ディスペンサーノズルとは?塗布作業の難しさや選ぶ際のポイントなども徹底解説
ディスペンサーとは決まった量の液体を出すための装置であり、製造業では必要不可欠です。ディスペンサーノズルは液体を精密に塗布できるディスペンサーに取り付ける部品であり、ディスペンサーの性能を左右する重要な部品といえます。
そこで本記事では、ディスペンサーやディスペンサーノズルの使い方や選ぶポイントなどについて詳しく解説します。
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ディスペンサーとは?
ディスペンサーとは、「決まった量を出す装置」を指します。日常生活では、キャッシュディスペンサーやドリンクディスペンサーなどで使われるケースが多いですが、製造業界では「液体の定量塗布装置」を指す言葉として定着しています。
ディスペンサーの使用用途
ディスペンサーの使用用途は、主に電子部品関連や自動車関連などが挙げられます。具体例は以下の通りです。
電子部品関連
・レンズとカメラモジュールの接触
デバイスの薄型化でカメラモジュールなどの部品が微小化しています。そこで微小化した部品に対してディスペンサーを使用し、微小量接着剤の非接触式塗布が行われているのです。
自動車関連
・内装部品へのグリス塗布
非接触式ディスペンサーと多軸ロボットを使用し、斜めからグリスを塗布することでドア部品やインパネ(計器盤)部分など狭小部分にも対応できます。
ディスプレイ製品
・スマートフォンやタブレットの組立
タッチパネルや有機ELまたは液晶ディスプレイ、フレキシブル基盤や小型カメラ、各種センサ類、バッテリーなど数多くの小型部品でスマートフォンやタブレットは構成されています。そこで多くの組立工程において、各種ディスペンサーでの接着剤の精密・微小量塗布を活用できるのです。
他にも化学・医療機器・医薬品吐出用・化粧品・食品など幅広い分野でディスペンサーは活用されています。
ディスペンサーの吐出方式
ディスペンサーの吐出方式は、空圧方式やチューブ方式、容積軽量方式などがあります。それぞれの吐出方式の特徴は、以下のとおりです。
・空圧方式
空圧方式にはシリンジ方式や定量バルブ(接触式)、定量バルブ(非接触式)方式があります。それぞれの方式の違いは以下の通りです。。
シリンジ方式では、シリンジに入れた液剤を圧力で吐出します。シリンジは使い捨てとなっており、洗浄が必要ないため比較的コストが低い点が特徴です。ただし、シリンジ内の液剤が少なくなると吐出量が変化してしまいます。
定量バルブ(接触式)は、液剤を入れたタンクを常時加圧してバルブへ液体を送り、バルブの開閉をコントローラーで行う方法です。大量に液剤を使用する場合や吐出精度を上げたい場合に役立つ方式といえます。
定量バルブ(非接触式)方式は、液剤を高速で飛ばせるため、加工物と非接触となる点が特徴です。入り組んだ箇所への塗布や高速の定量吐出に有効な方法といえます。
・チューブ方式
液剤が入ったチューブ自体に圧力をかけてチューブ内の液を送る方法です。瞬間接着剤の供給用途に適しています。接液部分がチューブのみであるため、本体のメンテナンスは必要ありません。
・容積計量方式
空気を使用せず、容積計量とモーター駆動で液剤を押し出す方法です。計量した分の材料を供給する仕組みであるため、材料自重や粘土変化の影響を受けず、間欠充填(袋内への充填)の精度が良い点が特徴です。
ただし、連続供給吐出はできず、材料に固形物が混入した場合には吐出量に影響する場合があります。吐出方式ごとに特徴が異なるため、用途に適した方式のディスペンサーを使うことが大切です。
ディスペンサーを使用するメリット
ディスペンサーを使用するメリットは、以下の通りです。
- 常に一定の吐出量を正確に制御できるため、精度の高い作業を安定して行える。そのため、生産性の向上や品質の安定につながる
- また、最低限必要な吐出量を正確にコントロールできるため、液剤が無駄にならずコストダウンにも結びつく
手作業の塗布では、作業精度が作業者のスキルや経験によって、バラついてしまうといった問題が起こりがちです。しかし、ディスペンサーでの塗布に切替えれば、熟練技術者がいなくても作業が可能となり、塗布工程を省略できます。
ディスペンサーノズルとは?
ディスペンサーノズルはディスペンサーに取り付ける部品です。ノズルの種類ごとに特徴が異なるだけでなく、塗布方法によっても特徴が違います。そのため、ノズルの種類や塗布方法を把握しておきましょう。
ディスペンサーノズルの種類
ディスペンサーノズルの種類にはSUS(ステンレス)・超硬・樹脂・ルビー・セラミックなどがあります。SUSや超硬は金属であるため、耐久性に優れています。ただし、金属製のノズルでは先端が磨耗して曲がってしまう可能性がある点に注意してください。
樹脂ノズルで嫌気性材料液に対応している製品ならば、ニードル内部で嫌気制材料液が固まるデメリットを防げます。また、樹脂は柔らかいため狭い部分へ吐出する際にも製品を傷めずに作業できます。
ルビーやセラミックのノズルは腐食に強いため、薬剤などの塗布を行う医療分野で活用されているので、耐摩耗性が高い点から、磨耗や曲がりの発生を低減できます。
ただし、ルビーやセラミックを用いて精密ノズルで先端形状のノズルを作成するには、高度な微細穴加工の技術が必要です。そのため、製造できるメーカーは限られている点に注意しましょう。
塗布方法
ディスペンサーの代表的な塗布方法は、以下の通りです。
・ポッティング
電子機器などの小型モジュールの固定・保護するために、塗布対象を封入するように樹脂を塗布する方法です。塗布された樹脂が硬化すると防塵や防水、防湿に役立ちます。
・コーティング
スマートフォンやパソコンなどの基盤や電子部品などの表面に保護膜となる液剤を塗布する方法です。
・面塗布
塗布対象の表面に広い幅で液剤を塗布する方法です。ただし、面塗布を行うには専用ノズルが必要となります。
・点塗布
液剤を点状に塗布する方法で、吐出時間やノズル径で吐出量の調整を行います。多連ノズルを使用し、塗布対象の形状に合わせて一度に複数箇所へ液剤を吐出することで作業時間を短縮できるため、生産性の向上が可能です。
・線引き塗布
塗布対象に対して、直線や曲線上に液剤を塗布する方法です。線引き塗布も1本のノズルではなく、多連ノズルを使用した方が作業時間を短縮できるため、生産性の向上につながります。
液剤を塗布する際には、塗布方法に適したノズルを選びましょう。
ディスペンサーノズルで行う塗布作業の難しさ
ディスペンサーノズルで行う塗布作業は、手動では困難です。手動の場合、少なからずバラつきが出ることに加え、作業のスピード向上にも限界があります。
しかし、ディスペンサーノズルを使用すれば、精度を担保しながら何度も同じ場所・大きさ・量で正確に液剤の塗布が可能です。そのため、作業の効率化を図れます。量産や低価格化、コストダウンなどが求められる製造業では、ディスペンサーは必要不可欠なのです。
ディスペンサーノズルを選ぶ際のポイント
ディスペンサーノズルを選ぶ場合は、液剤の種類がポイントになります。液剤には一液性と二液性があり、それぞれの特徴は以下の通りです。
・一液性
化学反応の仕方によって、以下のような種類に分けられます。
・溶剤揮発型:材料に含まれる溶剤が大気中で揮発して固まる
・水分揮発型:材料に含まれる水分が大気中で揮発して固まる
・水分反応型:材料が大気中の水分と反応して固まる
・熱硬化型:熱を加えると、化学反応を起こして固まる。加える熱の温度は材料ごとに異なる
・UV硬化型:UVの照射で化学反応を起こして固まる
・嫌気性型:大気が遮断されて固まる特性がある
・二液性
主剤と硬化剤に分かれており、混合することで化学反応を起こして固まります。また、液体の粘度もノズルを選ぶポイントです。
液体の粘度は、液体の粘りの度合いを示す指標です。粘度の目安は、低・中・高粘度の三種類で分類され、材料の温度が高ければ粘度は下がる傾向にあります。製造業で使用されるディスペンサーで吐出できる目安は液体に流動性のある状態となっているため、適したノズルや設備を使うことが大切です。
また、企業によってはメーカーに自社に合ったノズルの製作を依頼する場合があります。メーカーにノズルの製作を依頼する場合は、使用する液剤や塗布する場所、予算を明確にしておくことがポイントです。さらに、必要な精度や安定性を実現するために信頼の置けるメーカーに依頼しましょう。
Orbrayのディスペンサーノズルについて
Orbrayでは、高い研磨技術により安定的な塗布を行えるディスペンサーノズルの作成が可能です。液剤の流動性が向上する工夫を行っているため、液剤の詰まりや曲がりが発生せず、塗布精度を高められます。狭い箇所に塗布する場合でも、塗布位置にできる限り近づけるノズルを提案できるため、狭小スペースでも精度良く塗布できます。
また、①単結晶ルビー②セラミック③透光性セラミック④超硬(タングステン)⑤耐熱性樹脂(べスペル)などさまざまな素材での製造が可能であるため、使用している機材や液剤に最適な素材でノズル作成を行えます。
ディスペンサーノズルまとめ
ディスペンサーはさまざまな用途で使用され、生産性の向上や品質の安定につながるといったメリットがあります。しかし、最適なノズルを選ぶ場合は、ノズルの種類や塗布方法、液剤の種類や粘度などさまざまな点を考慮しなければなりません。
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