Lily Style 女性経営者インタビュー [第四回]
代表取締役社長 並木里也子
第四回目のゲストは、子ども向けオンライン英会話教室を運営する株式会社ハグカムの道村弥生さんです。サイバーエージェントで新規事業の立ち上げや人事などに携わった後、2015年に独立してハグカムを立ち上げる一方、2017年に最初のお子さんを出産、今は2人の小さなお子さんを育てるワーママです。
里也子:ハグカムはどんな会社ですか?
道村:2015年から子ども向け英会話スクール「GLOBAL CROWN」をオンラインで運営しています。子どもの頃に持った好奇心がその後の人生に大きな影響を与えていると感じ、子どもの好奇心を育てたいという思いから10歳ぐらいまでの子どもにマンツーマンでレッスンを行っていて、先生は英語と日本語のバイリンガルなので、子どもの様子を見ながら日本語でフォローしてあげるようにしています。幼少期の好奇心を育み、夢中になる力を大切にしています。レッスンは子どもの集中力が続きやすいように1回20分にして「楽しかった!もっとやりたい!」と思ったぐらいで終わるようにしています。
里也子:スタートアップを経営しながらお子さんが生まれ、子育てをしているわけですが、大変ではないでしょうか?
道村:忙しいと言えば忙しいですが、大変と思ったことはありません。20代後半は子どもができなくて悩んでいたこともあり、子育てをしながら働きたいと思っていました。どうやったら楽しく両立できるかなと考えています。前職のIT系の企業で忙しく働いていたので、自分でスケジュールを決めて時間をどうマネージするかを考えながら仕事をすることが習慣になっていたように思います。
里也子:スケジュールのマネジメントが上手なのかもしれませんね。わたしも3人の子育てをしながらキッズキャンプの運営などをしてきましたが、大変と思ったことはありませんでした。アスリート時代は、優先順位を考えながらやっていましたね。
道村:できなかったことの言い訳を考えるのではなく、どうやったらできるかを考えることを社会人の最初に叩き込まれました。
里也子:教育事業に興味をもたれたきっかけを教えてください。
道村:祖父母も両親も教員という教員一家で、円満で仲が良くて、一緒に道を歩いていても、なんで空が青いかと急に問いかけてくる、いつもクイズ大会をやっているような家族でした。そういう問いかけが好奇心を育み、自分の中に根付いて、自分がこれからの人生でできることは何だろう、と考えるようになりました。また、ないものを作ることに楽しさを感じていました。前職で新規事業の立ち上げに携わったことも影響したかもしれません。
里也子:会社を立ち上げる上で何かきっかけとなるような出来事があったんですか?
道村:そうですねえ。 子どもの頃、アトピーだったんです。円形脱毛症になったこともありました。そんな風でしたので勉強はできるけど引っ込み思案な子でしたし、人生にも前向きではありませんでした。でも通っていた病院で、アトピーがもっとひどい子をみたりして、小学校3年生ぐらいの時に、「地球規模で考えたら自分は恵まれている。おいしいごはんが食べられ、温かい家族がいて友達もいて何て幸せなんだろう」とポジティブな考え方に転換しました。そういう経験があって、人のために何かできることはないかと考えるようになったのかもしれません。
里也子:「思考は現実化する」ということを座右の銘にされているそうですが、すごく、共感しました。わたしも「心に想う事が成る」、ネガティブなことでもポジティブなことでも思ったことは必ずなると思っています。なので、何を思うかが大事だと思い、ポジティブに考えようと思っています。
道村:日々考え続けていることが自分の言葉とか行動にも表れて、それが周囲の人に伝わっていって、協力者が出て来るとかアイデアがわくとかして現実のものになっていくので、この言葉をいつも念頭に置いています。
里也子:ビジョンがぶれないようにすることを大切にしているとおっしゃっていますね。
道村:そうですね。新しい事業を作ったからといってすぐできるものではないし、苦労も壁も多いです。でも自分の信念とずれたことをやってうまくいかなかったら後悔すると思いますが、ぶれずに突き進み、あれこれ考え、工夫を凝らしたら必ず道が開けると思うし、それでだめだったら潔く諦められます。
でも、会社が7年目に入り、ようやく去年ぐらいから採用を強化して組織を大きくしていくというフェーズに入ることができました。立ち上げ当初は、「子どもの『できた!』を育む」というのをビジョンにしていたのですが、今は、それはできてきたので、視点を上げてその先にあるもの目指そうと思って何度もみんなで議論しました。「子どもの『夢中の力』を信じる」というビジョンは昨年設定しました。会社が目指すビジョン、ミッション、日々のバリュー(行動指針)みたいなものを言語化したというのは大きな経営判断だったと思います。そして、子どもの夢中になれる力を信じ、それを育てていける会社になろう、と考えました。
里也子:とても勉強になります。Orbrayは80年続いてきた会社で、祖父と父はカリスマ性のある経営者だったので、トップダウンでやってきました。わたしは一人の力ではなくみんなで助け合って成長していきたいと思うのですが、今の時点ではビジョンと言われても考えたこともないという人もいるので、お互いを理解し合えるチームを作って考えていくと、より持続的な経営ができるのかなと思っています。
道村:自分がこういうことをやりたいというのがあるので、そこに共感して仲間になってくれる人を探していかないとメンバーも採用も外部のパートナーも増えて行かない。それができるのが経営者としての自分の強みだなと思っているので、自分が誰よりもハグカムのことを語って、採用するかどうかにかかわらず仲間になってくれそうな人に常に話をし続けるようにしています。そうしていると採用につながったり、ビジネスパートナーになってくれたり、そこまでいかなくても何か手伝うよと言ってくれる人が現れたりします。それだけでも会社としてはすごくありがたいです。共感を呼べるコミュニケーションを心掛けているかなと思います。
里也子:社長自らがハグカムのことを誰よりも語れるというような熱い思いを持ち、それを伝えるのが大事なのですね。わたしも採用面接のときに、最近の学生さん、けっこうするどい質問をしてくるので、会社のことを熱く語っていたら、学生さんから、「すごく会社と社員のことが好きなことが伝わりました」と言ってもらったことを思い出しました。
子どもを信じる子育て
里也子:わたしは、子どもたちに自然体験からの学びを伝えたいと思ってキッズキャンプをやっていた部分もあるんですが、お友達との関わりとかライバルが生まれたことでグングン伸びたりといったようなことがありました。弥生さんもお子さんからインスピレーションをもらうようなこととかありましたか?
道村:親ばかかもしれませんが、自分の子どもは育てやすいと思っていて、あまり干渉しないようにしています。あれやって、これやってって子どもながらに考えて行動しているのをみていると、よく考えているし工夫しているなって思うので、あまり邪魔しちゃいけないなと思っています。
里也子:わたしも、子どもたちを尊敬しています。わたしが想像もできないような事を、自分たちで考えて見つけていく力があると感じているので干渉はしません。信じて待つことを覚えました。大人が関わればすぐにできることですが、待つことが大切だと思うようになりました。弥生さんはいい子育てをされているなって感じました。
道村:嬉しいです。あんまり子育てをほめられるってないじゃないですか。母親ってほめてくれると嬉しいですね。笑
里也子:わたしは世の中のお母さんを尊敬していますが、本当に頑張るお母さんが多いと感じています。お母さん中心であることがよしとされない社会ですし、周りにも気を遣い、よそのお子さんを見てこうしなければいけないと思ってしまっているようにも思います。もっとお母さんが自分自身を大切に、お母さんであることに誇りを持てるようになればいいなあって思います。お母さんがハッピーであれば、家族みんなが幸せになれると思います。