ダイレクト露光装置(DI露光機)とは?特徴や中核技術、最新動向を解説

半導体の製造では、パターン形成の精度が製品の性能を左右します。その工程を支えるのが露光技術です。
近年はフォトマスクを使わずにパターンを直接描画できる「ダイレクト露光装置(DI露光機)」が注目されています。フォトマスクの高騰や、多品種・短納期ニーズなどの背景から、マスクレスで柔軟な設計変更が可能な点が評価されています。
本記事では、ダイレクト露光装置の仕組みや特徴、適した用途、最新動向、さらに装置を構成する中核技術についてわかりやすく解説します。
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ダイレクト露光装置(DI露光機)とは?
ダイレクト露光装置(DI露光機)は、フォトマスクを使用せずに回路パターンを基板上に直接描画する露光装置です。設計データを基に、レーザーや紫外光を用いて直接レジスト層に照射することから、マスクレス露光装置とも呼ばれます。
主に、半導体の試作・多品種少量生産、近年ではパッケージ基板・PCB・MEMS分野など、柔軟性とスピードが求められる用途で活用されています。
ダイレクト露光はフォトマスクが不要なため、コストの削減や開発期間の短縮などに役立ちますが、要求される技術は高くなります。
従来のステッパーなどのマスク露光装置では、フォトマスクとウェーハを重ね合わせて位置を調整しますが、ダイレクト露光ではそもそもフォトマスクを使いません。よって、ダイレクト露光の際には、ウェーハの位置を高精度に認識・補正するアライメント技術が必要です。
ダイレクト露光装置の特徴
ダイレクト露光装置は、以下のような特徴があります。
1. フォトマスクが不要
2. 歪みに応じた補正が可能
3. スループットは従来方式より低い傾向
1. フォトマスクが不要
ダイレクト露光装置は基板にパターンを直接露光するため、フォトマスクが不要です。
従来のフォトリソグラフィでは、フォトマスクを使ってパターンを露光していました。しかしマスクレス方式では、設計データ通りにパターンを直接露光できます。これにより、フォトマスクの作成や管理、保管にかかる手間やコストを削減できます。
また、設計データを変更すれば露光のパターンを変えられるため、急な仕様変更にも対応可能です。特に、試作や少量生産といった用途では、従来よりも短期間・低コストで露光できるようになります。
2. 歪みに応じた補正が可能
ダイレクト露光装置は、基板の位置や形の歪みに応じて露光するパターンを補正できます。設計データをそのまま投影するのではなく、基板の状態に合わせてパターンを露光できるため、基板の状態にかかわらず高品質な露光が可能です。
基板一つ当たりの歪みは僅かでも、ずれや歪みが蓄積すれば、重ね合わせ精度や配線の位置ずれが課題になることがあります。ダイレクト露光装置を用いれば、歪みを補正しながら露光できるため、チップ全体の品質を高められます。
3. スループットは従来方式より低い傾向
ダイレクト露光は、レーザーの走査やミラー素子による部分投影などの方式でパターンを形成します。基板全体を一度に露光するのではなく、基板を複数の領域に分割して露光するため、処理時間が長い傾向にあります。
多くの基板を一括で露光する方式よりもスループットが低くなりやすいため、大量生産には不向きです。しかし、最近では複数ビームや高速DMD方式にて改善している例もあります。
ダイレクト露光装置が適している用途

ダイレクト露光装置は「フォトマスクが不要・設計データの変更が容易」という特長から、以下のような用途に適しています。
1. 試作品の作成
2. 多品種少量生産
3. 短時間でのチップ作成
1. 試作品の作成
試作工程では設計変更が頻繁に発生するため、パターンの修正をすぐに反映できるダイレクト露光が適しています。 設計データを変更するだけで露光に反映できるため、パターン変更のたびにフォトマスクを作り直す必要がありません。
このように、ダイレクト露光装置を利用すれば、開発サイクルを短縮しながら検証を繰り返すことができ、仕様変更にも柔軟に対応できます。
2. 多品種少量生産
ダイレクト露光装置は、フォトマスクを使わずにパターンを形成できるため、製品ごとに新しいフォトマスクを作成する必要がありません。フォトマスクの作成コストがかからないため、少量生産でもコストを抑えて露光できます。
3. 短時間でのチップ作成
ダイレクト露光装置を用いれば、マスク露光よりも短時間でチップを作成できます。
マスク露光をするには、パターンの設計とフォトマスクの作成が必要です。しかし、ダイレクト露光をする場合は、設計データを作成するだけで露光できます。
フォトマスクが完成するまでの待ち時間が発生しないため、チップの作成にかかる時間を短縮できます。
ダイレクト露光装置の最新動向
近年、ダイレクト露光装置は技術面・市場面の両方で導入が進んでいます。
技術面では、露光方式の改良により1 µm前後(機種によっては0.5 µm程度)の微細パターンまで対応できる装置が登場しており、試作用途が中心だったマスクレス露光の用途は広がりつつあります。また、複数のチップをつなぎ合わせて高性能化する「チップレット集積」が進む中で、基板の歪みやずれを補正できる特長は、ダイレクト露光の大きな強みです。
市場面では、フォトマスクの価格高騰が大きな背景にあります。微細化が進むほどマスク製造コストは上昇し、多品種の製品ラインを持つメーカーほど負担が増大します。ダイレクト露光は、フォトマスクが不要なため、コスト削減の手段としても有効です。
このように、技術進歩による高精度化と、製造コスト・効率化の観点から、ダイレクト露光装置は研究開発から実生産まで、幅広い用途で注目されています。
ダイレクト露光装置に使われている技術
ダイレクト露光装置には、以下のような技術が用いられています。
1. デジタル露光技術
2. 位置決め・アライメント制御
3. 光源・照明制御
1. デジタル露光技術
デジタル露光技術とは、設計データを光のパターンに変換し、基板へ露光する技術です。DMD(デジタルマイクロミラー素子)などの光変調デバイスを用いて、パターンを基板へ露光します。
デジタル露光技術により、フォトマスクを使用しなくてもパターン通りに露光できます。デジタル上で設計データを変更できるため、パターン変更や複雑な形状にも迅速に対応することが可能です。
2. 位置決め・アライメント制御
ダイレクト露光では、フォトマスクと基板の重ね合わせによる位置調整ができないため、高度な位置決めやアライメント制御が必要です。
具体的には、高解像度カメラや位置読み取りセンサーを用いて基板の位置を測定し、レーザー干渉計やエンコーダでステージを制御します。ここで得られた情報は、歪みや位置ずれの補正に役立てられます。
3. 光源・照明制御
ダイレクト露光装置では、光源の強度・照度分布・焦点位置を安定させることが精度に直結します。光源の出力を精密に制御し、照射ムラを抑えるために光学系が使用されています。その他、基板表面の高さに応じて焦点を調整する機構や、露光量を一定に保つためのフィードバック制御も重要な要素です。
こうした光源・照明制御システムにおいて、Orbrayは光接続技術(光コネクタ、ファイバアセンブリ、LDモジュール)を用いて露光装置向けのレーザーダイオード搭載ユニットを製造しています。
光学設計や光学シミュレーションにも対応しており、設計・実装・組立まで一貫して対応可能です。
ダイレクト露光装置は多くの高度な技術から成り立っている
ダイレクト露光装置は、フォトマスクを使わずに露光できる特長から、試作や多品種少量生産で高い効果を発揮します。これらを支えるのは、デジタル露光技術やアライメント制御などの高度な技術です。基板の歪みに応じたパターン補正機能や、1 µmオーダーの描画にも対応する技術進歩により、適用範囲は拡大しています。
ダイレクト露光は今後、フォトマスク価格の高騰や微細化、光学技術の高度化に伴い、柔軟性とコスト削減を両立できる手法として、研究開発から実生産まで活用領域が広がっていくと考えられます。
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