を扱う方式では、樹脂タンクからヘッドへ材料を安定して供給する役割を担う部品です。
ダイヤフラムポンプが選ばれるのは、決まった量を精度よく送れる定量性と、特殊な樹脂にも接液部の素材選定で対応できる柔軟性があるためです。安定した供給は、造形品質の維持にも直結します。
業務用プリンター
業務用プリンターでは、インクを安定して供給・循環させるインク循環ポンプとして、ダイヤフラムポンプが採用されています。特に活躍するのは、大判の産業用インクジェットプリンターです。比重の大きい顔料の沈降を防いで気泡を取り除き、ノズルの乾燥や目詰まりを抑える狙いがあります。
同じ送液に使われるチューブポンプは、チューブをしごく構造上、定期的な交換が必要です。しかしダイヤフラムポンプなら、インクを汚さずに循環でき、メンテナンスの手間も抑えられます。
ダイヤフラムポンプを使用する際の注意点
「ダイヤフラムポンプが思うように吸わない」「すぐに故障してしまう」などのトラブルには、いくつかの代表的な原因があります。性能を長く保つために、使用時に押さえておきたい4つのポイントを解説します。
異物が溜まると性能が下がる
逆止弁の付近に異物が溜まると、ポンプの性能が低下します。ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムの動きに合わせて逆止弁が開閉し、吸込と吐出を切り替える仕組みです。
そのため弁の周りに異物が溜まって動きが妨げられると、吸込も吐出もできない状態に陥ります。特に精製水以外の液体を流したあとの放置は、固形成分の固着を招くため注意が必要です。
シール性が低下すると性能が下がる
逆止弁と台座のシール性が低下した場合にも、ポンプの性能は落ちます。シール性とは、弁と台座が密着して流体の漏れをせき止める性能のことです。
傷などで密着性が損なわれると、流体が逆流・漏出して本来の力を発揮できません。ダイヤフラムポンプの性能は逆止弁に大きく左右されるため、安定した自吸性と流量を得るには逆止弁の精度が欠かせないのです。
搬送物によっては特殊な素材を選定する必要がある
搬送する流体によっては、耐薬品性の高い特殊な素材が必要です。耐薬品性とは、薬品に触れても劣化しにくい性質を指します。たとえばインクジェットプリンターのインクには、ポンプ内部のゴム材を侵す種類があります。
Orbrayでは、きわめて耐薬品性に優れたFFKM(パーフルオロエラストマー)などを用いた高耐薬仕様もそろえており、関連する分野での採用実績があります。
過圧により破損することがある
吐出側の圧力が異常に高まると、ポンプや配管の破損を招く恐れがあります。圧力が高まりやすいのは、ダイヤフラムポンプがポンプ室の圧力を高めて流体を押し出すためです。
吐出側の配管が詰まる「締め切り運転」になっても、圧力は動力の限界まで上がり続けます。事故を避けるには、圧力を逃がす安全弁や、過負荷を検知して運転を止める安全スイッチが必要です。
ダイヤフラムポンプの導入事例
ここからは、Orbrayが手がけたダイヤフラムポンプの導入事例を2つ紹介します。いずれも、お客様の課題に合わせて仕様を最適化した事例です。
流体への悪影響を抑えつつ高耐薬性を実現
産業用インクジェットプリンター向けにポンプを提供した事例です。インクジェットプリンターでは、インクを安定して送り続けるポンプが欠かせません。
インクには水性や有機溶媒系、UV硬化系など多様な種類があり、色やインク種によっては、バルブやダイヤフラムといった可動部のゴム材を強く侵すものもあります。当社標準品の比較的耐薬品性が高いフッ素ゴムでも侵食が進み、十分な寿命を確保できないことが課題でした。
そこで当社は、接液部材の試験片を提供して要件の検証を進めました。インクはプリンターメーカーの機密情報にあたるうえ、同じゴム種でも配合によって耐薬品性は変わるため、実際に使うゴムで確かめる必要があります。検証を重ねた結果、極めて高い耐薬性を持つFFKM(パーフルオロエラストマー)や、PTFEコーティングを施した部材による高耐薬仕様で耐久性を確保しました。
なお、ゴムが侵される問題だけでなく、逆にゴムの成分がインクへ悪影響を与えた事例もありました。このときは解析で原因がゴムの添加剤にあると突き止め、別のゴム材へ切り替えて解決しています。
ポンプ長を38%削減し寿命を2倍に
携行医療機器向けに、ポンプを小型化した事例です。前モデルでも当社のポンプを採用いただいていましたが、機器のさらなる小型化に向けて、より小型のポンプが求められました。
新たに求められたのは、流量などの基本特性を同等に保ちながら小型・軽量化し、低振動・低騒音性は維持し、さらに消費電力を抑えてポンプの交換期間を2倍に延ばすことでした。これらは互いに相反する、難易度の高い条件でした。
実際、並行して検証された海外メーカーは要求に届きませんでした。改良の中でも小型化は、部品にかかる負荷を増やし、寿命や振動・騒音の面で不利に働きます。
当社はまず、扁平形状のブラシレスモーターをベースに据え、全長を大きく縮めました。増加する負荷に対しては、構造の負荷シミュレーションや潤滑油の検証、自社開発の光干渉式内周面精密測定機による摺動面の解析を駆使し、必要な寿命を確保しています。振動と騒音は試作を重ねて最適点を見極め、消費電力はモーターのパラメータ最適化によって抑え込みました。
こうして、ポンプ全長を38%削減し、交換期間を2倍へ延ばすことに成功しました。モーターを外部から調達することの多いポンプメーカーでは、ここまで踏み込んだ対応は容易ではありません。自社でモーターを開発する当社の強みが活きた事例です。
まとめ|ダイヤフラムポンプは搬送物の特性に応じて選定しよう
ダイヤフラムポンプは、膜の動きと逆止弁によって流体を送り出す容積式ポンプです。流体のクリーン性を保ちやすく定量性にも優れることから、細胞分析装置や各種プリンターなど、幅広い分野で活用されています。
その一方で、性能を安定して保つには、逆止弁の状態や過圧への備えに気を配る必要があります。そして何より大切なのが、搬送する流体の特性に応じて、接液部の材質や仕様を適切に選ぶことです。
Orbrayは、自社製の高効率モーターを核に、小型・軽量で耐薬品性に優れたダイヤフラムポンプを開発・製造しています。
FFKMを用いた高耐薬仕様やカスタム対応も可能で、お客様の流体や装置に最適な一台をご提案します。製品の詳細は、下記のダイヤフラムポンプ製品ページをご覧ください。
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