焼成用セッターとは

焼成用セッターとは、炉の中で電子部品を焼成する際の土台として使用される治具を指します。
焼成時、炉内の温度は1,000℃以上もの高温に達します。
焼成物が炉の底面と接触すると、変形や接着を引き起こす恐れがあります。
この時、焼成用セッターを用いることで、焼成物を支持し安定性を高めることができます。
また、焼成後の寸法精度を高めるためには、焼成中の材料温度を均一に保つ必要があります。
ここで、高い熱伝導性を有する焼成用セッターを用いることで、焼成物の温度バラつきを低減し、歩留まりや生産性向上が期待できます。
加えて焼成用セッターには、焼成物と反応しない高い化学的安定性も重要です。
これにより、焼成物の品質を保ち、製品の不純物混入リスクを下げることにもつながります。
このように、焼成用セッターにはさまざまな特性が求められます。その特性を活かすことで、下記に示す用途で使用されています。
- ・ コンデンサーや抵抗器など電子部品の焼成
- ・ 陶磁器や工業用セラミックスの焼成
- ・ 金属粉末を金型で成形し、焼結する粉末冶金
- ・ 燃料電池、エレクトロセラミックスの焼成
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焼成用セッターの種類
電子部品製造における焼成工程では、様々な材質のセッターが使用されています。それぞれに特徴があり、用途や予算に応じて選択されます。ここでは、各種セッターの種類をご紹介します。
アルミナ系セッター
アルミナ系セッターは、焼成用セッターの中で最も広く使用されている素材です。
高純度アルミナ(99.5%以上)は、一般的な電子部品焼成において優れたコストパフォーマンスを発揮します。耐熱性は約1,700℃程度まで対応可能で、多くの焼成プロセスに適用できます。初期投資が比較的安価で、入手しやすいという利点があります。ムライト系アルミナは熱衝撃抵抗性に優れており、温度変化の激しい焼成プロセスでも安定した性能を示します。
ジルコニア系セッター
ジルコニア系セッターは、アルミナ系よりも高い性能を求められる用途で使用されます。安定化ジルコニア(YSZ)は優れた熱衝撃抵抗性を持ち、急激な温度変化にも対応できます。機械的強度も高く、変形しにくい特性があります。部分安定化ジルコニア(PSZ)はさらに強度を重視した用途に適しており、重い部品の支持や高い機械的負荷がかかる用途で威力を発揮します。
炭化ケイ素(SiC)系セッター
炭化ケイ素系セッターは、高い熱伝導性が最大の特徴です。反応焼結SiCは優れた熱伝導性により均一な温度分布を実現し、焼成品質の向上に貢献します。還元雰囲気での使用も可能で、特殊な焼成条件にも対応できます。焼結SiCは高密度で機械的強度に優れており、精密な寸法管理が求められる用途に適しています。
窒化ケイ素(Si₃N₄)系セッター
窒化ケイ素系セッターは、優れた熱衝撃抵抗性と高温強度を併せ持っています。急激な温度変化に対する耐性が非常に高く、温度サイクルの厳しい焼成プロセスでも安定した性能を維持します。機械的強度も高温まで保持され、高温での変形や破損のリスクが低いという特徴があります。
サファイアセッター
サファイアセッターは、焼成用セッターの中で最高レベルの性能を誇る素材です。融点が約2,040℃と極めて高く、優れた化学的安定性と機械的強度を持ちます。
サファイアセッターの強み
高温環境下での優れた寸法安定性
他のセラミックス材料にはない融点2,040℃という高耐熱性により、1,800℃を超える高温焼成プロセスにおいても精密な形状を維持し続けます。また、熱膨張係数も小さいため、温度変化に伴う寸法変化を最小限に抑えることができます。
外部環境に左右されない化学的安定性
酸化雰囲気、還元雰囲気の両方に対して極めて不活性で、焼成物への汚染リスクを最小限に抑えます。特に高純度が要求される電子部品製造において、高い効果を発揮します。
優れた熱伝導性による品質安定化
良好な熱伝導性により均一な温度分布を実現し、焼成品の品質を一定に保つことができます。
繰り返し使用にも耐えうる高い機械的特性
高い硬度と優れた機械的強度により、長期使用による変形や摩耗が極めて少なく、安定した生産品質を実現できます。
平滑性によるクリーンな焼成環境の実現
平滑な表面仕上げが可能で、焼成品への密着や反応が極めて少なく、クリーンな焼成環境を長期間維持できます。
優れた耐久性による高い経済性
初期投資は高いものの、優れた耐久性により長期間の使用が可能です。また、メンテナンスによる繰り返し使用ができるため、長期にわたり高いコストパフォーマンスを発揮します。
まとめ
各種セッターにはそれぞれの特徴と適用分野があります。なかでも特に超高温での焼成、化学的不活性が重要な用途、長期間の安定した性能が求められる場合には、サファイアセッターを選択することにより、製品品質の向上と生産効率の改善に大きく貢献できるでしょう。
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