マルチコアファイバーとは 次世代高速大容量通信への活用に期待
インターネットは社会生活において欠かせないものとなりました。高速大容量通信が可能な5Gサービスの普及も進んでいます。データ通信量は今後更に爆発的に増大することが予想され、より高速大容量の通信網が求められています。
しかし、既存の光ファイバー通信網には、伝送容量の限界が近づいてきています。そこで、新たな技術として注目を集めているのがマルチコアファイバーです。
データ通信量の限界が近づく光ファイバー通信網
光ファイバー通信網の基幹伝送路では、日々増え続けるデータ通信量への対応が課題となっています。基幹伝送路で通常用いられている光ファイバーはシングルモードファイバーです。直径125μmのクラッドの中心に、直径10μm程度のコアが光の伝送路として通り、単一の波長の光がコアを伝搬していきます。異なる光の干渉や重複が無く、伝送損失が小さいのが特徴です。伝送損失が小さいので、大容量データの高速、長距離送信に適しています。
しかし、シングルモードファイバーは、増え続けるデータ通信量に対応できなくなることが懸念されています。光ファイバーを用いたデータ通信では、時分割多重(TDM)や波長分割多重(WDM)などの多重化による大容量化技術が開発されてきました。TDMは、短時間ごとに伝送する信号を切り替えることで、1つの伝送路で複数の信号を同時にまとめて伝送する多重化技術です。WDMは、1本の伝送路に複数の異なる波長の光を同時に伝送する多重化技術です。
多重化技術では、多重数の増大とともに入射光のパワーも増大し、伝送路が入射光の強度に耐えられなくなります。非線形効果による信号劣化の問題も生じます。そのため、これらの技術を用いたとしても、シングルモードファイバーでは、100Tbit/s程度が伝送容量の限界とされています。
1本の伝送容量が増やすことができなければ、光ファイバーの本数を増やさなければなりません。しかし、光ファイバーを収容するケーブルの外径を変えなければ、光ファイバーの本数を増やす数に限界が生じます。いずれはデータ通信量の増大に対応できなくなるのです。
マルチコアファイバーにより伝送容量を増やす
この課題を解決するのが、マルチコアファイバー(MCF)です。マルチコアファイバーは、1つのクラッドの中に複数のコアが設けられています。各コアに異なる光信号を通すことにより、1本の光ファイバーの伝送容量を大幅に増やすことが可能です。マルチコアファイバーによる大容量化技術は、空間分割多重方式(SDM:Space Division Multiplexing)といわれ、クラッド内にコアが1つのみのシングルモードファイバーより、クラッド内の空間が有効に活用されます。次世代の基幹伝送路や海底ケーブル、IOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想にむけた技術として活用が期待され、実用化へ向けて研究開発が進んできました。
マルチコアファイバーでは、コアの配置間隔を狭くすることでコアの数を増やすか、クラッド径を大きくすることでコアの数を増やす方法があります。コアの間隔が狭くなると、それぞれのコア間でクロストーク(信号の漏れ込み)が発生しやすくなり通信品質の劣化してしまいます。また、クラッド外径が大きくなると、光ファイバーを曲げた際に折れやすくなります。より低損失でありながら、従来と同様に取り扱えるマルチコアファイバーの開発が期待されています。
マルチコアファイバーの実用化に必要なコネクタ
マルチコアファイバーの実用化には、低損失で扱いやすい以外にも多くの課題があります。その1つがコネクタによる接続技術です。光通信では、光ファイバーと各種機器、または光ファイバー同士を必要に応じて接続、分離する必要が出てきます。そのためには、低損失で確実に接続が出来るマルチコアファイバー用のコネクタが必要です。光ファイバーは電気ケーブルの接続とは異なり、接触しているだけでは光信号が伝送されません。コアとコアがズレることなく、隙間なく向き合って接触している必要があります。複数のコアを同時に正確に接続するためには、マルチコアファイバーを通すフェルールに高い精度が求められます。
また、マルチコアファイバーの複数のコアを伝送された光信号は、伝送先別に分離する必要も出てきます。そのためには、各コアとシングルモードファイバーを接続するFIFO(Fan-in & Fan-out)の技術も必要です。高精度配列のバンドルファイバなど、フェルールと同様に高い精度が求められます。 当社では、マルチコアファイバー向けに限らず、多種多様なカスタム形状の特殊フェルールを提供しております。セラミックやサファイアなどの高硬度材料の高精度加工のノウハウを生かし、完全カスタム対応も可能です。
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