腕時計用カバーガラス [腕時計用外装部品のはなし2]
クリスタルガラス誕生
腕時計の窓材は時代の要求と共に、成形が容易なプラスチック製の素材から、傷がつかず変色しない無機ガラスのクリスタルガラス製のカバーガラスへと置き換わりました。
当時のプラスチックは、腕時計の窓材としてコストが安く透明感のある素材で、かつ成形加工が容易でしたが、腕時計外装部品としては、紫外線による変色や、金属ケースに比べて傷がつき易く、ひび割れしやすいという問題がありました。
そのような中、Orbrayは画期的な高強度のクリスタルガラスを開発しました。 1970年代当時、そのカバーガラスは、割れないシチズン腕時計の「クリスタルセブン」が話題になりました。
強化ガラス ~イオン交換法~
ソーダ系ガラスを、300~400℃で溶解した硝酸カリウムの溶融塩槽に8時間以上浸漬すると、イオン化傾向によりガラス表面のNa+(ナトリウムイオン)が溶融塩に溶け出し、空いた所にイオン半径の大きいK+(カリウムイオン)が入り込みます。
この強化処理方法を一般的に「イオン交換法」といいます。
アルカリ種 | イオン半径(A) |
Li+ | 0.60 |
Na+ | 0.95 |
K+ | 1.33 |
Rb+ | 1.48 |
Cs+ | 1.69 |
イオン交換されたガラス表面層には圧縮応力が発生し、中間層に比べて表面層の硬さが大きく増し、割れにくい強化ガラスとなります。
ガラスの強化方法としては、物理強化(風冷強化)と区別するために、この方法を「化学強化」と呼んでいます。
後に、この化学強化によるガラス強度を更に高めたK1ガラスが誕生しました。
K1ガラスは1980年当時、石塚硝子との共同開発により完成した、白板ガラスのような無色透明感を有した高強度ガラスです。
化学強化処理層(イオン交換層)をより深く出来る組成とし、腕時計カバーガラスの強度を最大限に上げ、窓材としての耐荷重に必要な厚みを1.2mmから0.8mmに薄くすることを可能としました。K1ガラスは耐荷重強度が強いため、その後、各メーカーのダイバーズウォッチ、カシオGショックにも採用されました。
このように強化ガラスを腕時計用カバーガラスに採用して、割れにくく、傷がつきにくい、紫外線による変色も無い、優れた国産腕時計が完成しました。
Orbray独自の農工一体の納屋工場システム
創業者は、訪れたスイスのジュラ山脈地域に見られる時計工房をヒントに、農家の人たちが乾期の空いている時間に作業をしてもらうというコンセプトで、Orbray独自の納屋工場というシステムを1970年代前半に立ち上げました。これは農家の納屋に作業場を作り、そこに機械を置き、加工・組立などの軽作業を委託する生産方式でした。
計画実施にあたり、秋田県にこの納屋工場計画書を提出したところ、当時の小畑知事は、画期的なことだと大変感激されたようです。
今の秋田湯沢工場をセンターにして、納屋工場をサテライト工場とし、大島村で第一号が誕生、以来、二年間で12村、42工場までの広がりとなりました。
冬でも毎朝、大雪の中、社有車の専用ジープで各納屋工場に材料を配布して、出来上がった製品を順次回収、秋田工場内で受入れの品質チェックをし、最終製品への組立を行いました。
その当時の秋田県湯沢市は今よりも豪雪地帯であり、各農家では冬期の出稼ぎに行く必要がなくなったと、この農工一体の納屋工場は大変好評でした。
Orbrayでは、常に腕時計部品メーカーとしてユニークな商品を提供し続けています。
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