ラボの革新を牽引する小型モーター 活用のメリットと導入先の紹介

ラボラトリー(以下、ラボ)における科学技術の進歩は機器の高性能化と密接に結びついており、その中でも小型モーターは多くの実験機器や分析装置の心臓部として重要な役割を果たしています。
小型モーターは、一般的に直径数ミリメートルから数センチメートル程度の小さな電動機のことを指し、そのサイズを活かして様々な機器に組み込まれています。
本記事では、ラボで使用される代表的な機器を例に挙げながら、小型モーターの活用用途とその利点について詳しく見ていきます。
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小型モーターの種類とメリット

ラボにおける小型モーターは、精密な動作制御、省スペース化、低消費電力化などの利点から、多くの機器に採用されています。
小型モーターの種類
小型モーターは動作原理や構造によって様々な種類に分類され、用途に応じて選択されます。ここでは代表的な小型モーターの種類をいくつかご紹介します。
DCモーター | DCモーター直流モーター(Direct-current motor)の略称で、 電気エネルギーを回転運動に変換する一般的な小型モーターです。 構造がシンプルかつ安価であるため、幅広い用途で使用されています。 |
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ステッピングモーター | Wパルス信号に応じて一定の角度を回転するモーターで、 正確な位置決めや速度制御が必要な用途に適しています。 |
ピエゾモーター | ピエゾモーター ピエゾ素子の圧電効果を利用して動作するモーターで、 小型・軽量なだけでなく、微小な変位を生み出すことができるため、 非常に高い精度が求められる用途に適しています。 |
超音波モーター | 超音波振動を利用して回転運動を発生させるモーターで、 静音性が高く、精密な制御が可能できるほか、 電磁波を発生しないといったメリットがあります |
このように一口に小型モーターといっても、特長によって使い分けできることがわかります。
小型モーターのメリット
小型モーターはそのサイズの小ささと軽量さから、限られたスペースにも搭載可能なだけでなく、消費電力も小さいため省エネ化も期待できます。
年々、スペックも向上しており小型ながら高い出力と効率性を実現できるようになっています。
静音性にも優れ、快適な動作環境を実現できるほか、長期間にわたって安定した動作が可能です。
マルチチャンネルピペットにおける小型モーターの活用

複数の試料を同時に分注できるマルチチャンネルピペットでも小型モーターは使われています。具体的な役割や採用理由を説明します。
マルチチャンネルピペットにおける小型モーターの役割
マルチチャンネルピペットでは、ピペットのチップ装着部を上下させる駆動源として機能します。これにより精密な液量制御や複数チャンネルでの同時操作が可能になります。
マルチチャンネルピペットに小型モーターが採用される理由
小型モーターを採用することで得られる理由は正確かつ再現性の高い操作が可能になるからです。
まず第一に操作性の向上があります。電動化により少しの力で操作できるようになるため、作業での疲労が軽減されます。
正確な制御により、手動に比べて分注精度が向上する効果があるので、誰が操作しても同じ条件で分注できるため、実験結果の再現性が向上します。
また、 分注量や分注速度などを細かく設定できるなど、多機能なモデルあれば様々な実験に対応が可能です。
かくはん機における小型モーター仕様の活用

かくはん機液体を撹拌するための装置である「かくはん機」において、小型モーターが活用される役割と理由について掘り下げていきます。
かくはん機における小型モーターの役割
小型モーターは撹拌子の回転駆動源として使用されます。ダイヤルなどで回転速度やトルクを制御することで、目的の撹拌状態を実現します。
かくはん機における小型モーター採用の理由
小型モーターの採用によって装置全体の小型化・軽量化が可能になり、必要スペースも少なくなるため、より実験台スペースの有効活用することができます。静音性の高いモーターであれば、低騒音化も同時に測れるため、静かな実験環境を実現できます。
ロボットハンドにおける小型モーターの活用

ロボットハンドにおける小型モーターの役割
ロボットハンドは、人間の手に代わって様々な作業を行うための装置です。小型モーターの搭載でロボットハンドの指関節を駆動し、さまざまな物体の把持や操作を可能にしています。
ロボットハンドにおける小型モーター採用の理由
ロボットハンドに求められる人間の手のような細かい動作は、小型モーターを各関節に搭載することで実現できます。
特にロボットハンドがますます多指多関節になっているため、高トルクなモータが必要になっています。そこで高トルクながらも、軽量な小型モーターが注目されています。小型ながら高出力なモーターを採用することで、出力も向上し、重い物体も扱えるようになります。
その他のラボ機器における小型モーターの活用例

これまで紹介してきた機器以外でも小型モーターはラボで活用されています。その例をいくつか紹介していきます。
遠心分離機
遠心分離機は試料を高速回転させて成分を分離する装置で、小型モーターは回転子の駆動源として使用されます。高速回転である必要があるため、小型かつ高出力なモーターが求められます。
分離に適した回転速度の正確な制御、さらに試料に与える影響を最小限に抑えるため、滑らかな加速・減速を行います。バランス制御も行うことができるので、回転中のアンバランスを検知し、自動的に停止するなどの安全機能を提供します。
温度制御の面においては、一定の温度を維持するためのファン駆動に使用されることもあります。
自動分注装置
自動分注装置は、あらかじめ設定した量の液体を自動で分注する装置です。小型かつ高性能なモーターを使うことで、液体を吸引・吐出する際のシリンジを正確に制御できます。
分注ヘッドを正確に位置決めするXYZ軸移動、使用済みのチップの自動交換、バルブ制御による液体の流路切替も実施します。必要に応じて試料の撹拌も行います。
顕微鏡のステージ制御
顕微鏡の操作では観察対象を移動させる必要があり、小型モーターはステージの駆動源として使用されます。微細な動きを制御するために高精度の位置決めが求められます。
試料を水平方向(XY軸)で移動させて観察位置を調整、焦点を合わせるために、対物レンズまたはステージを垂直方向(Z軸フォーカス)に移動させます。
位置調整ができたら広範囲の試料を自動的にスキャンし、画像を取得します。また、電動での絞り制御で光量を自動的に調整します。
小型モーター技術の今後の展望

小型モーターは今後さらに小型・効率化が期待されており、ラボだけでなく産業機器、医療機器など、さまざまな分野でさらなる貢献が期待されています。
さらなる小型化と高効率化
小型モーター技術は、今後もさらなる小型化と高効率化が進展していくと予想されます。材料技術や製造技術の進化でより小さく、よりパワフルなモーターが開発されるでしょう。
ナノテクノロジーの応用でより微細な構造を持つモーターの開発が進んでおり、より効率的な放熱方法により、さらなる小型化と高出力化が可能になります。
3Dプリンティングなどの新技術により、複雑な構造のモーターが製造可能になっています。摩擦を極限まで減らし、効率と寿命を向上させる技術も研究されています。
IoTとの融合
モノがインターネットが繋がるIoT技術との融合と発展によって、小型モーターはより高度な制御が可能になると期待されています。例えばセンサーや通信機能と組み合わせれば、リアルタイムで状態の監視や遠隔操作などが実現可能になります。
使用していく中で蓄積・収集したデータを分析することで、故障を事前に予測し、適切なメンテナンスを行うことで予知保全ができます。また、使用環境や負荷を細かに分析することで最適なパラメーターの自動調整も可能となります。
このようにして、複数のモーターをより効率的に動かせるようになり、省エネルギーにより環境とコストカットにも役立ちます。さらに今後、導入する機器と連動する際の仮想モデルも可能になることで、よりスムーズに設備のアップグレードができます。
まとめ
本記事で解説したラボにおいて使用される小型モーターについてお伝えしてきました。小型モーターはサイズ感・軽量さ以外にも、静音性・精密性・省スペースなどさまざまな特性と種類があり、それぞれの特性にあったラボの機器に採用されています。
テクノロジーの発展と共に小型モーターのさらなる小型化・効率化、IOT技術によるデータとの連携による進化が期待されています。
Orbrayの小型モーター/マイクロモーターは以下のページからご覧いただけます。
小型モーターはこちら
https://orbray.com/product/dccorelessmotor/micromotor_index.html
マイクロモーター(超小型モーター)はこちら
https://orbray.com/product/dccorelessmotor/supermicromotor.html
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