SDGsの取り組み~ふろぷろOrbrayの最終報告会
Orbrayは、高校生が身近な課題を解決するプロジェクトを立ち上げ、その実行を大学生が支援する「ふろぷろ」の活動を応援しています。
昨冬の第1期に続き、6月から「ふろぷろOrbray第2期」のスポンサーを務めました。その最終報告会が8月27日、オンラインで開催され、10人の高校生が約100日にわたる各自のプロジェクトについて報告しました。
高校生たちは、市民や友達にイベントへの参加を呼び掛けたり、会場を借りるために大人に電話したり、プログラムを考え、チラシを作り、イベントの会場を借りるために市役所などに電話をするなどプロジェクトの遂行のためにそれまでの人生で経験したことのないことにチャレンジしました。電話ひとつを取っても最初は緊張しましたが、やってみたら大人が高校生の意図をくんで優しく対応してくれることが分かり自信を付け、すでに次のプロジェクトに向けた準備をしている生徒たちもいました。
審査員を務めた佐藤一夫湯沢市長、湯沢雇用開発協会 京野學 会長、Orbray湯沢工場の渋谷道男工場長らは、生徒たちがふろぷろというプロジェクトベーストラーニングによって社会と触れ合い、何度も障害にぶつかりながらも自力で、あるいは仲間のサポートによってそれを乗り越え、一回りも二回りも成長したことに感銘を受けておられました。またこの経験が生徒たちの将来に必ず役立つだろうと話しておられました。
ふろぷろの活動の詳しい内容については、こちらの記事やSNSでご理解いただけるかと思います。https://we-love-akita.com/magazine/2020/12/13/fropro/
Orbrayは、工場のある秋田県でSDGs(持続可能な開発目標)に貢献する活動を応援したいと考えていた時にふろぷろと出合い、そのビジョンに共感して応援してきました。弊社は、来年1月に社名を「Orbray」に変更するため、第1期は「ふろぷろADNa」、第2期は「ふろぷろOrbray」と銘打って進められました。
では、最終報告会の様子を見ていきましょう。
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プロジェクト最終報告
地域のつながりを創る
最初の発表者は、あやかさんでした。彼女は最近、地元が寂しくなったと感じていました。自然が豊かで稲庭うどんという全国区の特産品がある地域ですが、地元の稲庭小学校の閉校、そして新型コロナの感染拡大によって地域の交流が減ってしまいました。
特に小学校の廃校によって資源回収や運動会、地域のおじいちゃん、おばあちゃんに小学生が感謝を伝える敬老会など地域のイベントがなくなり、地域の人たちが小学校の行き帰りに子どもに声を掛けたり、子どもが高齢者の家の雪寄せを手伝うなどのつながりも薄れてしまいました。あやかさんは「人と人とのつながりが地域の良さであり、この街が大好きな理由だ」と気づき、「地域の輪プロジェクト」を企画。多世代の人が交流できる地域密着型イベントを計画しました。
このイベントの準備の過程で、地域の社会福祉協議会の方とつながり協力を得られたことで未成年では借りられない稲庭小学校の体育館を借りることができました。イベント当日は、雨だったので急きょ予定を変更しなければいけませんでしたが、それでも子ども16人、大人16人が参加して、アンケートでは満足度が100%でした!あやかさんは、参加者にボッチャ体験をしてもらいたいとボッチャ協会の人にお願いして来てもらうなど多くの人を巻き込みイベントの成功につなげました。
あやかさんは、前日に慌てて雨の場合の代替案を準備したことを反省し、高校生だからといって甘えず余裕を持って代替案を用意するなど一人の大人として行動しなければならないと述べるました。しかし、この経験を通して自分なりの町づくりのノウハウを学べたとして、新たな企画を計画中です。
秋田好きさ、なろ!
2番手は、ほのかさん。ほのかさんは秋田が好きで、同年代の高校生と秋田の魅力について語り合いたいと思いました。最初は全県の高校生を集めたオフラインのイベントを考えましたが、県北の高校生は時間も交通費も掛かり横手に来るのは難しいため、オンラインのイベントにしました。ところがお招きしようと考えていた「秋田民話の会」の方は年配の方が多いためオンラインが難しいということが分かり、悩んだ末に、オンラインで高校生を主体としたイベントへと方向転換しました。
電子チラシを作成し、ツイッターやインスタグラム、校内のチャットなどを利用して周知を図りました。イベントの申し込みは5人でしたが8月14日というお盆の時期だったせいか当日の参加者は2人にとどまりました。オンラインで秋田弁のクイズをしたり、秋田の食べ物、お祭りなど、それぞれが秋田にまつわる体験を話し合いました。
話が盛り上がり当初の1時間の予定を2時間に延長。参加者からは知らなかった情報や他の人の秋田に対するイメージや地元に対する愛を知り、こうしたイベントを続け秋田の魅力に目覚めて魅力を発信する若者を増やしたいと思ったそうです。
また、次は世代を超え、多くの秋田好きと繋がっていこうと思っているそうです。ほのかさんは、自分の思いを言葉にすることや失敗をおそれず行動することの大切さを学んだと語っていました。
未来の秋田美人育成プロジェクト
3番目のわこさんは、高校生になってスキンケアやメイクに関心を持ち、高校では教えてくれないこうしたテーマについて一緒に語り合える友達を増やし、専門家から話を聞いて知識を深めたいと考えました。
当初は湯沢市役所でワークショップを行う予定でしたが、コロナ感染拡大で会場が借りられなくなり、ロイヤルホテルに場所を変えました。さらにイベントの前日に講師がコロナに感染、他の人も濃厚接触者になり、オンラインにしようと思いましたが、講師の方の体調がすぐれず、やむなくワークショップを中止しました。しかし、それで終わりたくないと考え、すぐさまインスタグラムでの情報発信に方向転換しました。
大急ぎで考えたインスタグラムの利用でしたが、ストーリー機能でスキンケアやメイクの悩みを尋ねたところ96件の回答がありました。その悩みをドラッグストアの美容部員や皮膚科医に質問してそれをストーリーに投稿し、80件以上のリアクション(いいね)をもらいました。また、ストーリーを見てくれた人から 質問があり、それに回答し、その人の悩みを解決することができました。
わこさんは、コロナ禍にほんろうされ、状況をよく分析し複数のプランを準備することの大切さ感じました。また講師との連絡を密にすることも必要だったと話していました。
クラスルームをよりよく活用するために
4番目のひよりさんは、Googleの学校向けアプリ「クラスルーム」の活用をテーマに掲げました。クラスルームは、オンライン学習システム、日程変更の連絡、アンケートや課題の配信、テストや課題の答えの配信などに利用されているそうです。
このアプリは新着の通知が分かりづらく、先生からの説明も十分でなかったのですが、ひよりさんは、使いやすくする方法があるはずだと考え、調査しました。その結果、このアプリは新しい投稿があるとgmailに通知が届く仕組みなのにgmailを使っている生徒は半数程度しかおらず、gmailに通知が来ることを知っている人はさらに少なかったそうです。ひよりさんは、皆が使いづらいと思いながら、使わなければいけないと思い仕方なく使っていたことを知り、このプロジェクトが意義のあるものであったと確信し、みんなのためにもっと使いこなせるようになろうと思いました。
ただ、このプロジェクトの遂行に当たっては学校の許可が必要なことが多く、スケジュール通りに進まず、もっと余裕を持って計画すべきであったと反省しました。
わんちゃんと夏の思い出プロジェクト
続いての5番手は、ゆなさんで、「ワンちゃんと夏の思い出」と名付けたプロジェクトを実行しました。 犬好きなゆなさんは飼い主と犬が一緒に楽しめるイベントが少ないと思い、夏の思い出になるようなイベントを横手市・増田町の公園で開催しました。また、ペットの防災対策パンフレットを配り犬を飼うことに伴う責任や義務を飼い主に再確認してもらいました。
防災パンフレットを作成したのは、準備の時に動物愛護センターでもらったパンフレットを見て、防災対策について考えたことのない飼い主さんが結構いるのではないかと思ったからです。
このプロジェクトを通じ、ゆなさんはペットと一緒のイベントは去勢手術やワクチン接種、しつけなどがきちんとされているかの確認などに加え、トラブルが起きた際の対処法をしっかり準備しておくことなど、人間だけのイベントとは異なる主催者の責任があることを知りました。
準備の段階では、公園を借りるための電話など、断られるのではないか、うまく説明できないのではないかと非常に緊張しましたが、相手の方が優しく話を聞いて理解しようと努めてくれ、アドバイスまでしてくれたことに感謝し、とにかくやってみることだと思い、気が楽になりました。
ゆなさんは、さまざまな初めての経験をしましたが、その失敗も成功も全て自分の自信につながったと語り、今後もさらにやり方を改善しながら活動を続けたいと語りました。
湯沢市エコの街プロジェクト
6番目はさくらさんの「湯沢市エコノ町プロジェクト」でした。中学の理科の授業がきっかけで環境問題に興味を持ったさくらさん。今回は洋服の処分をプロジェクトのテーマにしました。湯沢市には服のリサイクルショップがなく、洋服のリユースも身近ではないと思いました。一方、湯沢市の広報誌でゼロカーボンシティ宣言を知り、もっと湯沢市の取り組みを知りたいと思い、市役所に話を聞きに行きました。そこで、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにするだけでなく、湯沢市のような緑の多い地域はCO2排出権を売り、それによって得た資金を地域活性化に使えることを学びました。
さくらさんは当初、海洋ゴミの回収を考えていたのですが、季節的に海開きの後だったため海洋ゴミがありませんでした。また洋服の処分に取り組み始めてからも2週間でチラシ作成、古着集めをしなければならず、時間がないと思い諦めかけました。しかし、ハードルが高かったチラシ作りをふろぷろの仲間に手伝ってもらったり、一緒にショートホームルームでクラスの人に対して古着の回収の呼びかけてもらったりしたことで実現にこぎ着けました。
フリマは大成功で宣伝もしなかったのに200人にチラシを配り、50着売ることができました。またお客さんに環境問題に興味を持ってもらうこともできたそうです。
さくらさんも、もう次回のことを考えており、今回は男性がたくさん来てくれたのに男性に売るものがなかったので、次は男性の服を集めようと考えているそうです。宣伝をしていたら、もっと集客できたと思い、慎重に計画するより、まずは行動することが大切だと話していました。
虫撃退プロジェクト
7番目の発表は、みさきさんの「虫撃退プロジェクト」でした。みさきさんは、虫が大嫌いなのですが、家族や友人も困っているという話を聞き、このプロジェクトを思いつきました。そして、インターネットで調査をし、動物や自然に害がなく、手軽にできる虫除け方法を探し、その情報を自分で検証しました。
まず、市販の家庭用殺虫剤について調べ、殺虫剤には シフルトリンなどの有効成分が含まれていること、シフルトリンは過度に摂取すると吐き気や頭痛を起こすことを知りました。次に、虫を殺さず、環境に優しい虫撃退法を探りました。
その結果、人間には聞こえづらく虫が嫌いなモスキート音と自然な匂いによって虫を撃退できるかどうかの実験をすることにしました。モスキート音についてはYouTubeで調べ、窓の近くで30分間ずつ3日間、音を流しました。しかし、モスキート音は、あまり効果がなかった上、耳鳴りのような音が聞こえ不快だったそうです。匂いの実験は、一般に虫よけ効果があると言われているレモンの絞り汁とローズマリーをそれぞれ窓際に3日間ずつ置きました。その結果、レモンの果汁で虫がかなり減少しましたが、ローズマリーでは減少しませんでした。
みさきさんは、このプロジェクトでインターネットの情報を信じず、自分で確かめて結論を出すことの重要性を学びました。
学力向上に必要な勉強法
8番目の発表者は、はるとさん。プロジェクトは「学力向上に必要な勉強法」。彼がこのプロジェクトを選んだのは、学校の定期考査で一部の教科の平均点が普通科にしては低いと先生から言われ、悔しく思ったことや、大学入試のため基礎から学力を固めたいと思ったためです。
そのために、勉強の仕方が分からなくて取り組めない人を手助けし、クラス全体の学力を向上させることを目指すことにしました。
ステップ1として、クラスのLINEで事前アンケートを取り、みんながどんな教科の勉強法に困っているかを聞きました。その結果、回答者32人中19人と半分以上の人が国語の勉強法が分からないと答えました。次に、ステップ2として、大学生にアンケートを取り、勉強法について情報を集めました。ステップ3は、集めた勉強法を自分なりにまとめ両面印刷で6ページほどの冊子を作りました。そして、それをLINEと直接配布で共有し、夏休み中の2週間、友達にその勉強法を試してもらいました。
実施後のアンケートでは、回答者19人全員が勉強方法に取り入れられそうなことがあったと回答しました。
はるとさんは普段、自発的に行動を起すことがあまり得意ではなく、この機会に苦手なことにチャレンジできて、いい経験になったと語っていました。
「最初はクラスの皆が協力してくれるかどうか分からない状況で始めましたが、自分が思っていたより、皆が協力してくれました。このように自分でプロジェクトを考えて実行する経験は初めてでしたが、 この経験を生かせる場面がたくさんあると思います」
教えて先輩プロジェクト
最後の発表はことみさんとすぐりさんの「教えて先輩プロジェクト」でした。
二人は高校入学後、進路について真剣に考えるようになりましたが、相談できる相手が限られていると感じ、大学生に相談したいと思いました。年齢の近い大学生の話を聞けば、未来を想像しやすくなると思ったのです。
まず、プチイベントを行い、それを踏まえて本番のイベントをいずれもオンラインで行いました。プチイベントでは大学を選択するための相談が中心でしたが、 本番のイベントでは将来の選択肢を増やしたり、視野を広くするために大学生と自由に話すことを中心にしました。ポスターやプログラムも作成しました。
部活や補習がある高校生でも参加しやすいように、イベントは夜の8時半から始めました。スライドを作り、ズームのリアクション機能などを使い、楽しみながら進行しました。
企画をし、高校生や大学生に声を掛け、時間を調節したり、参加者に正確に情報を伝えたりということが、想像の10倍ぐらい大変だったそうです。また、終了予定時刻の午後10時にはまだまとめまで行きつけていなかったのですが、そうした場合に、そこで打ち切るのか、続けるのかを事前に決めておらず、事前に決めておけばよかったと反省しました。
「企画から実行までを二人で進めるうちに絆が生まれ、企画力やトーク力が身についたと感じました。 部活の顧問の先生に、生意気だと言われるほど口が達者になりました」
また、このイベントで大学生から刺激を受け、イベントの翌日には、高校生でもできるボランティア活動をやりたいと思い情報収集を始めたそうです。
アイデアとしては湯沢PR隊や子供食堂のボランティア、地域、地元のお祭りの運営参加などが挙がりました。
イベント後のアンケートによると、参加した高校生たちは、進路や将来についての気持ちが前向きになり、モチベーションが高くなりました。また、大学生からも高校生と交流することが学びになったという感想をもらい、イベントが主催者の二人だけでなく参加してくれた高校生、大学生など、すべての人に利益のあるものになったと感じました。
プロジェクト全体を通して、 新しい考え方、価値観、人との遭遇の連続でわくわくすることも緊張することもありました。また、積極的に行動することが大事だと、強く感じたそうです。
二人は、このイベントをもっとたくさんの生徒の役に立つものにしたいと思うようになり、少しずつでもこのプロジェクトを発展させたいと、冬に第3回目のイベントをひらくことにしました。できればオフラインで、規模を拡大して開催したいと考えているそうです。
発表の後、4つの賞が授与されました。
「行動至上主義で賞」は、「未来の秋田美人育成プロジェクト」のわこさん、「クラスルームをよりよく活用するために」のひよりさん、「学力向上に必要な勉強法」のはるとさんが受賞しました。また、「わくわくにまかせたで賞」は、「地域の輪プロジェクト」のあやかさん、「虫撃退プロジェクト」のみさきさん、「おしせんー教えて先輩プロジェクト」のことみさんとすぐりさんが受賞しました。また、「全てを糧にしたで賞」は、「秋田好きさ、なろ!」のほのかさん、「湯沢市エコの町プロジェクト」のさくらさん、「ワンちゃんと夏の思い出プロジェクト」のゆなさんに授与されました。自分自身と社会の両方にインパクト(良い影響)を与えたことを評価する最高賞の「グッドインパクト賞」は、「地域の輪プロジェクト」のあやかさんに贈られました。
関連リンク
ふろぷろOrbrayインスタグラム https://www.instagram.com/fropro_orbray/
ふろぷろ秋田 https://www.froproakita.com/
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