ファミリービジット
代表取締役社長 並木 里也子
10月30日(水)から11月1日(金)までの3日間、世界最大の非営利団体であるファミリー・ビジネス・ネットワークの第33回グローバルサミットが、東京で開催されました。
この団体は、同族経営に携わるオーナー、経営者、親族(ファミリー)を会員とする国際組織で、私もメンバーの一人です。
ファミリー・ビジネス、日本では同族経営と呼ばれることが多いですが、非効率、閉鎖的、ガバナンスが甘い、といったマイナスイメージがつきまといます。しかし、長期的な視野に立ち、粘り強くビジョンを追求できることや従業員や他の利害関係者と親密な関係を構築できるといった強みもあり、社長就任と同時期に、この団体に加盟しました。
ファミリー・ビジネス・ネットワークの国際本部はスイスのローザンヌにあり、現在ヨーロッパを中心に全世界から約4500の企業が加盟、メンバーは2万人に上ります。グローバルサミットは、ファミリービジネスの永続的な繁栄を目指し、ファミリーリーダーシップと経営能力向上を目的とした国際会議で、年1回、世界各地で開催されます。3日間の会期中、情報共有、ベストプラクティスの交換、学術研究、会員間のネットワーキング、そして国際交流が行われました。
今年のサミットは、申し込み開始後わずか6時間で500枚のチケットが売り切れ、急きょ250枚を追加したほどの人気だったため、本会に先立って行われる毎年恒例の「ラーニングジャーニー」(メンバー企業のある地域への小旅行)は当初の5カ所を7カ所に増やして実施されました。
当社は今年、参加者が興味ある会社を訪問する「ファミリービジット」の訪問先の一つに選ばれ、7か国から約30名の方々を受け入れました。
ファミリービジットの訪問先として声を掛けていただいた際、他の大手企業と同様の対応ができるか、本社ではなく、工場を訪問していただくべきはないかと悩みました。しかし、この貴重な機会を最大限に活かし、本社で当社の特長をしっかりとご紹介することに決めました。さらに、そのために新型コロナの流行の影響で日本を訪れる機会が少なかった海外拠点のメンバーにも参加してもらうことにしました。
訪問時間は約2時間。その中でどのように当社を紹介するかを検討し、以下のようなプログラムを組みました。まず、当社の概要、事業継承に関する説明をし、質疑応答を受けました。
当社の概要説明は、3世代で行いました。
まず、海外生活が長く、英語が堪能な長女に創業者、2代目、3代目を紹介してもらい、当社のバリュー「一社如一家 いっしゃいっかのごとし」についても説明させました。
次に、私の父である2代目がどのように創業者から事業を引き継ぎ、海外展開や新規事業を進めたかを語り、続いて私がこの4年間の経営改革について話しました。
3世代による会社紹介は、ある意味、ファミリービジネスの真骨頂ともいえる時間となり、参加者から高く評価されました。また、多くの質問が寄せられました。
この中で、IPOはファミリービジネスにどのような意味を持つかという質問がありました。この質問はIPOを目指すことを明らかにした時から何度となく聞かれた質問です。上場すると、株主から利益の出ない長期的なプロジェクトに取り組むことを批判されるなど同族経営の良さが失われてしまうことがよくあります。
私は、この質問に対し、株主からそうしたネガティブな意見が出ないようによく説明をし、同族経営の良さを守りながらでも上場はできると考えており、上場しさらにグローバルに活躍できる力を蓄え、日本の他の同族企業のモデルになりたいという考えを説明しました。
質疑応答の後、参加者を4つのグループに分け、それぞれに歴史や製品の紹介、そして抹茶のふるまいを提供しました。
私は歴史の紹介を担当し、海外拠点のメンバーがそれぞれ自分の担当する製品を紹介しました。
普段英語を使用している彼らは、言葉の壁もなくスムーズに進行しました。タイから出席したメンバーは、タイの伝統的な衣装を着て、雰囲気作りにも一役買ってくれました。
また、当社のモーターが使用されているロボットを登場させて触れあっていただいたところ、その愛らしさに皆さんが魅了され、一気に雰囲気がなごみました。参加者の皆さんはどの製品にも興味を持ってくださり、活発に質問をしてくださったため、時間内にすべてを紹介しきれなかったのが少し残念でした。
抹茶と和菓子のおもてなしは、海外からの参加者に気に入っていただけるか少し心配していました。しかし、日本の文化に対する関心は予想以上に強く、多くの方々に楽しんでいただくことができました。
限られた時間ではありましたが、訪問者の皆さんは充実したひとときを過ごされ、非常に有意義な時間となったと感じています。