「ロボットが歩く」そんな当たり前を支える小さなモーターの存在

Orbray Future ColumnVol.5

アダマンド並木精密宝石株式会社 モーター事業部

アダマンド並木精密宝石株式会社は、
2023年1月1日から社名をOrbray株式会社に変更します。

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コアレスモーターは、ロボットの滑らかな動きを支える縁の下の力持ち

弊社の製品は、人目につかないところに使われることが多いので「これがうちの製品だよ」と指さして自慢できないのが社員としてつらいところです。しかし、コアレスモーターは人型ロボットやロボット犬に使われているので、ロボットの動きの自然さや滑らかさから弊社の技術力を皆さんの目で確認していただけます。

とはいえコアレスモーターと言われても何のこと?という方が多いと思います。コアレスというのは、コア(芯)がないという意味です。プラモデルなどに使う基本的なモーターは、中心に鉄のコアがあり、それに銅線を巻いて作られ、鉄芯が回ります。しかしコアレスモーターは全く異なる形状で、銅線のカゴ状のコイルが回転し、芯がないのです。

普通のモーターより寿命が長く、動きがスムーズ。そして何より小型化が可能です。弊社はドイツの会社からある大きさ以下のコアレスモーターの特許を買い、さらなる小型化を進めました。現在、モーターとして量産しているものとしては直径4mm が最小ですが、直径0.9mm のものを作ったこともあります。

レコード・カートリッジから派生したコアレスモーター開発の歴史

弊社の主力事業である工業用宝石や光通信の部品であるフェルールとモーターではまったく異なる技術のように思われるかもしれません。しかし、モーターは実のところダイヤモンド針などを使ったレコード・カートリッジから派生した技術なのです。

レコード・カードリッジの構造は、アルミチューブの先にダイヤモンドの針をつけ、重心を支点にレコードの溝の振幅を拾います。針の反対側にマグネットが付いていて、マグネットをコイルの中で振動させて発生した電気信号を音に変える仕組みです。音の再現性を高めるには、軽くて強いマグネットが必要でした。

このため、弊社は従来の磁石の10倍の磁力を持つ希土類マグネットを自社開発しました。しかし、実際にこの目的で使われるマグネットはごくわずかだったので、余ったマグネットを何かに使えないかと考えてできたのがモーター、それも非常に小さなコアレスモーターだったのです。

コアレスモーターを手掛けるメーカーは多くありません。こんなに小さいサイズのものを作れるのは世界で弊社だけです。2019 年には世界最小Φ0.9mmのモーターを利用することで、Φ1.1mm という極小の内径を計測可能な「光干渉式内周面精密測定機」の開発に成功し、これまでの業界の常識、概念を大きく変えたとして中小企業庁長官賞を受賞しました。

非常に小さいにもかかわらずパワーもあります。そのため医療機器やカメラレンズ、測量機器などさまざまな用途に使われています。世界の放送局の主要なカメラのレンズは日本のメーカーが市場を独占していますが、レンズに組み込まれているモーターはすべて弊社のものです。小さいのに動きが俊敏で、その上静かな撮影現場でも音が気にならないことが高い評価につながっています。

「aibo」や「RoBoHoN」の滑らかな動きを支えるロボット用サーボモーターの開発秘話

このほか、シャープが開発した電話もできる人型ロボットの「RoBoHoN」にはサーボモーター、SONYのロボット犬「aibo」の関節にも弊社のブラシレスモーターが使われています。

RoBoHoNの開発では当初、サーボモーターのモーター部分だけを納める予定でしたが、途中からサーボモーター全部の開発を任されました。このときわれわれは、Φ10 のDC ブラシレスモーターを使いコンパクトでかつパワーのある「ビルトインサーボ」を提案しました。

サーボモーターは①モーター、②平歯ギヤ、③クラッチ機構、④非接触ポテンションメーターで構成されています。スペースが小さいため、ギヤの配列を工夫して小型化に成功しました。外部から無理な力が掛かった時にその力を逃がすようなクラッチ機構も独自の発想でバネを仕込むことにより要求された水準をクリアすることができました。

サーボモーターは、プログラムによって動きを制御するモーターで、ロボットや自動機械になくてはならない部品ですが、弊社にとっては手掛けたことのない新しい分野でした。RoBoHoNには13個のモーターが入りますし、それを連携させながら制御しなければなりません。ですからそのプログラムを開発するシャープとの緊密な協働が必要でした。東京本社の開発部門と青森の工場がシャープの広島工場とタッグを組んで苦心惨たんの末に完成させた、この小型の「ロボットサーボ」では特許も取得することができました。今では多くのコミニケーションロボットに弊社のサーボモーターが採用されています。

RoBoHoN向けに開発したロボットサーボを利用して多関節ロボットの先端に使用するロボットハンド(K3HAND)も自社開発し、量産を開始しています。3本指ハンドの関節には計8個のサーボモーターを搭載しましたが、一つひとつのモーターを大幅に軽量化、小型化することで、より人の手に近い繊細な動きが可能となりました。

SONYの犬型ロボットaibo(アイボ)にも弊社のブラシレス・モータ―を採用していただきました。aiboのプロジェクトは極秘で進められていたため、お話を頂いた時は小さくてもハイパワーなモーターが欲しいということのみで、用途に関してはほとんど説明がありませんでした。SONYがaiboの新製品を発表し、弊社が作ったモーターがaibo向けだと判明した日のことは忘れられません。

aibo用のモーターもサーボモーターではありますが、RoBoHoN とaiboに使われている技術は全く異なります。aiboのサーボモーターは4極モーター。通常2極のマグネットが4極あるので小さくてもパワーが出るのです。2極を4極にするというと簡単なように思えるかもしれませんが、実は弊社のような高い精密加工の技術がないとできません。

さらに進化し続ける、モーターの未来

モーターは今後、さらに小型化、高応答性、高回転、高パワーに進化していくことでしょう。指令通りに動作をさせる制御技術も進化し、エンコーダー、ドライバー、AI(人工知能)の導入が進むと思います。また無通電、つまり電気がなくても保持する力を維持することができる技術も開発しています。

私は夢のあるロボットの進化を楽しみにしています。ロボットが人間の動きを補助したり、力が必要な場面で足腰をアシストしたり、人手不足の生産現場で一緒に働いたりと、人の役に立てる場面が今後、さらに広がると思います。また、RoBoHoNやaiboは機械でありながらも人間の心を癒す力があります。ロボットがますます自然に滑らかに動き、生活の様々な場面で役立てるように弊社はサーボモーターの開発で貢献したいと思います。

一方、世界的な脱炭素の流れの中、モーターで動く電気自動車の普及が進むでしょう。弊社が開発したモーターが、環境にやさしい持続可能な社会の実現の一端を担えるよう一層努力していきたいと思います。

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