海底ケーブルに使用されるレンズドファイバ
現代社会では、国際通信やインターネットの高品質な映像・音声などの大容量データ、各種商取引のデータなどが高速で送受信されています。この高速情報通信ネットワークは、世界の海洋の海底に敷設された光ファイバーケーブルによって、各国の地上通信網を結ぶことによって実現しています。
なお世界の海底ケーブルの敷設状況はTeleGeography社のSubmarine Cable Map(https://www.submarinecablemap.com/)などで確認することができます。
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海底ケーブル
一般に「海底ケーブル」と呼ばれるケーブルは、陸地と陸地の間の海に敷設された通信用光ファイバーケーブルを指します。ここで言う光ファイバーケーブルとは、人間の毛髪の3倍程度の太さの透明な光ファイバーを複数束ねて、その周りを保護したケーブルです。電気信号を光信号に変換してから光ファイバー内を通過させることにより、多くの情報を遠距離に伝えることができます。
光ファイバーを利用した光通信は、波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)と呼ばれる通信技術が利用されています。この技術は波長の異なる複数の光信号を合成し、1本の光ファイバーで光信号を送信後、受信側のフィルターで光信号を元に戻す方法です。また現在では1本のファイバーのコアと呼ばれる光の通る部分が複数あるものを使用して、1本のケーブルでの通信容量を向上させることが研究されています。
海底ケーブルの特徴
海底ケーブルは様々なデータを迅速かつ安全に転送することができ、現代のインターネットや通信ネットワークにおいて非常に重要な役割を果たしています。
世界中の海に張り巡らされている
海底ケーブルは、世界中の海底に張り巡らされています。全世界の本数は世界で450本であり、その総延長は約140万km(地球35周分)に及びます。
その歴史は古く、1850年に英仏間で敷設されたものが最初と言われています。
海底ケーブル(銅線で作られた同軸ケーブル)は、米国ベル研究所で実用化され、1956年に大西洋横断ケーブルとして使用されました。日本では、KDDが1964年に太平洋横断に敷設したケーブルが最初となります。
この結果、長距離の国際電話が可能となりました。しかし、同軸ケーブルは、銅線を多く使用するためコストの課題がありました。また通信容量の増加に伴い限界があることがわかってきました。
同軸ケーブルの課題を克服するため、光ファイバーを使用した海底ケーブルが1989年太平洋横断ケーブルとして敷設されました。
海底ケーブルの使用用途、用いられている理由
使用用途|海底ケーブルを使った通信の仕組み
1995年に登場したTPC-5CN敷設時にWindows95が発売されインターネットの普及が加速しました。また、1996年のアトランタオリンピックでは、世界で初めて海底ケーブルを利用したTV放送が実現しました。これにより国際通信の方法は衛星通信から海底ケーブルに移行しました。
特にTPC-5CNで画期的な技術は、中継器を使用した信号増幅です。光ファイバーによる長距離通信の場合、大陸間の数千kmの間に一気に光信号を送り届けることは難しくなります。その理由は光信号が減衰するためです。この現象を防いで光信号を増幅するために数十kmごとに、信号増幅用の中継器が設置されています。
従来の中継器は、光信号を一旦電気信号に変換して増幅し、再び光信号に戻す方法のため、非常に複雑な装置でした。しかしTPC-5CNの場合では光信号をそのまま増幅できるため、WDM技術を使用して伝送容量を画期的に増大させることに成功しました。
現在、海底ケーブルは主流の通信インフラとして利用されています。つまりインターネットや海外現地でのスポーツ中継、スマホに届く電波も元をたどるとすべて海底ケーブル経由で届けられています。
海底ケーブルが用いられている理由
国際通信サービスが開始された1920年代に用いられていたのは短波による無線通信でした。具体的には、NHKのラジオ放送などがこれに当たります。
その後、短波通信の周波数帯の狭さや通信品質の不安定性から、1950〜1960年代には衛星通信に置き換わります。特に1964年の東京オリンピックでは、通信衛星を介して競技の状況が世界中に放送され一躍注目を集めました。
ところで、衛星通信では高度36,000kmの通信衛星を経由して電波を受信するため、強雨時の電波干渉の課題がありました。
一方1980年代になり海底ケーブルに光ファイバーが採用されると技術革新が起り、高速大容量の情報サービスが可能になりました。
現在では衛星通信よりも高速度、高容量な通信が可能となり、海外現地との電話やメール並びにTV映像中継・インターネットなどの国際通信は、99%が海底ケーブルを用いておこなわれています。
海底ケーブルの通信を安定させるための工夫
2019年から陸揚げが開始された日本と東南アジア(シンガポール、タイなど)を結ぶ海底ケーブル「SJC2」 では、ケーブルの長さは約11万kmになります。このように海底ケーブルの長さは数千km以上に及ぶものが多数あります。
また敷設する箇所が水深約1000~8500mの深海か、水深約1000mまでの浅海かで鋼鉄線を取り付けた外装が付くか付かないかが変わります。水深の浅いところでは、潮流や波で揺らされたり、船舶や漁網での破損のリスクを低減するため、鋼鉄線で補強されたケーブルが用いられるようです。
更に、数千km以上の光信号を伝送するために起きる光の減衰を解決するため、数十km毎に中継器を用意し、信号増幅の操作がおこなわれています。
海底ケーブルに活用されるOrbrayのレンズドファイバ
海底ケーブルで光信号を送信する際、光ファイバーとしての損失により伝送する距離によって徐々に信号が弱まります。このため海底ケーブルでは中継器で信号光を再び強める、増幅が行われています。
一般的に光を増幅させる方法には様々な方法がありますが、増幅器の出力などから、中継器内にはEDFA(Erubium-Doped Fiber Amplifier)という光アンプが増幅のために使用されています。EDFAは、エルビウムを添加したファイバー内に光信号とエルビウムと波長の合ったレーザー光を通すことにより、エルビウムと波長の合ったレーザー(ポンプレーザーと呼ばれます)のエネルギーで信号光を強める働きをします。
このポンプレーザーにはレンズドファイバが使用されています。
レンズドファイバは光ファイバーの端部にレンズ機能を取り付けたもので、レーザーチップ(半導体素子)から直接光ファイバー内に光を取り込みます。
従来、レーザーチップから放出された光はレンズ、伝送路内で発生した反射戻り光を遮断する光アイソレータ―などを介して光ファイバー内に送られます。ですがレンズドファイバを使用することで、部品点数の削減、ファイバーそのものをレンズ化することでの複数回のレンズ調心コストを低減させることにつながっています。
まとめ
海底ケーブルについての仕組みと使用用途をまとめると以下のようになります。
①海底ケーブルは、海底に敷設された光ファイバーケーブルで、国際通信やインターネットの高速大容量データ通信を実現しています。
②光ファイバーを使うことで信号を光に変え長距離で送受信が可能となります。またWDM技術により複数の光信号を1本のファイバーにまとめて、大量な情報を伝送することができます。そして信号を増幅する中継器により通信品質を担保します。
③使用用途としては国際電話やインターネット、TV中継などに利用され、信頼性と通信容量の面で衛星通信を凌駕しています。耐久性や信号減衰の対策など、通信品質を安定させるための多くの技術が使われています。
この海底ケーブルには、レンズドファイバなどの高精度の光学部品が使用されており、安定した通信品質を支えています。
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